2005年 11月 17日
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2005年 11月 16日
おじさんが使っているデジタル一眼レフ、"Canon EOS 10D"の販売開始は2003年3月である。銀塩一眼レフであれば、まだ新製品として扱われても不思議はない機種であるが、デジタル機器の進歩の早さは尋常ではない。いつの間にかEOS 10Dはポンコツカメラに分類されるようになり、今なお使い続けているユーザはすっかり少なくなってしまった。
![]() "現行機種"と比べると、EOS 10Dは見劣りする部分が多い。重くてデカイ、最高シャッター速度1/4000秒、1.8インチ液晶、起動時間2秒、画像再生時間2秒、EF-Sマウント未対応、増感時のノイズ量、3コマ/秒の連写性能など、スペック面では過去のカメラになってしまった。しかし、キヤノン製デジタル一眼レフと比べるからいけないのであって、世間一般のコンシューマー用デジタル一眼レフと比べれば、それほど劣る部分は少なく、まだまだ現役バリバリのスペックである。 630万画素あれば、たいていの状況で問題なく使えるし、マグネシウムボディは丈夫で信頼感がある。APS-Cサイズイメージセンサーの画角にも慣れたし、EF-Sマウント非対応でも使える超広角レンズも手に入れた。現状では特に買い換えるほどの不満はない。おじさんの使い方では決定的な問題はなく、むしろ、枯れきった安心して使えるカメラである。 そんなわけで、EOS 20Dの後継機種が出るまでは、EOS 10Dを使い続けるつもりでいた。ところが、撮影枚数が37000ショットを越えたあたりから、レビュー画像の出方がおかしくなりはじめた。レビュー画像とは撮影直後に液晶に表示される画像のことである。最初のうちは、ときどき出ない程度だったが、次第に出ないことの方が多くなった。3回のうち1回しか表示されない、5回のうち1回、10回のうち1回とどんどん出なくなり、11月に入ってからはほとんどレビュー画像は表示されなくなっていた。 銀塩カメラだと思えば問題なく使えるし、再生ボタンを押せば、時間はかかるが確認はできるので、実害はあまりないのだが、どうも撮影テンポが悪くなってしまう。おじさんは露出補正をすることが多いので、撮った直後に画像が確認できないと、かなり調子が悪い。EOS 10Dは画像再生がトロイから、再生ボタンを押して画が出るまで2秒ほどかかる。たかだか2秒であるが、これが決定的に撮影のリズムを崩してしまう。 ネット上を検索してみると、ショット数が多いEOS 10Dで、この現象が起こるようであった。某巨大掲示板には、レリーズボタンの消耗により、レリーズリターンが不十分なときに起こるという書き込みがあった。レリーズボタンとは、いわゆるシャッターボタンのことである。そういえば、思い当たるフシがあった。レリーズボタンを使わずにシャッターを切るとき、つまり、セルフタイマーやリモートレリーズでシャッターを切ると、百発百中でレビュー画像が出ていたのである。どうやらこれは、レリーズボタンまわりの故障らしいと見当を付けた。 もうひとつ、思い当たるフシもあった。おじさんは一時、クラシックカメラにはまり、"蛇腹式35mmフォールディングカメラ"を多いときで40台ほど持っていた。主に、"eBay"で$50以下の安いものばかりを買っていたが、完動品を謳っていても、届いてみれば動かないものはいくらでもあった。特に多かったのは、1940~50年代のカメラのレリーズボタン故障である。この時代のカメラには、レリーズボタン復帰時、つまり押した後に戻るとき、二重露光防止装置を動作させるものがあったが、これがよく壊れていた。レリーズボタン復帰時のトラブルがけっこう多いことは実体験として知っていたのである。 故障箇所の見当が付いたし、まだしばらくは使うEOS 10Dであるから、修理に出すことにした。名古屋・高岳にあるキヤノンQRセンターにEOS 10Dを持ち込んだのは11月7日のことであった。このとき、ショット数は4万を超えていた。1日あたり50ショット近く撮ったことになる。最初の1年はあまり枚数を撮らず、増えたのは今年になってからである。こんなに撮るようになるとは買ったときには思いもしなかった。ひとえに、"Xylocopal's Photolog"を作ったせいである。 QRセンターで修理担当者に聞いてみたところ、果たしてレリーズスイッチの故障だとのこと。ついでに、EOS 10Dのシャッター寿命を聞いてみたところ、だいたい5万ショットだというので、シャッターユニットも交換してもらうことにした。EOS 10Dはヤワなカメラではないが、プロ用途で使われることが多い"EOS-1D Mark II N"のように20万回ものシャッター耐久度はない。撮影中にシャッターが壊れ、イメージセンサーを傷つけたという話も聞いたことがあるので、4万回ならシャッターを換えた方がいいだろうと思ったのである。 おじさんのEOS 10Dは購入から2年以上が過ぎているから、もちろん保証は効かず有償修理となる。QRセンター担当者に修理見積を聞いたところ、技術料12000円、シャッターユニット部品代3000円だという。シャッターユニットとはずいぶん安いものである。修理完了までに2週間ほど見てほしいと言われたから、11月20日頃の仕上がりを予想していた。 修理完了は予想より早かった。キヤノンQRセンターに持ち込んだ修理品はウェブサイト上で修理進捗状況を確認できる。11月15日にQRセンターのウェブサイトを見ると、修理完了となっていた。処置内容として、「画像表示不具合の為、レリーズスイッチを交換の上調整いたしました。ご指定のシャッターユニットの交換をしました」と記されてあった。修理費用は見積どおりの15000円+消費税となっていた。11月7日持ち込みの15日修理完了であるから、まずまずの手際である。以前にもQRセンターでは銀塩一眼レフ、"Canon A-1"を修理したことがあったが、このときも作業は早かった。さっそく、QRセンターにEOS 10Dを引き取りに行った。電話確認はせず、ウェブ上確認だけであったが、QRセンターで修理伝票を出すと、問題なく修理完了したEOS 10Dを渡してくれた。受取用修理伝票を見ると、交換部品として、レリーズスイッチも書かれており、単価0円となっていた。有償修理のはずなのに不思議なことである。見積にも含まれていなかったから、リコール対象品なのであろうか。EOS 10Dに特に多く発生している故障なのだろうか。 ![]() イメージセンサークリーニングはしたばかりなので、特にお願いしなかったが、受付担当者はちゃんと掃除しておきましたと言った。テスト撮影してみたが、シャッター音が心なしか軽快になった。レビュー画像はもちろん出るようになった。シャッターユニット交換によるフランジバックの狂いがないかAFも調べてみたが、異常なしであった。Exifを見てみると、ファイルナンバーがリセットされていた。一応新品同様である。しかし、Exifを調べるまでもなく、ポンコツであることは一目瞭然である。 ![]() ボディ側面や底部は、すっかり塗装が落ち、マグネシウムが剥き出しになっている部分が何ヶ所もある。1950年代のカメラではなく現代のカメラであるから、オークションに出しても値段は付かないだろう。こうなれば使い潰すしかない。幸い、可動部分は新品同様になったから、安心して撮影することができる。おじさん、当分の間、EOS 10Dは使い続けると思う。新機種を買っても転売できないから、サブカメラとして使い続けるだろう。
2005年 11月 08日
"SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO"という望遠ズームレンズを買った。先日、"TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO"という同一焦点距離、同一F値のレンズを買ったばかりなのに、無節操なことである。"Xylocopal's Weblog 2005年10月19日 低価格望遠レンズ TAMRON AF 70-300mm F4-5.6"にも書いたが、TAMRON AF70-300mm F4-5.6は色収差が目立つレンズである。価格が価格だからしかたがないが、それにしても少々多すぎた。納得の上で使おうと思っていたが、いささか限度を超えていた。そのリプレースとして、今回、SIGMA APO 70-300mm F4-5.6を買ったのである。
![]() このレンズの名前にはAPOという接頭詞が付いている。このレンズばかりでなく、"ライカ アポテリート"、"コニカミノルタ アポテレズーム"など、APOという接頭詞が付く写真用レンズは多い。"シュナイダー アポジンマー"、"フォクトレンダー アポランサー"あたりになると、アポなしの名前は据わりが悪いぐらいである。APOとはアポクロマートレンズ、"色収差"を補正したレンズを意味する。色収差は超広角レンズや望遠レンズによく現れる収差である。超広角レンズの周辺部に現れる色ズレを倍率色収差と呼び、望遠レンズに現れる色の滲みを軸上色収差と呼ぶ。 色収差補正レンズには、アポクロマートレンズの他、アクロマートレンズというものもある。アクロマートは、主として青紫系と黄色系の2波長を補正したものである。アポクロマートはもう1波長を追加して、3波長域で補正を行ったものとされているが、実際にはそれほど厳密な区別はされていない。アクロマートレンズより高級な色収差補正をしたものをアポクロマートレンズと呼ぶことが多い。 左は、TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROの色収差の例である。高輝度部分の縁に紫色の色滲みが見えるが、これが軸上色収差である。「パープルフリンジ」、「紫のオーラ」などと呼ばれることもある。拡大しなければ分からないことが多いが、拡大しなくても分かる場合も少なくない。特に高輝度部分が多い画像では、全体のコントラストが落ちるので分かる場合もある。望遠レンズをはじめ、天体望遠鏡、顕微鏡などの拡大倍率が大きい光学機器では、昔から色収差の克服が課題となっており、有効な解決手段として、アポクロマートレンズが使われてきた。アポクロマートレンズ用ガラス材料として、古くから知られ、現在もなお最高の優秀さを誇るのが、"蛍石(ほたるいし)"である。キヤノンの高級望遠レンズに使われているため、御存知の方も多いと思う。蛍石の主成分はフッ化カルシウム(CaF2)で、それほど硬い鉱物ではない。加熱したり、紫外線を照射すると発光することから、日本では蛍石と呼ばれている。英語では、フローライト(Fluorite)であり、こちらの呼称を使う人も多い。 蛍石は、青から赤に至るすべての波長域で屈折率の変化が非常に少ないため、色収差の発生を抑えることができ、硝材としては最適の素材である。しかし、天然蛍石は透明度も悪く、サイズも小さいため、顕微鏡用レンズぐらいしか作られなかった。写真用レンズや天体望遠鏡に利用されるようになったのは1960年代末である。蛍石の人工単結晶製造法が確立されたのである。しかし、大型の単結晶を作ることは難しい上、柔らかく傷つきやすい性質のため加工が難しく、今なお蛍石のレンズは極めて高価である。 この蛍石の特性に近づけた光学ガラスのことを、特殊低分散ガラスと総称する。特殊低分散ガラスのことをEDガラスというが、ED=Extra-low Dispersionの略である。異常低分散レンズ、ED=Extraordinaly Dispersionとも呼ばれるが、「異常」という語感が悪いためか、特殊低分散レンズと呼ぶメーカーが多い。特殊低分散レンズは、ED、UD、LD、SLDなど、メーカーごとに様々な名前で呼ばれる。現代の写真用レンズにとって、特殊低分散ガラスはなくてはならない存在である。特殊低分散ガラスなどの特殊硝材を一枚も使っていないにも関わらず、優れた描写をする"TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO"のようなレンズもあるから、必須というわけではないが。 TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROは特殊低分散レンズを一枚も使っていないわけではない。名前のとおり、LDレンズを1枚使っている。しかし、1枚では補正は充分ではないようである。一方、SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROは、口径の大きな前群に2枚、後群に1枚、全部で3枚のSLDレンズを使っている。 SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROが届いた日、どの程度、色収差が解消されているか、TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROと比較テストをしてみた。下の写真を見れば、結果は一目瞭然である。テスト方法は、三脚にカメラ(EOS 10D)を乗せ、リモートレリーズを付け、MF固定の上、レンズだけ交換して撮影してみた。ISO=200、ホワイトバランス=白紙撮影、絞り=F5.6、シャッター速度=1/30sec.、焦点距離=300mmとすべてのパラメータは同一にし、ライティングも同一で行った。 被写体は、1934年製35mmフォールディングカメラ、"Kodak Retina Type 117"である。クロームメッキではなくニッケルメッキのため、金属部分が黄色っぽく写っているが、この色で正常である。シグマの方がやや赤っぽい発色であるが。上2枚はオリジナル画像をノーレタッチ縮小したもの。下2枚は、中心部の拡大である。 ![]() SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROの色収差補正能力はかなり高いことが分かる。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROで顕著なパープルフリンジが出ている部分にも、わずかな色収差しか認められない。タムロンの方は、色収差の影響を受けて、コントラストが落ち、解像度まで悪くなっているが、シグマの方はしっかりした描写である。シグマのこのレンズには、APO付とAPOなしがあるが、おそらく、APOなしでは、かなり色収差が目立つのではないだろうか。APOという名前は伊達ではない。 もうひとつの比較例を挙げてみる。手持ち撮影の上、撮影ポイントが数十センチずれているから、厳密な比較にはならないが、APO付とAPOなしの傾向の違いは分かると思う。中央上やや左部分のハナミズキの紅葉を拡大してある。両者とも絞り開放300mm端での撮影のため、かなり甘い描写となっている。 ![]() APOなしでは、ハイライトが滲むし、輪郭も甘い。背景の丸ボケにも黄色っぽいフリンジが付いている。APO付の方も褒められた描写ではないが、少なくともおかしな色は付いていないし、はるかにシャッキリした描写である。とはいえ、タムロンの丸ボケも捨てがたい柔らかさがあり、嫌いではないのだが。全体画像を17inchLCDいっぱいに映してみると、APOなしはノイズっぽく、シャープネスが足りない写真に見える。APO付はそんなことはない。ということで、このリプレースは予想どおりの結果となった。 ![]() SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROは、キヤノンLレンズのような赤いラインを巻き、鏡胴はザラリとした質感の黒色無光沢仕上である。悪くはないが、ライカ・アンスラサイト仕上やハンマートーン仕上ほどの高級感はない。赤いラインはAPOなしモデルとの差別化であろう。シグマが自社製高級レンズと認めるものには、EXという名前が付けられ、金色のラインが巻かれている。赤色ラインはEXレンズではない。 このレンズ、APOなしモデルが定価46500円なのに対し、APO付は62000円と少し高い。しかし、しょせんが目くそ鼻くその世界である。両者とも、実売価格は定価が意味をなさないほど安く、APOなしが14000円弱、APO付が21000円弱である。この価格差なら、APO付モデルを買った方がコストパフォーマンスは高い。APO付モデルには、実用になるちゃんとしたレンズケースも付いてくる。 シグマのDGという名前が付くレンズは、デジタル撮像素子対応のレンズである。撮像素子表面反射の影響を少なくするためのコーティングや鏡胴仕上がなされていることになっている。このレンズの場合は、基本設計が古いから、「気は心」といった程度のものと思う。なお、今どきの低価格レンズにしては珍しく、被写界深度ゲージと赤外指標(R指標)が付いている。R指標は使わないと思うが、被写界深度ゲージはあれば便利である。 ![]() 鏡胴中央部である。手前側がズームリング、フード側が距離環である。常識的な作りであり、使いやすい。左にある"NORMAL/MACRO"切換スイッチは最短撮影距離の変更スイッチである。NORMALでの最短撮影距離は1.5m、マクロ切換時は0.95mになる。MACRO時に300mm端にズーミングすると、1:2のハーフマクロとなる。1/2倍だから、かなり寄れる。寄れるが、手ブレ防止装置は付いていないから、手持ちでは辛い焦点距離である。 このレンズ、MACROは200-300mmの間しか有効にならない。このあたりは、TAMRON AF70-300mm F4-5.6とよく似ている。ライバルメーカー同士だけのことはある。MACROからNORMALへの切換は距離環が1.5m~無限遠になっていないとできない。これもタムロンと同じである。いずれも非常に使いにくい。とはいえ、この価格帯のレンズに使い勝手の良さを求めること自体が間違っている。最短撮影距離を1m以下に設定でき、マクロが使えるだけでもありがたいと思った方が精神衛生上安らかである。 ![]() 300mmにしては小振りなレンズであるが、それでもTELE端にズームリングを回した上、最近接状態までヘリコイドを繰り出すと、かなり鏡胴は伸びる。タムロン70-300mmよりも、さらに長い印象である。フードもタムロンより長いものが付いてくるから、最大全長は27cmに達する。動体を追うにはAFが遅すぎるから、このレンズを振り回す人はいないと思うが、ぶつけるとすぐに故障しそうである。ズームリング、ヘリコイドの操作感触は価格相応にゴリゴリしており、決して滑らかとはいえない。 ![]() いつも行っている歪曲収差のチェックである。広角域を含まないズームレンズでは、それほど顕著な歪曲収差は現れないはずであるが、一応調べてみた。これは、70mm端である。軽い樽型歪曲であるが、高倍率ズームレンズの広角端に比べれば、歪曲の程度は軽い。 ![]() こちらは300mm端である。わずかに糸巻型である。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROより、若干糸巻型歪曲が強いように思われる。とはいえ、ここまで寄ってしまうと、はっきり言ってよく分からない。一目で分かるほどひどくなければOKである。 AFのフォーカスチェックも行った。狙ったところに、きちんとフォーカスが来るか、前ピンや後ピンではないかを調べるのである。テスト方法は、"2005/03/15のエントリ"に書いた1万円札を使う方法である。1万円札を斜め横から絞り開放で何回か撮影し、狙ったところにピントが来るかどうかをチェックするのである。過去、うちに来たシグマのレンズは何故か前ピンばかりであった。一番ひどかったのは、"SIGMA 24-135mm F2.8-4.5"で、どこにもフォーカスが合っていないような写真になった。さすがに、これはメーカーに送り、修理してもらった。一方、タムロンのレンズでAFが気になるものは1本もなかった。11-18mmはそもそもAFを使わないので、テストすらしていないが、90mmマクロ、28-75mm F2.8、70-300mm F4-5.6、いずれも問題がなかった。サンプル数が少なすぎて厳密な比較にはならないが、印象としては、どうしてもタムロンのAFは優秀、シグマはイマイチということになってしまう。 ![]() ISO200, F4.5, 1/125sec. 無加工原寸大 このレンズのフォーカスチェックの結果である。狙ったのは中央の「国立印刷局製造」という文字列の真ん中であるが、だいたいピッタリである。上出来ではないだろうか。10回ほど、MF無限遠~AFを繰り返したが、すべてこのあたりに合焦した。今まで使ったシグマのレンズの中では、最も好成績である。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROでは、この段階で色収差が分かったが、さすがにAPOレンズであるから、そういうことはない。 絞り開放のコントラストも悪くない。今まで同様なチェックを様々なレンズで行ってきたが、決して悪い部類ではない。むしろ、良い部類である。参考までに、他のレンズの開放におけるフォーカスチェック原寸大画像を下に上げておく。撮影サイズが異なるので厳密な比較にはならないが、おおよその傾向は分かると思う。 "Canon EF50mm F1.8 II" "Canon EF24-85mm F3.5-4.5 USM" "SIGMA 18-125mm F3.5-5.6 DC" "TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di Macro" "TAMRON SP AF28-75mm F2.8 XR Di" "TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO" ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -1.0EV, F5.6, 1/2000sec., W/B:Auto, 300mm 300mm端での手持ち撮影である。EOS 10DはAPS-Cサイズのイメージセンサーであり、画角差は1.6倍であるから、35mm換算480mm相当の画角である。これぐらいの焦点距離になると、手持ちでは相当苦しいが、ホールドをしっかりして、高速シャッターを切れば何とか手持ちでも撮影できる。この焦点距離に慣れてきたせいか、手持ち撮影の歩留まりはかなりよくなった。何事も慣れは必要である。 このレンズ、TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROより、多少シャープであるが、見比べて分かる程度である。びっくりするほど切れ味がいいというようなことはない。解像感についてはどっこいどっこい、どちらかといえば、マイルドで柔らかい描写である。しかし、色収差が少ない分、タムロンよりはすっきりとした印象である。色味はやや暖色傾向であるが悪くない。マイルドな描写と合わせ、ポートレート撮影にも使えるのではと思う。 TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO同様、AFはトロい。キヤノンUSMのように、即時にシュッと合焦はしない。無限遠からだと、モタモタモタ~ッと合焦する。猫や鳩なら何とかフォーカスを追えるが、スズメなど動きの速い鳥ではかなり苦しい。運動会やスポーツ撮影などの動体を追う場合もフォーカス追尾は厳しいものと予想される。 ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -1.0EV, F5.6, 1/1000sec., W/B:5200K, 190mm 190mmでの撮影である。300mm端よりは切れ味がいい。半絞り絞っているせいもあるが、TELE端よりはかなりシャープである。周辺部では若干像が流れているが、背景のボケも綺麗で、なかなか良い描写である。 ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -2.0EV, F22.0, 1/2000sec., W/B:5200K, 70mm 70mm端での撮影。シャープネスは充分である。デジタル撮像素子対応光学処理が施されているレンズであるが、さすがに太陽をフレームの中に入れると、ゴーストやフレアが出る。しかし、その量は多くなく、コントラストは保たれている。これと同じショットを何枚か撮ったが、ゴーストが出ているものと、出ていないものと両方があった。シグマのレンズはコーティングが弱いといわれるが、この程度であれば、問題は少ないのではないだろうか。逆に、シグマのレンズは派手な光条が出るので、こうした写真には効果的である。タムロンのレンズは背景ボケは綺麗だが、光条がはっきりと出ず、こうした写真には向かない。 ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -2.0EV, F16.0, 1/2000sec., W/B:5200K, 300mm 300mm端での一脚撮影である。太陽高度が高く光量があるうちは、ゴーストやフレアが出たが、ここまで低くなれば、いずれも出ない。当たり前の話であるが。逆光でのAF能力はなかなか高かった。こうした真逆光でも、ちゃんと合焦した。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROは合焦したがズレていた。一方、シグマの方はちゃんとフォーカスが合っていた。こうした状況ではMFで撮ることが多いが、使えるレベルのAF精度だと思う。 SIGMA APO F70-300mm F4-5.6 DG MACROは安レンズではあるが、動体を追わず、屋外でじっくりと撮るのであれば、けっこう使えるレンズだと思う。一応アポクロマートレンズであるから、気になるような色収差は出ないし、200mmあたりまでなら、切れ味も悪いと言うほどではない。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROの実売価格の倍ぐらいするが、元々安いレンズであり、コストパフォーマンスは逆にいいぐらいである。望遠レンズは上を見ればキリがないから、このレンズあたりで手を打つというのも良いかもしれない。
2005年 10月 29日
2008年4月、本稿の一部を手直しした改訂版を作りました。 併せて読まれることをお勧めします。 Xylocopal's Photolog 2008/04/07 ネガフィルムスキャン入門 改訂版 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ "Xylocopal's Weblog 2005年10月25日 偏愛・35mmカラーネガフィルム"に書いたこととかぶりまくるが、ネガフィルムは非常に階調再現性が優れたフィルムである。リバーサルフィルムに比べ、印刷媒体との馴染みが悪いことから、メディアに露出する機会は少ないが、そのワイドレンジな階調表現は素晴らしいものがある。黒は潰れやすいが、白はなかなか飛びそうで飛ばない。ぎりぎりまでしぶとくトーンが残るのがネガフィルムである。 ![]() 中間調の再現性は当然ながら素晴らしい。微妙なトーンの再現はネガフィルムの最も得意とするところである。モノクロ、カラーを問わず、ネガフィルムの階調の広さは、デジカメの比ではない。広階調の写真は一見コントラストが弱く、インパクトに欠けるが、ぬめるように滑らかなグラデーション、ディティール表現の繊細さは何ともいえない美しさがある。 以前、"ILFORD"のカタログに、黒人Jazzミュージシャンの温黒調モノクロポートレート写真が掲載されていたが、肌の質感表現に度肝を抜かれた。ひとくちに黒というが、実に様々な黒があるのである。階調性が優れているというのは、こういうことをいうのかと深く納得したのであった。ことほどさように、広大な階調を持つネガフィルムであるが、印画紙の方はそうはいかない。モノクロ用超軟調印画紙といえど、フィルムに比べると階調が狭いのだ。カラープリントとなると、絶望的に階調が狭い。下の写真を見てほしい。 ![]() おじさんの家にいた"黒猫・ニキさん"と"サバトラシロ猫・カムニャくん"のツーショットである。1988年、Canon A-1というMF一眼レフで撮影したもの。フィルムはISO100のカラーネガフィルム、KodaColor 100を使っている。この画像はプリント(印画紙)をフラットベッドスキャナで読み込んだものである。 黒猫は真っ黒に潰れ、サバトラシロ猫の白い部分は真っ白に飛んでいる。黒猫の撮影は、一般的な反射式露出計の場合、露出補正が必須となり、難易度が高い部類に入るが、白猫とのツーショットはさらに難しい。黒猫に露出を合わせれば、白猫が飛んでしまうし、白猫に露出を合わせれば、黒猫が潰れてしまう。こうしたツーショットは、猫写真専門のプロでも頭を悩ませると聞く。おじさんも、黒猫白猫2Shotの場合は仕方がないと諦めていた。しかし、先日この写真のネガを見つけ出し、たいして期待もせず、ネガフィルムからスキャンしたところ、信じられないほど素晴らしい階調の写真を得ることができたのだ。 ![]() プリントスキャンとは全く別物である。黒猫の光が当たっている部分は階調やディティールが出ており、ヒゲの一本一本まで綺麗に分離している。サバトラシロ猫の方は、白がまったく飛んでおらず、柔らかそうな被毛の様子が実によく分かる。階調が豊かだと、これほど質感描写が違うのである。猫たちの生命感あふれる姿が見事に再現されている。これに比べると、プリントスキャンの方は塗り絵か何かのように見えてしまう。 以前、"Jewels of Nostalgia"というクラシックカメラのウェブサイトを作ったとき、プリントからスキャンした画像とネガフィルムからスキャンした画像のあまりの違いに唸ってしまったが、今回もおおいに驚かされた。17年前のネガフィルムに、これほど豊かな階調が記録されていたという事実は、カラーネガフィルムの底力を改めて感じさせるものであった。 黒猫と白猫のツーショットは、ISO100のカラーネガフィルムで撮るに限る。そして、DPE店で銀塩プリントしてもらうより、ネガスキャン画像をインクジェットプリンタで出力した方が、確実に美しいものができあがるはずである。撮影はネガフィルム、デジタル化およびトーン調整はパソコン、出力はインクジェットプリンタというハイブリッド写真の可能性は非常に大きいと思う。手間はかかるが、かけただけの結果は得られると思う。 ![]() Canon A-1 / Canon NFD 50mm F1.4 FUJIFILM SUPER HR 100, Scanned with EPSON GT-F520 ![]() Canon A-1 / Canon NFD 50mm F1.4 FUJIFILM SUPER HR 100, Scanned with EPSON GT-F520 ツーショット写真に味をしめてスキャンしたのが上の写真である。いずれもISO100カラーネガフィルムによる撮影である。高価なフィルムではない。現代でいえば、1本150円くらいのFUJIFILM SUPERIA 100クラスのフィルムである。にもかかわらず、黒も潰れていなければ、白も飛んでいない。ストロボバウンス照明のため、光がよく回っているせいもあるが、実に見事な階調&質感表現である。デジタル一眼レフでも、なかなかこうはいかない。おじさん、唸って死にそうになった。 これらの写真をスキャンしたのはフィルムスキャナではない。安価なフラットベッドスキャナである。"2005年09月29日 モノクロ写真復活作戦"にも書いたが、"EPSON GT-F520"というエントリークラスのスキャナである。近所の家電量販店で14000円で買った。35mmフィルムスキャン可能な3200dpiのスキャナがこの値段で買えるとは、つくづく良い時代になったものだと思う。以前使っていたフィルムスキャナ、"Nikon COOLSCAN IV ED"に比べれば、使い勝手やデフォルト画質では負けるが、最終的に得られる画像クォリティは決して劣っていないと思う。本当に素晴らしい時代になったものだ。 ![]() EPSON GT-F520の3200dpiという解像度は、35mmフィルムを3072x2048pixelsの600万画素でスキャンするには充分すぎる数値である。2400dpiあれば、600万画素でスキャンできるのだ。600万画素といえば、おじさんが使っているデジタル一眼レフ、EOS10Dと同じ画素数である。とりあえず、600万画素あれば、A4判印刷やレタッチに不自由はしない。3200万画素あれば、横位置写真を縦位置にトリミングするぐらいのことはできる。 GT-F520はエントリークラスのフラットベッドスキャナであるから、ホームユースの「お気楽簡単スキャン」を謳い文句にして販売されている。付属するスキャニングツール、"EPSON Scan"もユーザの習熟度に合わせて、「全自動モード」、「ホームモード」、「プロフェッショナルモード」の3モードが選択可能となっている。 一番簡単なのは全自動モードである。プリントだろうがネガフィルムだろうが、何でも突っ込むだけでOKである。原稿種別さえも自動判別してくれるのだ。ユーザは原稿を乗せるだけでいい。一般に、この手の便利ツールは、「余計なお世話」ばかり豊富で、使い物になるものは少ないが、EPSON Scanの全自動モードはなかなか使えるトーンの画像が得られる。 ![]() 全自動モードでスキャンしたネガフィルムである。全体にシアンかぶりしており、サバトラシロ猫の白い部分が完全に飛んでいるが、その他は良いトーンである。この程度、白飛びした方がコントラストが際立ち、一般受けは良い画像になるから、故意にこうしたチューニングにしているのかもしれない。試しにシアンかぶりだけ補正してみた。Photoshopのカラーバランス調整で、シアン---レッドのスライダーを少し赤方向に動かしただけのレタッチである。 ![]() 白飛び以外は、まずまず文句のないトーンになった。全自動でここまで追い込むとは、エプソンやるものである。7~8年前のスキャナであれば、ここまでのトーンの再現は、じっくりと時間をかけなければ無理であった。ましてや、エントリーモデルでは、こうしたトーンは絶対に得られなかった。デジカメの普及により、画像処理技術は確実に底上げされている。GT-F520を買うユーザの95%ぐらいは、この結果に満足できると思う。 EPSON GT-F520の偉いところは、残り5%のユーザ、白飛びの少ない高階調画像を望むユーザにも対応できるところである。EPSON Scanのプロフェッショナルモードを使えば、白飛びを抑えた渋いトーンでスキャンできるのである。プロフェッショナルモードといってもたいしたものではない。昔のスキャナ付属のスキャニングツールには、プロフェッショナルモード相当の機能しかなかった。以下に、その設定、使い方を説明する。 GT-F520には、色々なアプリケーションが付いてくるが、プリント/ネガフィルムスキャンが主目的で、OCRなどを使わないのであれば、インストールするのはスキャナドライバとEPSON Scanだけでいい。その他のユーティリティは一切不要である。もちろん、しかるべきフォトレタッチソフトを持っているのが前提になるが。 おじさん、スキャン画像の調整はスキャニングツール上では大雑把にしかしない。レタッチしやすいトーンの素材を得るためのみに、スキャニングツールを使うのである。EPSON Scanに限らず、スキャニングツールには、明度、コントラスト、彩度、色合い、ヒストグラム、トーンカーブなど、ひととおりのトーン調整機能が付いているから使いたくなるが、おじさんはヒストグラム調整とトーンカーブ調整を甘めに使うだけである。どうせレタッチをするのなら、使い慣れたPhotoshopで行った方が簡単だからである。 スキャニングユーティリティの起動も、フォトレタッチソフトから行う。スキャナドライバをインストールしたあと、フォトレタッチソフトを起動すると、ほとんどの場合、スキャナ読み込みのメニューが追加されているはずである。下は、Adobe Photoshop CS、JASC Paint Shop Pro ver.6の例である。それぞれのメニューをクリックすれば、EPSON Scanが起動する。 ![]() ![]() ■ネガスキャン設定篇 下は、EPSON GT-F520に付属のEPSON Scan ver.2.70J、プロフェッショナルモードの例である。プロフェッショナルモードにはいくつか設定する項目があるが、おじさんがネガフィルムスキャンをする場合は下のスクリーンショットのように設定している。 ![]() 出力設定-イメージタイプは48bitカラーである。Photoshopでは、16bit/channelと呼ばれるものである。RGB3色ともチャンネルあたり16bitの色深度を持っており、16bit×3原色=48bitカラーということである。パソコンの標準的なsRGB色空間では、Red、Green、Blue各チャンネルあたり、8bitの色深度しかない。8bitの色深度というのは、たったの256階調である。ヒストグラムの黒端から白端までわずかに256階調というのが、パソコンの標準色空間なのである。各色256階調であるから、Red、Green、Blueの3色では、 Red(256)xGreen(256)xBlue(256)=16777216 すなわち、1677万7216色というのがパソコンで扱える最高色数になる。パソコンのフルカラーが1677万色であるというのは、こういうことなのである。 ![]() 各色256階調では、自然界に存在する多くの階調が表現できないが、人間の視覚もせいぜい200~250階調ぐらいしか識別できないといわれており、一般的な使い方では1677万色でも、特に不足することはあまりない。しかし、レタッチをかけるとなると話は別である。 各色256階調しかない色空間で無茶なレタッチをかけると、どうしても色の破綻が起こる。トーンジャンプと呼ばれる現象が発生し、結果的にはノイズが増えるのである。青空などでは、マッハバンドと呼ばれる縞模様が出たりする。これを防ぐ方法は古くから研究されており、各色16bitの色深度にすれば、かなりトーンジャンプが軽減されることが分っている。各色16bit の色深度とは、各色65536階調ということである。65536とは2の16乗である。それゆえ、16bitと呼ばれるのである。 16bit/チャンネルは、あくまでも、擬似的に65536階調にするのであって、パソコンで扱える色数を増やすものではない。しかし、 レタッチ処理をしている間は各色65536階調で処理できるのである。したがって、スキャン画像のレタッチなど、クリティカルなフォトレタッチを行う際には、 16bit/チャンネルにするとノイズが出にくくなるのである。 ちなみに、8bit/channelの画像と16bit/channelの画像は見ただけでは識別できない。そのため、読み込みは24bitカラー(8bit/channel)で行い、スキャン後にフォトレタッチソフト上で16bit/channel(48bitカラー)に変更しても問題はない。レタッチをした瞬間から問題が出るのであって、ノーレタッチであれば無問題である。これについては、ややこしいので、画像保存の際に、再度説明する。 EPSON Scanの設定の話に戻ろう。品質は無論「画質優先」である。解像度は35mmフィルムの場合は2400dpiで行っている。24mm×36mmのフィルムを、2400dots/inchでスキャンするわけだから、計算上は、2268×3402pixelsとなる。おじさんが使っているデジタル一眼レフ、EOS10Dより一回り大きい770万画素である。これぐらいのサイズがあれば、A4プリントもできるし、もちろんネットで使うのには不自由しない。 EPSON GT-F520のマキシマム解像度は3200dpiであるから、こちらは横位置写真を縦位置写真にトリミングする場合などに使っている。いずれにしろ、フォトレタッチの基本は、「大きめに取り込んで小さく出力する」である。あまり巨大すぎても扱いにくいが、600~800万画素というあたりが取り扱いやすいと思う。出力サイズは、印刷するしないにかかわらず、等倍にしておけばいい。印刷解像度を決めるのはプリント時で充分である。 ![]() EPSON Scanの調整欄には上のようにアイコンが4つ並んでいるが、使うのは左から2番目のヒストグラム調整だけである。自動露出は白飛びしやすい味付けになっているし、濃度補正、イメージ調整については、後でPhotoshop上でじっくり行うからである。 チェックボックスも4つあるが、普段は使わない。アンシャープマスクフィルタは通常、フォトレタッチの最後にかけるものであり、いきなりシャープネスを上げるのは抵抗がある。銀塩粒子が見えてしまうフィルムのことだから、いたずらにシャープネスを上げると粒状性が悪くなる。だからといって、粒状性低減はONにしない。おじさん、銀塩フィルムの粒状感は結構好きなのである。退色復元は、プレビューした際に、あまりにも色がおかしい場合には使うこともある。ホコリ除去も同様である。ホコリが2~3個であれば、スキャン時間が長くなるので、ホコリ除去はしない。このあたりはケースバイケースで決めればいい。 ![]() プレビューボタンをクリックしてスキャン調整開始、といきたいところだが、その前に環境設定である。プレビュー設定でのポイントは、「高速プレビュー」のチェックを外すことである。高速プレビューモードのままだと、画質調整を行った場合のプレビュー画像の品位が悪くなる。調整の程度がプレビュー画像にきちんと反映されないのだ。EPSONのオンラインマニュアルにも、高速プレビューモードではない方が高品位画像になると書いてある。 ![]() プレビューウィンドウサイズ、サムネイル取込領域は好きなサイズに設定すればいい。おじさんはネガに記録されたすべての情報をスキャンしたいという貧乏性のため、サムネイル取込領域は最大にしている。これにより、フィルムマスクまでも取り入れることができる。 ![]() カラー設定画面では、「ドライバによる色補正」にチェックを入れてある。これにチェックを入れないと、EPSON Scanでヒストグラムを操作できない。ただし、「常に自動露出を実行」にはチェックを入れていない。いうまでもなく、勝手に白飛びされたくないためである。自分でコントロールして白飛びを作ることはあるが、問答無用で白飛びを作られるのは困る。白飛びを許す/許さないの判断は自分の目で確認して行いたい。 ディスプレイガンマは、2.1、2.2、2.3と増やすほど軟調な画像となる。逆に、1.9、1.8、1.7と下げるほどコントラストの強い硬調な画像となる。好みのトーンに設定をすれば良いのだが、スタンダードというものがないわけでもない。おじさんの場合は、日和見な2.0にしてある。Macintoshの標準値1.8、Windows PCの標準値2.2-2.4の中間値である。おじさんのディスプレイ環境がガンマ2.0となっているから、この設定にした。 世の中の最大公約数的ユーザがWindows環境でネットを閲覧していることは分かっているが、写真好きにはMacintoshユーザが多い。Macintoshユーザに見に来てもらったとき、あんまり淡い色ではまずいので、中間値にしているのである。Windowsユーザから見ると、おじさんの写真はやや濃厚なトーンになっているはずだが、これは、天下一品のラーメンを食べ過ぎたからではないのだ。一応、理由はあるのである。ディスプレイガンマについてよく分からないという人は先に下のエントリを読むことをお勧めする。 "Xylocopal's Weblog 2005年05月10日 写真用ディスプレイ調整" http://xylocopal.exblog.jp/1733325/ ICMは未チェックである。おじさんは、EPSON PM写真用紙(20枚)を1年かかっても使い切らないほど写真を印刷しないから、プリンターとのカラーマッチングは考えたことがない。ICMは、そうしたズボラなユーザにとって無縁の調整項目である。 ----------- "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #2"に続く
2005年 10月 29日
2008年4月、本稿の一部を手直しした改訂版を作りました。 併せて読まれることをお勧めします。 Xylocopal's Photolog 2008/04/07 ネガフィルムスキャン入門 改訂版 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #1"の続編です。 ---------------- ■ネガスキャン実践篇 環境設定、出力設定などが終わったら、ようやくネガフィルムスキャンである。広階調のネガフィルムをスキャンするのだから、スキャニングポリシーはひとつである。黒潰れ、白飛びがない素材性の良い画像を得ること。そのため、過度にローコントラストの眠たいトーンの画像を得るようにしている。EPSON Scan上では、ジャストなトーン調整は行わず、大雑把な調整しかしない。精密なトーン調整は後でPhotoshop上で行う。 ![]() ネガフィルムをセットし、EPSON Scanを立ち上げたら、プレビューを行う。プレビュー画面からターゲットフレームをを選び、スキャン設定を行う。[調整]-[ヒストグラム調整]をクリックし、下のダイアログボックスを出す。 ![]() トーン調整を行う前に、トーンカーブ表示の設定を変えておく。GT-F520は安価にもかかわらず、トーンカーブ表示ができる優れものであるが、その説明はオンラインマニュアルにも書かれていない。ある程度、フォトレタッチに慣れた人間なら、説明不要だろうが、エントリーモデルという性格を考えれば、マニュアルに書いておいてほしいところである。 トーンカーブは、左下が黒0%、右上が白100%である。なだらかなカーブになっていれば、トーンの破綻は少ないが、不自然なカーブができたりすると、黒潰れや白飛びがおこる。デフォルトではトーンカーブ表示がノーマルになっていると思うので、ソフトに変える。ソフトの方が黒潰れ/白飛びを少なくできる。ブーストというのは、コントラスト強調のためのカーブ、つまり黒潰れ/白飛びを意図的に作り出すカーブである。 入力レベル設定は、ヒストグラムを使って行う。フォトレタッチの常識からいえば、Fig.1のように、黒0%レベル、白100%レベルを山の両裾にぴったり寄せるべきであろうが、ここではローコントラストの素材性豊かな画像を得るのが目的なので、Fig.2のように、山裾から余裕を持って離しておく。スキャン画像をHDDに保存しておき、あとで好きなだけフォトレタッチを行おうと考えるから、こうした寝惚けたトーンでスキャンしようとするのである。EPSON Scan上で一発勝負を行うのであれば、Fig.1のようなポイント設定にした方がいい。Fig.1の方が、プレビューウィンドウで確認した場合も、コントラストのあるシャッキリした画像のはずである。 出力レベル設定は、白黒グラデーションスライダーを使って行う。このコマの例では、黒0%=0、白100%=255に設定すると、左上のようなトーンカーブになる。ある一定レベル以下の明るさは一律黒に、ある一定レベル以上の明るさは一律白になることがトーンカーブから分かる。つまり、盛大な黒潰れ、白飛びとなる。映像表現としてはアリだが、一般的ではない。こうしたトーンカーブのままスキャンすると、具合が悪いので、下のように修正する。まず、グラデーションスライダーの黒レベルを動かして、トーンカーブの左下がなだらかなカーブになるようにする。この場合は、黒0%=24である。次に白レベルもトーンカーブ右上のカーブがなだらかになるようにする。この場合は白100%=190である。 出力レベル調整は、必ず入力レベル調整の後で行うこと。入力レベル調整の結果によって、トーンカーブが変わってくるからである。スキャンするフレーム(コマ)が複数ある場合は、ターゲットを変えて、1枚づつ入出力レベルを調整する。すべて調整が終わったら、ダイアログボックスの[閉じる]を押す。そして、スキャンを実行する。 ![]() 上の画像のように、恐ろしく眠いトーンの画像が上がってくるはずである。色もまったく変である。しかし、心配は要らない。そうした画像を得るべく、故意にローコントラストにスキャンしているわけだし、色については無調整なのである。たいていの場合、ブルーからシアンがかった色調で上がってくるが、これはネガフィルムのオレンジベースの補色であるから、当たり前といえば当たり前である。このおかしなトーンの中に、豊富な階調とちゃんとした色が隠されているのである。トーン調整は後ほど、フォトレタッチソフト上で、しっかりと行う。あくまでもスキャンは素材性重視である。 スキャンが終わった画像は、HDDに保存しておく。設定どおりにスキャンすると、48bitカラー(16bit/channel)の画像になっているから、BMPでは保存できず、PSD、TIFFなどのファイル形式で保存することになる。この黒猫白猫ツーショット画像は、3465×2316pixelsの大きさがあるが、無圧縮TIFFの場合、48MBのファイルサイズとなる。最近のHDDは大容量化が進み、300GB以上の容量を持つものも当たり前になってきた。1枚48MBの画像といっても、特に巨大ファイルではない。しかし、おじさんはケチだからJPEG圧縮して保存している。圧縮アルゴリズムにもよるが、Photoshop CSの場合、最低圧縮率(最高画質)でも、無圧縮48MBのTIFF画像が5.7MBのJPEG画像になる。 JPEGは不可逆圧縮だから画質が落ちる。つまり圧縮をかけると、ブロックノイズが不可避的に現れる。こうした場合には、TIFFやPSDで保存しろと、どのフォトレタッチの教科書にも書いてある。これはたしかに正しい。正しいが、ものごとは総合的に判断しなければならない。3465×2316pixelsの画像を5.7MBに圧縮することは、デジタル一眼レフの最高画質より、圧縮率としては低いのである。だから、おじさんは無問題と称して、スキャン画像をJPEG保存をするのである。ただし、JPEGが苦手とする空間周波数の高い画像(ゴチャゴチャした細かい模様が多い画像)や、赤紫系の色が多い画像は例外である。こうした画像のJPEG劣化は目で見て分かるほど厳しい。 ところで、48bitカラー(16bit/channel)の画像はJPEG保存できない。どうすればいいのかというと、実はものすごく乱暴なことをしている。Photoshop上で、16bit/channelから8bit/channelに変更した上、JPEG保存するだけなのである。使うときには、HDDから読み込み、再度、8bit/channelから16bit/channelに変更した上、レタッチをするのである。詳しい圧縮伸張アルゴリズムは知らないが、こうした静的な変換では画質劣化、情報欠落は起きないはずである。もとより、擬似的に作った16bit/channelカラーであるわけだし、今までの経験からいって、無問題といっていいと思う。 ■レタッチ 自動カラー補正篇 ここからは、レタッチ篇である。Adobe Photoshop CSしか持っていないので、これで話を進める。ほとんどトーンカーブは使わず、主にヒストグラム補正(レベル補正)を使うので、Photoshop Elementsでも同じことができると思うし、ヒストグラム調整機能を持ったフォトレタッチソフトであれば、同様の操作になると思う。 デジタル一眼レフに付いてくるオマケソフトでも、ヒストグラム操作ができればOKである。EOS Kiss Digital Nなどに付属する、"Canon Digital Photo Professional"のキャプチャ画像を見ると、ヒストグラム操作ができそうである。もしRGB各チャンネルごとにヒストグラムが操作できるのであれば、同じような方法でレタッチできるかもしれない。 なお、ヒストグラム操作に関しては、基本知識として、下のエントリを読んでおくと理解が早くなる。こちらも説明を省略できるので煩雑にならなくてすむ。以下の説明を読んでいるうちに分からなくなったら、ぜひとも下のエントリを先に読んでほしい。 "Xylocopal's Weblog 2005年05月11日 デジカメ ヒストグラム入門" http://xylocopal.exblog.jp/1742266/ ![]() 保存しておいた画像を開いたら、まず行うことは、16bit/channelになっているかどうかの確認である。Photoshopの場合は、[イメージ]-[モード]-[16bit/チャンネル]を選択する。16bit/channnelモードがなくても、レタッチができないわけではない。16bitの方が破綻が少なくなるが、昔は8bitでレタッチをやっていたのである。 ![]() 次に行うことは、Photoshopの場合、[自動カラー補正]あるいは[自動レベル補正]である。要するに「一発おまかせレタッチ」をやってみろ、と言っているのである。今までぐじゃぐじゃ書いてきたことを否定するような話であり、こう書くと身も蓋もないが、最近のフォトレタッチソフトは優秀になっているから、こうしたトーンの画像を修正するのは、一発おまかせレタッチの方がうまくいくことが多い。輝度レベルだけでなく、コントラスト、色味も補正してくれる。オートホワイトバランスのようなものである。 Photoshop CSでは、[自動カラー補正]と[自動レベル補正]に大きな違いが見つからないから、試してみて結果の良かった方を使えばいい。一般的な傾向として、自動レベル補正の方がハイコントラストになり、白飛び/黒潰れが出やすい。しかし、後述するが、これは微調整可能である。 ![]() 自動カラー補正を実行した結果がこれである。少し冷調なトーンである。やや、シアン方向に偏っているようである。しかし、黒レベル、白レベルはなかなかいい。少し赤方向に色味を振ってやれば、このまま使えそうである。 ![]() 上の画像のヒストグラムである。16bitといえど、相当な歯抜けヒストグラムになっているが、見た目で分からなければOKである。黒端も白端も断ち切られたようにはなっておらず、ほんのわずかに立ち上がっている。これはわずかな黒潰れ、白飛びがあることを表している。目視でも分かるが、サバトラ白猫の額の白い部分がわずかに飛んでいるのである。白猫系では最も飛びやすい部分である。これを飛ばさないようにする方法は後述するが、とりあえず、このままで行くことにする。特に悪いトーンではない。 ![]() まず、全体に冷調なのをなおす。この場合はあまり青みが強くないから、おそらくシアンかぶり、ネガフィルムのオレンジベースによるものである。シアンの反対色は赤だから、赤を足してやればなおるはずである。というわけで、レベル補正ダイアログボックス(ヒストグラム補正画面)を出し、チャンネルをRGBからレッドに変える。赤チャンネルのヒストグラムを補正するのである。操作は簡単である。ヒストグラム中央のグレーのポインタを少し左にドラッグすればいい。画像を見ながら、よかろうというポイントまで動かす。この場合は、中央からやや左へ、数値でいえば、1.00から1.20付近までドラッグしたところ、自然なトーンに復帰した。下がその画像である。 ![]() 全体のトーンはしっかりしてきた。このフィルム、コダクローム的に発色が渋いようなので、彩度を上げてみることにする。Photoshopでいうと、[イメージ]-[色調補正]-[色相・彩度]を選び、彩度のスライダを+15ほど上げてみる。 ![]() だいたい満足のいくレベルとなった。細かいことを言えば、トーンカーブで各レベルごとの輝度調整をしたいが、ここから先は趣味の領域であり、個人の視覚感性に依存する部分が大きいから、これで出来上がりにする。これから先のレタッチに関しては、書籍やたくさんのウェブサイトで解説されているから、調べてみてほしい。 ■レタッチ 自動カラー補正 微調整篇 次に、究極の自動カラー補正の方法を書いておく。この方法は白飛び/黒潰れの程度をリアルタイムで確認しながら、精密にコントロールできる優れた方法である。まず、スキャン画像を開いたら、[イメージ]-[色調補正]-[レベル補正]と選択して、レベル補正(ヒストグラム補正)ダイアログボックスを出す。これを画像のそばに並べる。次に、レベル補正ダイアログボックスの右端の「オプション」というボタンをクリックする。すると、「自動カラー補正オプション」ダイアログボックスが開く。このダイアログボックスも画像のそばに並べておく。下のように、3つの画面が同時に見られるようにしておくのである。 ![]() ![]() ![]() 「自動カラー補正オプション」ダイアログボックスを開いた瞬間、スキャン画像のトーンが変わるのが分かるだろうか。名前こそ「自動カラー補正オプション」になっているが、このダイアログボックスは単なるオプション選択画面ではない。リアルタイム自動補正量コントローラーなのである。この機能を使うと、ズボラをしながら白飛び黒潰れの量を調整できる。 まず、最初にやることは、「アルゴリズム」の選択である。「モノクロコントラストの強調」というのは色味をいじらずに、ヒストグラムの両端を調整するだけのモードである。色がおかしいのは治らない。色味をいじるには、「チャンネルごとのコントラストを強調」、「カラーの明るさと暗さの平均値による調整」、このふたつを「中間調のスナップON/OFF」両方のモードで試してみるといい。完璧なトーンにならないことが多いが、一番気に入ったものを選べばOKである。 次に、白飛び黒潰れの量を調整する。コントロールするのは、ターゲットカラーとクリッピングの部分である。シャドウのクリップ量は黒潰れの程度をコントロールする。デフォルトは、0.10%であるが、ここを0にすると、黒潰れはなくなる。もちろん、スキャン時に潰れていなければであるが。ハイライトのクリップ量は白飛びをコントロールする。ここを0にすれば、白飛びはなくなる。こちらもスキャン時に飛んでいなければの話である。 この両者は、破棄するシャドウデータの量、破棄するハイライトデータの量を決める部分である。数値を大きくすれば破棄する量が増え、黒潰れ、白飛びが顕著になる。ヒストグラムの両端を切りつめていくのである。シャドウデータ、ハイライトデータともに破棄することはできるが、追加することはできない。無から有を生じさせることは不可能である。そのため、恐ろしく眠たいトーンのスキャン画像を作るのである。 シャドウ、ハイライト、いずれのクリップ量も数値を変えれば、リアルタイムでスキャン画像に反映される。0.05%などにすると、よりコントラストが少ない、白飛び/黒潰れの少ないトーンになる。0.20%などにすると、コントラストが強調されたくっきりしたトーンになる。これぐらいは普通であるが、優れているのは、レベル補正ダイアログボックスのヒストグラムもリアルタイムで描き換えられることである。ヒストグラムの黒端、白端を監視しながら、クリップ量を可変することができるのは、非常に便利である。写真にもよるが、一般に多少白飛びさせた方が、コントラストのあるシャッキリした画像になるが、その量が精密にコントロールできるのである。この方法が最もエレガントかつ効率的で精密なレタッチができる。おじさんはこの方法がメインである。 ------------- "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #3"に続く
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