2005年 11月 17日
# by xylocopal | 2005-11-17 10:07
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2005年 11月 16日
おじさんが使っているデジタル一眼レフ、"Canon EOS 10D"の販売開始は2003年3月である。銀塩一眼レフであれば、まだ新製品として扱われても不思議はない機種であるが、デジタル機器の進歩の早さは尋常ではない。いつの間にかEOS 10Dはポンコツカメラに分類されるようになり、今なお使い続けているユーザはすっかり少なくなってしまった。
![]() "現行機種"と比べると、EOS 10Dは見劣りする部分が多い。重くてデカイ、最高シャッター速度1/4000秒、1.8インチ液晶、起動時間2秒、画像再生時間2秒、EF-Sマウント未対応、増感時のノイズ量、3コマ/秒の連写性能など、スペック面では過去のカメラになってしまった。しかし、キヤノン製デジタル一眼レフと比べるからいけないのであって、世間一般のコンシューマー用デジタル一眼レフと比べれば、それほど劣る部分は少なく、まだまだ現役バリバリのスペックである。 630万画素あれば、たいていの状況で問題なく使えるし、マグネシウムボディは丈夫で信頼感がある。APS-Cサイズイメージセンサーの画角にも慣れたし、EF-Sマウント非対応でも使える超広角レンズも手に入れた。現状では特に買い換えるほどの不満はない。おじさんの使い方では決定的な問題はなく、むしろ、枯れきった安心して使えるカメラである。 そんなわけで、EOS 20Dの後継機種が出るまでは、EOS 10Dを使い続けるつもりでいた。ところが、撮影枚数が37000ショットを越えたあたりから、レビュー画像の出方がおかしくなりはじめた。レビュー画像とは撮影直後に液晶に表示される画像のことである。最初のうちは、ときどき出ない程度だったが、次第に出ないことの方が多くなった。3回のうち1回しか表示されない、5回のうち1回、10回のうち1回とどんどん出なくなり、11月に入ってからはほとんどレビュー画像は表示されなくなっていた。 銀塩カメラだと思えば問題なく使えるし、再生ボタンを押せば、時間はかかるが確認はできるので、実害はあまりないのだが、どうも撮影テンポが悪くなってしまう。おじさんは露出補正をすることが多いので、撮った直後に画像が確認できないと、かなり調子が悪い。EOS 10Dは画像再生がトロイから、再生ボタンを押して画が出るまで2秒ほどかかる。たかだか2秒であるが、これが決定的に撮影のリズムを崩してしまう。 ネット上を検索してみると、ショット数が多いEOS 10Dで、この現象が起こるようであった。某巨大掲示板には、レリーズボタンの消耗により、レリーズリターンが不十分なときに起こるという書き込みがあった。レリーズボタンとは、いわゆるシャッターボタンのことである。そういえば、思い当たるフシがあった。レリーズボタンを使わずにシャッターを切るとき、つまり、セルフタイマーやリモートレリーズでシャッターを切ると、百発百中でレビュー画像が出ていたのである。どうやらこれは、レリーズボタンまわりの故障らしいと見当を付けた。 もうひとつ、思い当たるフシもあった。おじさんは一時、クラシックカメラにはまり、"蛇腹式35mmフォールディングカメラ"を多いときで40台ほど持っていた。主に、"eBay"で$50以下の安いものばかりを買っていたが、完動品を謳っていても、届いてみれば動かないものはいくらでもあった。特に多かったのは、1940~50年代のカメラのレリーズボタン故障である。この時代のカメラには、レリーズボタン復帰時、つまり押した後に戻るとき、二重露光防止装置を動作させるものがあったが、これがよく壊れていた。レリーズボタン復帰時のトラブルがけっこう多いことは実体験として知っていたのである。 故障箇所の見当が付いたし、まだしばらくは使うEOS 10Dであるから、修理に出すことにした。名古屋・高岳にあるキヤノンQRセンターにEOS 10Dを持ち込んだのは11月7日のことであった。このとき、ショット数は4万を超えていた。1日あたり50ショット近く撮ったことになる。最初の1年はあまり枚数を撮らず、増えたのは今年になってからである。こんなに撮るようになるとは買ったときには思いもしなかった。ひとえに、"Xylocopal's Photolog"を作ったせいである。 QRセンターで修理担当者に聞いてみたところ、果たしてレリーズスイッチの故障だとのこと。ついでに、EOS 10Dのシャッター寿命を聞いてみたところ、だいたい5万ショットだというので、シャッターユニットも交換してもらうことにした。EOS 10Dはヤワなカメラではないが、プロ用途で使われることが多い"EOS-1D Mark II N"のように20万回ものシャッター耐久度はない。撮影中にシャッターが壊れ、イメージセンサーを傷つけたという話も聞いたことがあるので、4万回ならシャッターを換えた方がいいだろうと思ったのである。 おじさんのEOS 10Dは購入から2年以上が過ぎているから、もちろん保証は効かず有償修理となる。QRセンター担当者に修理見積を聞いたところ、技術料12000円、シャッターユニット部品代3000円だという。シャッターユニットとはずいぶん安いものである。修理完了までに2週間ほど見てほしいと言われたから、11月20日頃の仕上がりを予想していた。 修理完了は予想より早かった。キヤノンQRセンターに持ち込んだ修理品はウェブサイト上で修理進捗状況を確認できる。11月15日にQRセンターのウェブサイトを見ると、修理完了となっていた。処置内容として、「画像表示不具合の為、レリーズスイッチを交換の上調整いたしました。ご指定のシャッターユニットの交換をしました」と記されてあった。修理費用は見積どおりの15000円+消費税となっていた。11月7日持ち込みの15日修理完了であるから、まずまずの手際である。以前にもQRセンターでは銀塩一眼レフ、"Canon A-1"を修理したことがあったが、このときも作業は早かった。さっそく、QRセンターにEOS 10Dを引き取りに行った。電話確認はせず、ウェブ上確認だけであったが、QRセンターで修理伝票を出すと、問題なく修理完了したEOS 10Dを渡してくれた。受取用修理伝票を見ると、交換部品として、レリーズスイッチも書かれており、単価0円となっていた。有償修理のはずなのに不思議なことである。見積にも含まれていなかったから、リコール対象品なのであろうか。EOS 10Dに特に多く発生している故障なのだろうか。 ![]() イメージセンサークリーニングはしたばかりなので、特にお願いしなかったが、受付担当者はちゃんと掃除しておきましたと言った。テスト撮影してみたが、シャッター音が心なしか軽快になった。レビュー画像はもちろん出るようになった。シャッターユニット交換によるフランジバックの狂いがないかAFも調べてみたが、異常なしであった。Exifを見てみると、ファイルナンバーがリセットされていた。一応新品同様である。しかし、Exifを調べるまでもなく、ポンコツであることは一目瞭然である。 ![]() ボディ側面や底部は、すっかり塗装が落ち、マグネシウムが剥き出しになっている部分が何ヶ所もある。1950年代のカメラではなく現代のカメラであるから、オークションに出しても値段は付かないだろう。こうなれば使い潰すしかない。幸い、可動部分は新品同様になったから、安心して撮影することができる。おじさん、当分の間、EOS 10Dは使い続けると思う。新機種を買っても転売できないから、サブカメラとして使い続けるだろう。
2005年 11月 08日
"SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO"という望遠ズームレンズを買った。先日、"TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO"という同一焦点距離、同一F値のレンズを買ったばかりなのに、無節操なことである。"Xylocopal's Weblog 2005年10月19日 低価格望遠レンズ TAMRON AF 70-300mm F4-5.6"にも書いたが、TAMRON AF70-300mm F4-5.6は色収差が目立つレンズである。価格が価格だからしかたがないが、それにしても少々多すぎた。納得の上で使おうと思っていたが、いささか限度を超えていた。そのリプレースとして、今回、SIGMA APO 70-300mm F4-5.6を買ったのである。
![]() このレンズの名前にはAPOという接頭詞が付いている。このレンズばかりでなく、"ライカ アポテリート"、"コニカミノルタ アポテレズーム"など、APOという接頭詞が付く写真用レンズは多い。"シュナイダー アポジンマー"、"フォクトレンダー アポランサー"あたりになると、アポなしの名前は据わりが悪いぐらいである。APOとはアポクロマートレンズ、"色収差"を補正したレンズを意味する。色収差は超広角レンズや望遠レンズによく現れる収差である。超広角レンズの周辺部に現れる色ズレを倍率色収差と呼び、望遠レンズに現れる色の滲みを軸上色収差と呼ぶ。 色収差補正レンズには、アポクロマートレンズの他、アクロマートレンズというものもある。アクロマートは、主として青紫系と黄色系の2波長を補正したものである。アポクロマートはもう1波長を追加して、3波長域で補正を行ったものとされているが、実際にはそれほど厳密な区別はされていない。アクロマートレンズより高級な色収差補正をしたものをアポクロマートレンズと呼ぶことが多い。 左は、TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROの色収差の例である。高輝度部分の縁に紫色の色滲みが見えるが、これが軸上色収差である。「パープルフリンジ」、「紫のオーラ」などと呼ばれることもある。拡大しなければ分からないことが多いが、拡大しなくても分かる場合も少なくない。特に高輝度部分が多い画像では、全体のコントラストが落ちるので分かる場合もある。望遠レンズをはじめ、天体望遠鏡、顕微鏡などの拡大倍率が大きい光学機器では、昔から色収差の克服が課題となっており、有効な解決手段として、アポクロマートレンズが使われてきた。アポクロマートレンズ用ガラス材料として、古くから知られ、現在もなお最高の優秀さを誇るのが、"蛍石(ほたるいし)"である。キヤノンの高級望遠レンズに使われているため、御存知の方も多いと思う。蛍石の主成分はフッ化カルシウム(CaF2)で、それほど硬い鉱物ではない。加熱したり、紫外線を照射すると発光することから、日本では蛍石と呼ばれている。英語では、フローライト(Fluorite)であり、こちらの呼称を使う人も多い。 蛍石は、青から赤に至るすべての波長域で屈折率の変化が非常に少ないため、色収差の発生を抑えることができ、硝材としては最適の素材である。しかし、天然蛍石は透明度も悪く、サイズも小さいため、顕微鏡用レンズぐらいしか作られなかった。写真用レンズや天体望遠鏡に利用されるようになったのは1960年代末である。蛍石の人工単結晶製造法が確立されたのである。しかし、大型の単結晶を作ることは難しい上、柔らかく傷つきやすい性質のため加工が難しく、今なお蛍石のレンズは極めて高価である。 この蛍石の特性に近づけた光学ガラスのことを、特殊低分散ガラスと総称する。特殊低分散ガラスのことをEDガラスというが、ED=Extra-low Dispersionの略である。異常低分散レンズ、ED=Extraordinaly Dispersionとも呼ばれるが、「異常」という語感が悪いためか、特殊低分散レンズと呼ぶメーカーが多い。特殊低分散レンズは、ED、UD、LD、SLDなど、メーカーごとに様々な名前で呼ばれる。現代の写真用レンズにとって、特殊低分散ガラスはなくてはならない存在である。特殊低分散ガラスなどの特殊硝材を一枚も使っていないにも関わらず、優れた描写をする"TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO"のようなレンズもあるから、必須というわけではないが。 TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROは特殊低分散レンズを一枚も使っていないわけではない。名前のとおり、LDレンズを1枚使っている。しかし、1枚では補正は充分ではないようである。一方、SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROは、口径の大きな前群に2枚、後群に1枚、全部で3枚のSLDレンズを使っている。 SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROが届いた日、どの程度、色収差が解消されているか、TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROと比較テストをしてみた。下の写真を見れば、結果は一目瞭然である。テスト方法は、三脚にカメラ(EOS 10D)を乗せ、リモートレリーズを付け、MF固定の上、レンズだけ交換して撮影してみた。ISO=200、ホワイトバランス=白紙撮影、絞り=F5.6、シャッター速度=1/30sec.、焦点距離=300mmとすべてのパラメータは同一にし、ライティングも同一で行った。 被写体は、1934年製35mmフォールディングカメラ、"Kodak Retina Type 117"である。クロームメッキではなくニッケルメッキのため、金属部分が黄色っぽく写っているが、この色で正常である。シグマの方がやや赤っぽい発色であるが。上2枚はオリジナル画像をノーレタッチ縮小したもの。下2枚は、中心部の拡大である。 ![]() SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROの色収差補正能力はかなり高いことが分かる。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROで顕著なパープルフリンジが出ている部分にも、わずかな色収差しか認められない。タムロンの方は、色収差の影響を受けて、コントラストが落ち、解像度まで悪くなっているが、シグマの方はしっかりした描写である。シグマのこのレンズには、APO付とAPOなしがあるが、おそらく、APOなしでは、かなり色収差が目立つのではないだろうか。APOという名前は伊達ではない。 もうひとつの比較例を挙げてみる。手持ち撮影の上、撮影ポイントが数十センチずれているから、厳密な比較にはならないが、APO付とAPOなしの傾向の違いは分かると思う。中央上やや左部分のハナミズキの紅葉を拡大してある。両者とも絞り開放300mm端での撮影のため、かなり甘い描写となっている。 ![]() APOなしでは、ハイライトが滲むし、輪郭も甘い。背景の丸ボケにも黄色っぽいフリンジが付いている。APO付の方も褒められた描写ではないが、少なくともおかしな色は付いていないし、はるかにシャッキリした描写である。とはいえ、タムロンの丸ボケも捨てがたい柔らかさがあり、嫌いではないのだが。全体画像を17inchLCDいっぱいに映してみると、APOなしはノイズっぽく、シャープネスが足りない写真に見える。APO付はそんなことはない。ということで、このリプレースは予想どおりの結果となった。 ![]() SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACROは、キヤノンLレンズのような赤いラインを巻き、鏡胴はザラリとした質感の黒色無光沢仕上である。悪くはないが、ライカ・アンスラサイト仕上やハンマートーン仕上ほどの高級感はない。赤いラインはAPOなしモデルとの差別化であろう。シグマが自社製高級レンズと認めるものには、EXという名前が付けられ、金色のラインが巻かれている。赤色ラインはEXレンズではない。 このレンズ、APOなしモデルが定価46500円なのに対し、APO付は62000円と少し高い。しかし、しょせんが目くそ鼻くその世界である。両者とも、実売価格は定価が意味をなさないほど安く、APOなしが14000円弱、APO付が21000円弱である。この価格差なら、APO付モデルを買った方がコストパフォーマンスは高い。APO付モデルには、実用になるちゃんとしたレンズケースも付いてくる。 シグマのDGという名前が付くレンズは、デジタル撮像素子対応のレンズである。撮像素子表面反射の影響を少なくするためのコーティングや鏡胴仕上がなされていることになっている。このレンズの場合は、基本設計が古いから、「気は心」といった程度のものと思う。なお、今どきの低価格レンズにしては珍しく、被写界深度ゲージと赤外指標(R指標)が付いている。R指標は使わないと思うが、被写界深度ゲージはあれば便利である。 ![]() 鏡胴中央部である。手前側がズームリング、フード側が距離環である。常識的な作りであり、使いやすい。左にある"NORMAL/MACRO"切換スイッチは最短撮影距離の変更スイッチである。NORMALでの最短撮影距離は1.5m、マクロ切換時は0.95mになる。MACRO時に300mm端にズーミングすると、1:2のハーフマクロとなる。1/2倍だから、かなり寄れる。寄れるが、手ブレ防止装置は付いていないから、手持ちでは辛い焦点距離である。 このレンズ、MACROは200-300mmの間しか有効にならない。このあたりは、TAMRON AF70-300mm F4-5.6とよく似ている。ライバルメーカー同士だけのことはある。MACROからNORMALへの切換は距離環が1.5m~無限遠になっていないとできない。これもタムロンと同じである。いずれも非常に使いにくい。とはいえ、この価格帯のレンズに使い勝手の良さを求めること自体が間違っている。最短撮影距離を1m以下に設定でき、マクロが使えるだけでもありがたいと思った方が精神衛生上安らかである。 ![]() 300mmにしては小振りなレンズであるが、それでもTELE端にズームリングを回した上、最近接状態までヘリコイドを繰り出すと、かなり鏡胴は伸びる。タムロン70-300mmよりも、さらに長い印象である。フードもタムロンより長いものが付いてくるから、最大全長は27cmに達する。動体を追うにはAFが遅すぎるから、このレンズを振り回す人はいないと思うが、ぶつけるとすぐに故障しそうである。ズームリング、ヘリコイドの操作感触は価格相応にゴリゴリしており、決して滑らかとはいえない。 ![]() いつも行っている歪曲収差のチェックである。広角域を含まないズームレンズでは、それほど顕著な歪曲収差は現れないはずであるが、一応調べてみた。これは、70mm端である。軽い樽型歪曲であるが、高倍率ズームレンズの広角端に比べれば、歪曲の程度は軽い。 ![]() こちらは300mm端である。わずかに糸巻型である。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROより、若干糸巻型歪曲が強いように思われる。とはいえ、ここまで寄ってしまうと、はっきり言ってよく分からない。一目で分かるほどひどくなければOKである。 AFのフォーカスチェックも行った。狙ったところに、きちんとフォーカスが来るか、前ピンや後ピンではないかを調べるのである。テスト方法は、"2005/03/15のエントリ"に書いた1万円札を使う方法である。1万円札を斜め横から絞り開放で何回か撮影し、狙ったところにピントが来るかどうかをチェックするのである。過去、うちに来たシグマのレンズは何故か前ピンばかりであった。一番ひどかったのは、"SIGMA 24-135mm F2.8-4.5"で、どこにもフォーカスが合っていないような写真になった。さすがに、これはメーカーに送り、修理してもらった。一方、タムロンのレンズでAFが気になるものは1本もなかった。11-18mmはそもそもAFを使わないので、テストすらしていないが、90mmマクロ、28-75mm F2.8、70-300mm F4-5.6、いずれも問題がなかった。サンプル数が少なすぎて厳密な比較にはならないが、印象としては、どうしてもタムロンのAFは優秀、シグマはイマイチということになってしまう。 ![]() ISO200, F4.5, 1/125sec. 無加工原寸大 このレンズのフォーカスチェックの結果である。狙ったのは中央の「国立印刷局製造」という文字列の真ん中であるが、だいたいピッタリである。上出来ではないだろうか。10回ほど、MF無限遠~AFを繰り返したが、すべてこのあたりに合焦した。今まで使ったシグマのレンズの中では、最も好成績である。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROでは、この段階で色収差が分かったが、さすがにAPOレンズであるから、そういうことはない。 絞り開放のコントラストも悪くない。今まで同様なチェックを様々なレンズで行ってきたが、決して悪い部類ではない。むしろ、良い部類である。参考までに、他のレンズの開放におけるフォーカスチェック原寸大画像を下に上げておく。撮影サイズが異なるので厳密な比較にはならないが、おおよその傾向は分かると思う。 "Canon EF50mm F1.8 II" "Canon EF24-85mm F3.5-4.5 USM" "SIGMA 18-125mm F3.5-5.6 DC" "TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di Macro" "TAMRON SP AF28-75mm F2.8 XR Di" "TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO" ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -1.0EV, F5.6, 1/2000sec., W/B:Auto, 300mm 300mm端での手持ち撮影である。EOS 10DはAPS-Cサイズのイメージセンサーであり、画角差は1.6倍であるから、35mm換算480mm相当の画角である。これぐらいの焦点距離になると、手持ちでは相当苦しいが、ホールドをしっかりして、高速シャッターを切れば何とか手持ちでも撮影できる。この焦点距離に慣れてきたせいか、手持ち撮影の歩留まりはかなりよくなった。何事も慣れは必要である。 このレンズ、TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROより、多少シャープであるが、見比べて分かる程度である。びっくりするほど切れ味がいいというようなことはない。解像感についてはどっこいどっこい、どちらかといえば、マイルドで柔らかい描写である。しかし、色収差が少ない分、タムロンよりはすっきりとした印象である。色味はやや暖色傾向であるが悪くない。マイルドな描写と合わせ、ポートレート撮影にも使えるのではと思う。 TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO同様、AFはトロい。キヤノンUSMのように、即時にシュッと合焦はしない。無限遠からだと、モタモタモタ~ッと合焦する。猫や鳩なら何とかフォーカスを追えるが、スズメなど動きの速い鳥ではかなり苦しい。運動会やスポーツ撮影などの動体を追う場合もフォーカス追尾は厳しいものと予想される。 ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -1.0EV, F5.6, 1/1000sec., W/B:5200K, 190mm 190mmでの撮影である。300mm端よりは切れ味がいい。半絞り絞っているせいもあるが、TELE端よりはかなりシャープである。周辺部では若干像が流れているが、背景のボケも綺麗で、なかなか良い描写である。 ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -2.0EV, F22.0, 1/2000sec., W/B:5200K, 70mm 70mm端での撮影。シャープネスは充分である。デジタル撮像素子対応光学処理が施されているレンズであるが、さすがに太陽をフレームの中に入れると、ゴーストやフレアが出る。しかし、その量は多くなく、コントラストは保たれている。これと同じショットを何枚か撮ったが、ゴーストが出ているものと、出ていないものと両方があった。シグマのレンズはコーティングが弱いといわれるが、この程度であれば、問題は少ないのではないだろうか。逆に、シグマのレンズは派手な光条が出るので、こうした写真には効果的である。タムロンのレンズは背景ボケは綺麗だが、光条がはっきりと出ず、こうした写真には向かない。 ![]() Canon EOS 10D / SIGMA APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO ISO200, -2.0EV, F16.0, 1/2000sec., W/B:5200K, 300mm 300mm端での一脚撮影である。太陽高度が高く光量があるうちは、ゴーストやフレアが出たが、ここまで低くなれば、いずれも出ない。当たり前の話であるが。逆光でのAF能力はなかなか高かった。こうした真逆光でも、ちゃんと合焦した。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROは合焦したがズレていた。一方、シグマの方はちゃんとフォーカスが合っていた。こうした状況ではMFで撮ることが多いが、使えるレベルのAF精度だと思う。 SIGMA APO F70-300mm F4-5.6 DG MACROは安レンズではあるが、動体を追わず、屋外でじっくりと撮るのであれば、けっこう使えるレンズだと思う。一応アポクロマートレンズであるから、気になるような色収差は出ないし、200mmあたりまでなら、切れ味も悪いと言うほどではない。TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACROの実売価格の倍ぐらいするが、元々安いレンズであり、コストパフォーマンスは逆にいいぐらいである。望遠レンズは上を見ればキリがないから、このレンズあたりで手を打つというのも良いかもしれない。
2005年 10月 29日
2008年4月、本稿の一部を手直しした改訂版を作りました。 併せて読まれることをお勧めします。 Xylocopal's Photolog 2008/04/07 ネガフィルムスキャン入門 改訂版 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ "Xylocopal's Weblog 2005年10月25日 偏愛・35mmカラーネガフィルム"に書いたこととかぶりまくるが、ネガフィルムは非常に階調再現性が優れたフィルムである。リバーサルフィルムに比べ、印刷媒体との馴染みが悪いことから、メディアに露出する機会は少ないが、そのワイドレンジな階調表現は素晴らしいものがある。黒は潰れやすいが、白はなかなか飛びそうで飛ばない。ぎりぎりまでしぶとくトーンが残るのがネガフィルムである。 ![]() 中間調の再現性は当然ながら素晴らしい。微妙なトーンの再現はネガフィルムの最も得意とするところである。モノクロ、カラーを問わず、ネガフィルムの階調の広さは、デジカメの比ではない。広階調の写真は一見コントラストが弱く、インパクトに欠けるが、ぬめるように滑らかなグラデーション、ディティール表現の繊細さは何ともいえない美しさがある。 以前、"ILFORD"のカタログに、黒人Jazzミュージシャンの温黒調モノクロポートレート写真が掲載されていたが、肌の質感表現に度肝を抜かれた。ひとくちに黒というが、実に様々な黒があるのである。階調性が優れているというのは、こういうことをいうのかと深く納得したのであった。ことほどさように、広大な階調を持つネガフィルムであるが、印画紙の方はそうはいかない。モノクロ用超軟調印画紙といえど、フィルムに比べると階調が狭いのだ。カラープリントとなると、絶望的に階調が狭い。下の写真を見てほしい。 ![]() おじさんの家にいた"黒猫・ニキさん"と"サバトラシロ猫・カムニャくん"のツーショットである。1988年、Canon A-1というMF一眼レフで撮影したもの。フィルムはISO100のカラーネガフィルム、KodaColor 100を使っている。この画像はプリント(印画紙)をフラットベッドスキャナで読み込んだものである。 黒猫は真っ黒に潰れ、サバトラシロ猫の白い部分は真っ白に飛んでいる。黒猫の撮影は、一般的な反射式露出計の場合、露出補正が必須となり、難易度が高い部類に入るが、白猫とのツーショットはさらに難しい。黒猫に露出を合わせれば、白猫が飛んでしまうし、白猫に露出を合わせれば、黒猫が潰れてしまう。こうしたツーショットは、猫写真専門のプロでも頭を悩ませると聞く。おじさんも、黒猫白猫2Shotの場合は仕方がないと諦めていた。しかし、先日この写真のネガを見つけ出し、たいして期待もせず、ネガフィルムからスキャンしたところ、信じられないほど素晴らしい階調の写真を得ることができたのだ。 ![]() プリントスキャンとは全く別物である。黒猫の光が当たっている部分は階調やディティールが出ており、ヒゲの一本一本まで綺麗に分離している。サバトラシロ猫の方は、白がまったく飛んでおらず、柔らかそうな被毛の様子が実によく分かる。階調が豊かだと、これほど質感描写が違うのである。猫たちの生命感あふれる姿が見事に再現されている。これに比べると、プリントスキャンの方は塗り絵か何かのように見えてしまう。 以前、"Jewels of Nostalgia"というクラシックカメラのウェブサイトを作ったとき、プリントからスキャンした画像とネガフィルムからスキャンした画像のあまりの違いに唸ってしまったが、今回もおおいに驚かされた。17年前のネガフィルムに、これほど豊かな階調が記録されていたという事実は、カラーネガフィルムの底力を改めて感じさせるものであった。 黒猫と白猫のツーショットは、ISO100のカラーネガフィルムで撮るに限る。そして、DPE店で銀塩プリントしてもらうより、ネガスキャン画像をインクジェットプリンタで出力した方が、確実に美しいものができあがるはずである。撮影はネガフィルム、デジタル化およびトーン調整はパソコン、出力はインクジェットプリンタというハイブリッド写真の可能性は非常に大きいと思う。手間はかかるが、かけただけの結果は得られると思う。 ![]() Canon A-1 / Canon NFD 50mm F1.4 FUJIFILM SUPER HR 100, Scanned with EPSON GT-F520 ![]() Canon A-1 / Canon NFD 50mm F1.4 FUJIFILM SUPER HR 100, Scanned with EPSON GT-F520 ツーショット写真に味をしめてスキャンしたのが上の写真である。いずれもISO100カラーネガフィルムによる撮影である。高価なフィルムではない。現代でいえば、1本150円くらいのFUJIFILM SUPERIA 100クラスのフィルムである。にもかかわらず、黒も潰れていなければ、白も飛んでいない。ストロボバウンス照明のため、光がよく回っているせいもあるが、実に見事な階調&質感表現である。デジタル一眼レフでも、なかなかこうはいかない。おじさん、唸って死にそうになった。 これらの写真をスキャンしたのはフィルムスキャナではない。安価なフラットベッドスキャナである。"2005年09月29日 モノクロ写真復活作戦"にも書いたが、"EPSON GT-F520"というエントリークラスのスキャナである。近所の家電量販店で14000円で買った。35mmフィルムスキャン可能な3200dpiのスキャナがこの値段で買えるとは、つくづく良い時代になったものだと思う。以前使っていたフィルムスキャナ、"Nikon COOLSCAN IV ED"に比べれば、使い勝手やデフォルト画質では負けるが、最終的に得られる画像クォリティは決して劣っていないと思う。本当に素晴らしい時代になったものだ。 ![]() EPSON GT-F520の3200dpiという解像度は、35mmフィルムを3072x2048pixelsの600万画素でスキャンするには充分すぎる数値である。2400dpiあれば、600万画素でスキャンできるのだ。600万画素といえば、おじさんが使っているデジタル一眼レフ、EOS10Dと同じ画素数である。とりあえず、600万画素あれば、A4判印刷やレタッチに不自由はしない。3200万画素あれば、横位置写真を縦位置にトリミングするぐらいのことはできる。 GT-F520はエントリークラスのフラットベッドスキャナであるから、ホームユースの「お気楽簡単スキャン」を謳い文句にして販売されている。付属するスキャニングツール、"EPSON Scan"もユーザの習熟度に合わせて、「全自動モード」、「ホームモード」、「プロフェッショナルモード」の3モードが選択可能となっている。 一番簡単なのは全自動モードである。プリントだろうがネガフィルムだろうが、何でも突っ込むだけでOKである。原稿種別さえも自動判別してくれるのだ。ユーザは原稿を乗せるだけでいい。一般に、この手の便利ツールは、「余計なお世話」ばかり豊富で、使い物になるものは少ないが、EPSON Scanの全自動モードはなかなか使えるトーンの画像が得られる。 ![]() 全自動モードでスキャンしたネガフィルムである。全体にシアンかぶりしており、サバトラシロ猫の白い部分が完全に飛んでいるが、その他は良いトーンである。この程度、白飛びした方がコントラストが際立ち、一般受けは良い画像になるから、故意にこうしたチューニングにしているのかもしれない。試しにシアンかぶりだけ補正してみた。Photoshopのカラーバランス調整で、シアン---レッドのスライダーを少し赤方向に動かしただけのレタッチである。 ![]() 白飛び以外は、まずまず文句のないトーンになった。全自動でここまで追い込むとは、エプソンやるものである。7~8年前のスキャナであれば、ここまでのトーンの再現は、じっくりと時間をかけなければ無理であった。ましてや、エントリーモデルでは、こうしたトーンは絶対に得られなかった。デジカメの普及により、画像処理技術は確実に底上げされている。GT-F520を買うユーザの95%ぐらいは、この結果に満足できると思う。 EPSON GT-F520の偉いところは、残り5%のユーザ、白飛びの少ない高階調画像を望むユーザにも対応できるところである。EPSON Scanのプロフェッショナルモードを使えば、白飛びを抑えた渋いトーンでスキャンできるのである。プロフェッショナルモードといってもたいしたものではない。昔のスキャナ付属のスキャニングツールには、プロフェッショナルモード相当の機能しかなかった。以下に、その設定、使い方を説明する。 GT-F520には、色々なアプリケーションが付いてくるが、プリント/ネガフィルムスキャンが主目的で、OCRなどを使わないのであれば、インストールするのはスキャナドライバとEPSON Scanだけでいい。その他のユーティリティは一切不要である。もちろん、しかるべきフォトレタッチソフトを持っているのが前提になるが。 おじさん、スキャン画像の調整はスキャニングツール上では大雑把にしかしない。レタッチしやすいトーンの素材を得るためのみに、スキャニングツールを使うのである。EPSON Scanに限らず、スキャニングツールには、明度、コントラスト、彩度、色合い、ヒストグラム、トーンカーブなど、ひととおりのトーン調整機能が付いているから使いたくなるが、おじさんはヒストグラム調整とトーンカーブ調整を甘めに使うだけである。どうせレタッチをするのなら、使い慣れたPhotoshopで行った方が簡単だからである。 スキャニングユーティリティの起動も、フォトレタッチソフトから行う。スキャナドライバをインストールしたあと、フォトレタッチソフトを起動すると、ほとんどの場合、スキャナ読み込みのメニューが追加されているはずである。下は、Adobe Photoshop CS、JASC Paint Shop Pro ver.6の例である。それぞれのメニューをクリックすれば、EPSON Scanが起動する。 ![]() ![]() ■ネガスキャン設定篇 下は、EPSON GT-F520に付属のEPSON Scan ver.2.70J、プロフェッショナルモードの例である。プロフェッショナルモードにはいくつか設定する項目があるが、おじさんがネガフィルムスキャンをする場合は下のスクリーンショットのように設定している。 ![]() 出力設定-イメージタイプは48bitカラーである。Photoshopでは、16bit/channelと呼ばれるものである。RGB3色ともチャンネルあたり16bitの色深度を持っており、16bit×3原色=48bitカラーということである。パソコンの標準的なsRGB色空間では、Red、Green、Blue各チャンネルあたり、8bitの色深度しかない。8bitの色深度というのは、たったの256階調である。ヒストグラムの黒端から白端までわずかに256階調というのが、パソコンの標準色空間なのである。各色256階調であるから、Red、Green、Blueの3色では、 Red(256)xGreen(256)xBlue(256)=16777216 すなわち、1677万7216色というのがパソコンで扱える最高色数になる。パソコンのフルカラーが1677万色であるというのは、こういうことなのである。 ![]() 各色256階調では、自然界に存在する多くの階調が表現できないが、人間の視覚もせいぜい200~250階調ぐらいしか識別できないといわれており、一般的な使い方では1677万色でも、特に不足することはあまりない。しかし、レタッチをかけるとなると話は別である。 各色256階調しかない色空間で無茶なレタッチをかけると、どうしても色の破綻が起こる。トーンジャンプと呼ばれる現象が発生し、結果的にはノイズが増えるのである。青空などでは、マッハバンドと呼ばれる縞模様が出たりする。これを防ぐ方法は古くから研究されており、各色16bitの色深度にすれば、かなりトーンジャンプが軽減されることが分っている。各色16bit の色深度とは、各色65536階調ということである。65536とは2の16乗である。それゆえ、16bitと呼ばれるのである。 16bit/チャンネルは、あくまでも、擬似的に65536階調にするのであって、パソコンで扱える色数を増やすものではない。しかし、 レタッチ処理をしている間は各色65536階調で処理できるのである。したがって、スキャン画像のレタッチなど、クリティカルなフォトレタッチを行う際には、 16bit/チャンネルにするとノイズが出にくくなるのである。 ちなみに、8bit/channelの画像と16bit/channelの画像は見ただけでは識別できない。そのため、読み込みは24bitカラー(8bit/channel)で行い、スキャン後にフォトレタッチソフト上で16bit/channel(48bitカラー)に変更しても問題はない。レタッチをした瞬間から問題が出るのであって、ノーレタッチであれば無問題である。これについては、ややこしいので、画像保存の際に、再度説明する。 EPSON Scanの設定の話に戻ろう。品質は無論「画質優先」である。解像度は35mmフィルムの場合は2400dpiで行っている。24mm×36mmのフィルムを、2400dots/inchでスキャンするわけだから、計算上は、2268×3402pixelsとなる。おじさんが使っているデジタル一眼レフ、EOS10Dより一回り大きい770万画素である。これぐらいのサイズがあれば、A4プリントもできるし、もちろんネットで使うのには不自由しない。 EPSON GT-F520のマキシマム解像度は3200dpiであるから、こちらは横位置写真を縦位置写真にトリミングする場合などに使っている。いずれにしろ、フォトレタッチの基本は、「大きめに取り込んで小さく出力する」である。あまり巨大すぎても扱いにくいが、600~800万画素というあたりが取り扱いやすいと思う。出力サイズは、印刷するしないにかかわらず、等倍にしておけばいい。印刷解像度を決めるのはプリント時で充分である。 ![]() EPSON Scanの調整欄には上のようにアイコンが4つ並んでいるが、使うのは左から2番目のヒストグラム調整だけである。自動露出は白飛びしやすい味付けになっているし、濃度補正、イメージ調整については、後でPhotoshop上でじっくり行うからである。 チェックボックスも4つあるが、普段は使わない。アンシャープマスクフィルタは通常、フォトレタッチの最後にかけるものであり、いきなりシャープネスを上げるのは抵抗がある。銀塩粒子が見えてしまうフィルムのことだから、いたずらにシャープネスを上げると粒状性が悪くなる。だからといって、粒状性低減はONにしない。おじさん、銀塩フィルムの粒状感は結構好きなのである。退色復元は、プレビューした際に、あまりにも色がおかしい場合には使うこともある。ホコリ除去も同様である。ホコリが2~3個であれば、スキャン時間が長くなるので、ホコリ除去はしない。このあたりはケースバイケースで決めればいい。 ![]() プレビューボタンをクリックしてスキャン調整開始、といきたいところだが、その前に環境設定である。プレビュー設定でのポイントは、「高速プレビュー」のチェックを外すことである。高速プレビューモードのままだと、画質調整を行った場合のプレビュー画像の品位が悪くなる。調整の程度がプレビュー画像にきちんと反映されないのだ。EPSONのオンラインマニュアルにも、高速プレビューモードではない方が高品位画像になると書いてある。 ![]() プレビューウィンドウサイズ、サムネイル取込領域は好きなサイズに設定すればいい。おじさんはネガに記録されたすべての情報をスキャンしたいという貧乏性のため、サムネイル取込領域は最大にしている。これにより、フィルムマスクまでも取り入れることができる。 ![]() カラー設定画面では、「ドライバによる色補正」にチェックを入れてある。これにチェックを入れないと、EPSON Scanでヒストグラムを操作できない。ただし、「常に自動露出を実行」にはチェックを入れていない。いうまでもなく、勝手に白飛びされたくないためである。自分でコントロールして白飛びを作ることはあるが、問答無用で白飛びを作られるのは困る。白飛びを許す/許さないの判断は自分の目で確認して行いたい。 ディスプレイガンマは、2.1、2.2、2.3と増やすほど軟調な画像となる。逆に、1.9、1.8、1.7と下げるほどコントラストの強い硬調な画像となる。好みのトーンに設定をすれば良いのだが、スタンダードというものがないわけでもない。おじさんの場合は、日和見な2.0にしてある。Macintoshの標準値1.8、Windows PCの標準値2.2-2.4の中間値である。おじさんのディスプレイ環境がガンマ2.0となっているから、この設定にした。 世の中の最大公約数的ユーザがWindows環境でネットを閲覧していることは分かっているが、写真好きにはMacintoshユーザが多い。Macintoshユーザに見に来てもらったとき、あんまり淡い色ではまずいので、中間値にしているのである。Windowsユーザから見ると、おじさんの写真はやや濃厚なトーンになっているはずだが、これは、天下一品のラーメンを食べ過ぎたからではないのだ。一応、理由はあるのである。ディスプレイガンマについてよく分からないという人は先に下のエントリを読むことをお勧めする。 "Xylocopal's Weblog 2005年05月10日 写真用ディスプレイ調整" http://xylocopal.exblog.jp/1733325/ ICMは未チェックである。おじさんは、EPSON PM写真用紙(20枚)を1年かかっても使い切らないほど写真を印刷しないから、プリンターとのカラーマッチングは考えたことがない。ICMは、そうしたズボラなユーザにとって無縁の調整項目である。 ----------- "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #2"に続く
2005年 10月 29日
2008年4月、本稿の一部を手直しした改訂版を作りました。 併せて読まれることをお勧めします。 Xylocopal's Photolog 2008/04/07 ネガフィルムスキャン入門 改訂版 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #1"の続編です。 ---------------- ■ネガスキャン実践篇 環境設定、出力設定などが終わったら、ようやくネガフィルムスキャンである。広階調のネガフィルムをスキャンするのだから、スキャニングポリシーはひとつである。黒潰れ、白飛びがない素材性の良い画像を得ること。そのため、過度にローコントラストの眠たいトーンの画像を得るようにしている。EPSON Scan上では、ジャストなトーン調整は行わず、大雑把な調整しかしない。精密なトーン調整は後でPhotoshop上で行う。 ![]() ネガフィルムをセットし、EPSON Scanを立ち上げたら、プレビューを行う。プレビュー画面からターゲットフレームをを選び、スキャン設定を行う。[調整]-[ヒストグラム調整]をクリックし、下のダイアログボックスを出す。 ![]() トーン調整を行う前に、トーンカーブ表示の設定を変えておく。GT-F520は安価にもかかわらず、トーンカーブ表示ができる優れものであるが、その説明はオンラインマニュアルにも書かれていない。ある程度、フォトレタッチに慣れた人間なら、説明不要だろうが、エントリーモデルという性格を考えれば、マニュアルに書いておいてほしいところである。 トーンカーブは、左下が黒0%、右上が白100%である。なだらかなカーブになっていれば、トーンの破綻は少ないが、不自然なカーブができたりすると、黒潰れや白飛びがおこる。デフォルトではトーンカーブ表示がノーマルになっていると思うので、ソフトに変える。ソフトの方が黒潰れ/白飛びを少なくできる。ブーストというのは、コントラスト強調のためのカーブ、つまり黒潰れ/白飛びを意図的に作り出すカーブである。 入力レベル設定は、ヒストグラムを使って行う。フォトレタッチの常識からいえば、Fig.1のように、黒0%レベル、白100%レベルを山の両裾にぴったり寄せるべきであろうが、ここではローコントラストの素材性豊かな画像を得るのが目的なので、Fig.2のように、山裾から余裕を持って離しておく。スキャン画像をHDDに保存しておき、あとで好きなだけフォトレタッチを行おうと考えるから、こうした寝惚けたトーンでスキャンしようとするのである。EPSON Scan上で一発勝負を行うのであれば、Fig.1のようなポイント設定にした方がいい。Fig.1の方が、プレビューウィンドウで確認した場合も、コントラストのあるシャッキリした画像のはずである。 出力レベル設定は、白黒グラデーションスライダーを使って行う。このコマの例では、黒0%=0、白100%=255に設定すると、左上のようなトーンカーブになる。ある一定レベル以下の明るさは一律黒に、ある一定レベル以上の明るさは一律白になることがトーンカーブから分かる。つまり、盛大な黒潰れ、白飛びとなる。映像表現としてはアリだが、一般的ではない。こうしたトーンカーブのままスキャンすると、具合が悪いので、下のように修正する。まず、グラデーションスライダーの黒レベルを動かして、トーンカーブの左下がなだらかなカーブになるようにする。この場合は、黒0%=24である。次に白レベルもトーンカーブ右上のカーブがなだらかになるようにする。この場合は白100%=190である。 出力レベル調整は、必ず入力レベル調整の後で行うこと。入力レベル調整の結果によって、トーンカーブが変わってくるからである。スキャンするフレーム(コマ)が複数ある場合は、ターゲットを変えて、1枚づつ入出力レベルを調整する。すべて調整が終わったら、ダイアログボックスの[閉じる]を押す。そして、スキャンを実行する。 ![]() 上の画像のように、恐ろしく眠いトーンの画像が上がってくるはずである。色もまったく変である。しかし、心配は要らない。そうした画像を得るべく、故意にローコントラストにスキャンしているわけだし、色については無調整なのである。たいていの場合、ブルーからシアンがかった色調で上がってくるが、これはネガフィルムのオレンジベースの補色であるから、当たり前といえば当たり前である。このおかしなトーンの中に、豊富な階調とちゃんとした色が隠されているのである。トーン調整は後ほど、フォトレタッチソフト上で、しっかりと行う。あくまでもスキャンは素材性重視である。 スキャンが終わった画像は、HDDに保存しておく。設定どおりにスキャンすると、48bitカラー(16bit/channel)の画像になっているから、BMPでは保存できず、PSD、TIFFなどのファイル形式で保存することになる。この黒猫白猫ツーショット画像は、3465×2316pixelsの大きさがあるが、無圧縮TIFFの場合、48MBのファイルサイズとなる。最近のHDDは大容量化が進み、300GB以上の容量を持つものも当たり前になってきた。1枚48MBの画像といっても、特に巨大ファイルではない。しかし、おじさんはケチだからJPEG圧縮して保存している。圧縮アルゴリズムにもよるが、Photoshop CSの場合、最低圧縮率(最高画質)でも、無圧縮48MBのTIFF画像が5.7MBのJPEG画像になる。 JPEGは不可逆圧縮だから画質が落ちる。つまり圧縮をかけると、ブロックノイズが不可避的に現れる。こうした場合には、TIFFやPSDで保存しろと、どのフォトレタッチの教科書にも書いてある。これはたしかに正しい。正しいが、ものごとは総合的に判断しなければならない。3465×2316pixelsの画像を5.7MBに圧縮することは、デジタル一眼レフの最高画質より、圧縮率としては低いのである。だから、おじさんは無問題と称して、スキャン画像をJPEG保存をするのである。ただし、JPEGが苦手とする空間周波数の高い画像(ゴチャゴチャした細かい模様が多い画像)や、赤紫系の色が多い画像は例外である。こうした画像のJPEG劣化は目で見て分かるほど厳しい。 ところで、48bitカラー(16bit/channel)の画像はJPEG保存できない。どうすればいいのかというと、実はものすごく乱暴なことをしている。Photoshop上で、16bit/channelから8bit/channelに変更した上、JPEG保存するだけなのである。使うときには、HDDから読み込み、再度、8bit/channelから16bit/channelに変更した上、レタッチをするのである。詳しい圧縮伸張アルゴリズムは知らないが、こうした静的な変換では画質劣化、情報欠落は起きないはずである。もとより、擬似的に作った16bit/channelカラーであるわけだし、今までの経験からいって、無問題といっていいと思う。 ■レタッチ 自動カラー補正篇 ここからは、レタッチ篇である。Adobe Photoshop CSしか持っていないので、これで話を進める。ほとんどトーンカーブは使わず、主にヒストグラム補正(レベル補正)を使うので、Photoshop Elementsでも同じことができると思うし、ヒストグラム調整機能を持ったフォトレタッチソフトであれば、同様の操作になると思う。 デジタル一眼レフに付いてくるオマケソフトでも、ヒストグラム操作ができればOKである。EOS Kiss Digital Nなどに付属する、"Canon Digital Photo Professional"のキャプチャ画像を見ると、ヒストグラム操作ができそうである。もしRGB各チャンネルごとにヒストグラムが操作できるのであれば、同じような方法でレタッチできるかもしれない。 なお、ヒストグラム操作に関しては、基本知識として、下のエントリを読んでおくと理解が早くなる。こちらも説明を省略できるので煩雑にならなくてすむ。以下の説明を読んでいるうちに分からなくなったら、ぜひとも下のエントリを先に読んでほしい。 "Xylocopal's Weblog 2005年05月11日 デジカメ ヒストグラム入門" http://xylocopal.exblog.jp/1742266/ ![]() 保存しておいた画像を開いたら、まず行うことは、16bit/channelになっているかどうかの確認である。Photoshopの場合は、[イメージ]-[モード]-[16bit/チャンネル]を選択する。16bit/channnelモードがなくても、レタッチができないわけではない。16bitの方が破綻が少なくなるが、昔は8bitでレタッチをやっていたのである。 ![]() 次に行うことは、Photoshopの場合、[自動カラー補正]あるいは[自動レベル補正]である。要するに「一発おまかせレタッチ」をやってみろ、と言っているのである。今までぐじゃぐじゃ書いてきたことを否定するような話であり、こう書くと身も蓋もないが、最近のフォトレタッチソフトは優秀になっているから、こうしたトーンの画像を修正するのは、一発おまかせレタッチの方がうまくいくことが多い。輝度レベルだけでなく、コントラスト、色味も補正してくれる。オートホワイトバランスのようなものである。 Photoshop CSでは、[自動カラー補正]と[自動レベル補正]に大きな違いが見つからないから、試してみて結果の良かった方を使えばいい。一般的な傾向として、自動レベル補正の方がハイコントラストになり、白飛び/黒潰れが出やすい。しかし、後述するが、これは微調整可能である。 ![]() 自動カラー補正を実行した結果がこれである。少し冷調なトーンである。やや、シアン方向に偏っているようである。しかし、黒レベル、白レベルはなかなかいい。少し赤方向に色味を振ってやれば、このまま使えそうである。 ![]() 上の画像のヒストグラムである。16bitといえど、相当な歯抜けヒストグラムになっているが、見た目で分からなければOKである。黒端も白端も断ち切られたようにはなっておらず、ほんのわずかに立ち上がっている。これはわずかな黒潰れ、白飛びがあることを表している。目視でも分かるが、サバトラ白猫の額の白い部分がわずかに飛んでいるのである。白猫系では最も飛びやすい部分である。これを飛ばさないようにする方法は後述するが、とりあえず、このままで行くことにする。特に悪いトーンではない。 ![]() まず、全体に冷調なのをなおす。この場合はあまり青みが強くないから、おそらくシアンかぶり、ネガフィルムのオレンジベースによるものである。シアンの反対色は赤だから、赤を足してやればなおるはずである。というわけで、レベル補正ダイアログボックス(ヒストグラム補正画面)を出し、チャンネルをRGBからレッドに変える。赤チャンネルのヒストグラムを補正するのである。操作は簡単である。ヒストグラム中央のグレーのポインタを少し左にドラッグすればいい。画像を見ながら、よかろうというポイントまで動かす。この場合は、中央からやや左へ、数値でいえば、1.00から1.20付近までドラッグしたところ、自然なトーンに復帰した。下がその画像である。 ![]() 全体のトーンはしっかりしてきた。このフィルム、コダクローム的に発色が渋いようなので、彩度を上げてみることにする。Photoshopでいうと、[イメージ]-[色調補正]-[色相・彩度]を選び、彩度のスライダを+15ほど上げてみる。 ![]() だいたい満足のいくレベルとなった。細かいことを言えば、トーンカーブで各レベルごとの輝度調整をしたいが、ここから先は趣味の領域であり、個人の視覚感性に依存する部分が大きいから、これで出来上がりにする。これから先のレタッチに関しては、書籍やたくさんのウェブサイトで解説されているから、調べてみてほしい。 ■レタッチ 自動カラー補正 微調整篇 次に、究極の自動カラー補正の方法を書いておく。この方法は白飛び/黒潰れの程度をリアルタイムで確認しながら、精密にコントロールできる優れた方法である。まず、スキャン画像を開いたら、[イメージ]-[色調補正]-[レベル補正]と選択して、レベル補正(ヒストグラム補正)ダイアログボックスを出す。これを画像のそばに並べる。次に、レベル補正ダイアログボックスの右端の「オプション」というボタンをクリックする。すると、「自動カラー補正オプション」ダイアログボックスが開く。このダイアログボックスも画像のそばに並べておく。下のように、3つの画面が同時に見られるようにしておくのである。 ![]() ![]() ![]() 「自動カラー補正オプション」ダイアログボックスを開いた瞬間、スキャン画像のトーンが変わるのが分かるだろうか。名前こそ「自動カラー補正オプション」になっているが、このダイアログボックスは単なるオプション選択画面ではない。リアルタイム自動補正量コントローラーなのである。この機能を使うと、ズボラをしながら白飛び黒潰れの量を調整できる。 まず、最初にやることは、「アルゴリズム」の選択である。「モノクロコントラストの強調」というのは色味をいじらずに、ヒストグラムの両端を調整するだけのモードである。色がおかしいのは治らない。色味をいじるには、「チャンネルごとのコントラストを強調」、「カラーの明るさと暗さの平均値による調整」、このふたつを「中間調のスナップON/OFF」両方のモードで試してみるといい。完璧なトーンにならないことが多いが、一番気に入ったものを選べばOKである。 次に、白飛び黒潰れの量を調整する。コントロールするのは、ターゲットカラーとクリッピングの部分である。シャドウのクリップ量は黒潰れの程度をコントロールする。デフォルトは、0.10%であるが、ここを0にすると、黒潰れはなくなる。もちろん、スキャン時に潰れていなければであるが。ハイライトのクリップ量は白飛びをコントロールする。ここを0にすれば、白飛びはなくなる。こちらもスキャン時に飛んでいなければの話である。 この両者は、破棄するシャドウデータの量、破棄するハイライトデータの量を決める部分である。数値を大きくすれば破棄する量が増え、黒潰れ、白飛びが顕著になる。ヒストグラムの両端を切りつめていくのである。シャドウデータ、ハイライトデータともに破棄することはできるが、追加することはできない。無から有を生じさせることは不可能である。そのため、恐ろしく眠たいトーンのスキャン画像を作るのである。 シャドウ、ハイライト、いずれのクリップ量も数値を変えれば、リアルタイムでスキャン画像に反映される。0.05%などにすると、よりコントラストが少ない、白飛び/黒潰れの少ないトーンになる。0.20%などにすると、コントラストが強調されたくっきりしたトーンになる。これぐらいは普通であるが、優れているのは、レベル補正ダイアログボックスのヒストグラムもリアルタイムで描き換えられることである。ヒストグラムの黒端、白端を監視しながら、クリップ量を可変することができるのは、非常に便利である。写真にもよるが、一般に多少白飛びさせた方が、コントラストのあるシャッキリした画像になるが、その量が精密にコントロールできるのである。この方法が最もエレガントかつ効率的で精密なレタッチができる。おじさんはこの方法がメインである。 ------------- "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #3"に続く
2005年 10月 29日
2008年4月、本稿の一部を手直しした改訂版を作りました。 併せて読まれることをお勧めします。 Xylocopal's Photolog 2008/04/07 ネガフィルムスキャン入門 改訂版 http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/ "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #1" "Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #2" の続編です。 ---------------- ■レタッチ 白点黒点抽出篇 このスキャンサンプルのような真っ黒と真っ白が共に存在する(と思われる)画像の場合は、白点と黒点を抽出するだけで、けっこう見られるトーンにすることができる。ヒストグラム補正機能があるフォトレタッチソフトには、かなり古くから実装されているもので、Photoshop以外にもこの補正機能を持ったフォトレタッチソフトは多い。 ![]() 方法としては、レベル補正ダイアログボックスを開き、右下の方にある白いスポイト型アイコンをクリックする。すると、カーソルがスポイト型に変わるので、下の画像の中で一番白いと思われる場所をクリックする。この画像ではサバトラ白猫の額の部分である。次に、レベル補正ダイアログボックス右下の黒いスポイト型アイコンをクリックする。そして、黒猫の一番黒いと思われる場所をクリックする。 ![]() どこが一番白い/黒いかが分からない場合は、あらかじめ、元の画像を暗くしたり明るくしたりしてみれば、最後まで潰れずに残っている部分であるから分かるはずである。 スキャンソースが銀塩フィルムの場合は、フィルムマスク部分までスキャンしておき、フィルムベース部分を黒点、つまり黒0%の場所として指定することができる。フィルムベースは素抜け、つまり透明であるから黒0%として使えるのである。ただし、0%の黒がない画像の場合、フィルムベースを黒点に指定すると、全体にセットアップが持ち上がったような黒が浮いた眠いトーンになることがある。![]() 白点黒点抽出によるレタッチの結果である。2クリックだけで、けっこうまともなトーンになる。シアンかぶりもなく、色調も悪くない。コントラストもしっかりしている。 ![]() ヒストグラムも悪くない。黒潰れはぎりぎりで回避されている。白飛びはわずかにあるが、抽出ポイントを変えて何回かトライすれば、もう少しブロードな階調が得られることと思う。この方法、うまくいくときはなかなか使える機能であるが、0%の黒、100%の白が存在しない画像では無力なのが欠点である。 ■レタッチ チカラワザ篇 最後はチカラワザである。別に手荒な方法を使うわけではない。自動カラー補正や白黒点抽出補正などのようなインテリジェントなワザを使わず、ヒストグラム補正(レベル補正)、トーンカーブ補正などのコンベンショナルな方法だけで補正する方法である。 チカラワザではあるが、これまで紹介してきた方法の中では、最も精密なレタッチが可能な方法である。ただし、試行錯誤を繰り返すうちに、正しい色が分からなくなるのが欠点である。目視+ヒストグラム観察だけが頼りなので、慣れていても難しい。そのかわり、ヒストグラム補正ができるフォトレタッチソフトであれば、Photoshop以外でも応用可能のはずである。おじさんは、10年ほど前、Micrografx Picture Publisherで、同じ補正を行っていた。 ![]() 画像を開いたら、まずヒストグラムを見る。 ![]() こうした黒レベル、白レベルともに無データ部分があるヒストグラムの場合は、一般的に両端を切りつめることが多い。必ず切りつめるわけではないが、この画像のように、0%の黒、100%の白が存在すると思われる場合は、切りつめていい。 ![]() 切りつめる場所であるが、黒の場所に関しては無データ部分を素直に切りつめればいいと思う。問題は、白をどこまで残すか?である。Aは無データ部分のみを切りつめる、白飛びゼロの忠実レタッチである。忠実ではあるが、明るさ、コントラストが不足するのが欠点である。見た目は眠い。Cは少々の白飛びには目をつぶる、コントラスト至上主義のレタッチである。目視では最もメリハリがある明るい画像となる。Bは両者の中間の日和見レタッチである。それぞれの結果を下に並べてみた。 ![]() 白ポイントA、白飛びゼロ画像 ![]() 白ポイントC、コントラスト重視画像 ![]() 白ポイントB、折衷画像 どのポイントを使うのも、目的/表現手法に合わせてまったく自由であるが、日和見なおじさんは、白ポイントBで作った折衷画像を使ってみることにした。輝度分布に関しては、だいたいこれでOKなので、次に補正するのは色である。まず、全体に緑色が強いので、これから直してみることにする。画像にどんな色がかぶっているかは、スポイトツールで概略を判断できる。その方法は以下のとおりである。 Photoshopの場合はツールボックスからスポイトツールを選ぶ。カーソルがスポイト型に変わるので、画像の上の、本来グレーであろう場所まで持って行く。そのポイントのカラー成分表示が情報パレット上に現れる。この場合は、R=161 G=173 B=143 となっている。これは、サバトラ白猫の顎の部分をポイントしたものである。色かぶりがなければ、本来は無彩色、グレーの部分である。グレーであれば、色情報はRGBがだいたい揃ったレベルになるはずである。しかし、Gが突出して強くなっている。やはり緑かぶりのようである。Rも少し強いから、赤も補正した方がいいかもしれない。 ![]() そこで、レベル補正ダイアログボックスを開き、グリーンチャンネルを選択する。すると、シャドウ部分に無データの部分があるので、ここを切りつめてみる。無データ部分を切りつめればいい、というほど話は簡単ではないが、とりあえず中間調の画像であるから、ここが無データになっているのは怪しいだけである。切りつめてみると、ほんのり赤みがさしてくる。緑の反対色・マゼンタが効いているのである。 ![]() しかし、サバトラシロ猫のおなかの部分は、まだ相当緑が強いので、ハイライト部分のポインタを右へ動かす。と書きたいところだが、右へは動かせないので、中間調のポインタを右に動かしてみる。こうした場合には、本当はトーンカーブを使った方がいいが、このまま進める。ほどよいところで、情報パレットを確認してみると、猫の顎下のグレーバランスはだいたい整ったようである。 ![]() しかし、緑は抑えられたが、赤が強くなってきた。特に黒猫の肩部分の赤みが強い。この赤みを取るために、レベル補正のチャンネルをレッドに切り替える。シャドウ部分を見ると無データ部分があるので、ここを少し動かしてみる。すると、黒猫の肩部分の赤みが取れる。 ![]() しかし、今度はサバトラシロ猫のおなかが緑色っぽくなってしまった。そこで、レッドチャンネルのまま、ハイライトのポインタを少し左に動かしてみる。白飛びギリギリまで動かしてみると、暖かみあるトーンに戻ってきた。このように、色調整はシャドウ、中間調、ハイライトと分けて操作しすることをお勧めする。中間調だけ操作するよりは複雑になるが、コントロールできる範囲は広くなり、全体のトーンをまとめやすくなる。 今回はここでやめる。実際、きりがないのだ。あとは、黒レベルと白レベルのメリハリをつけておしまいとする。そこで、コントラストを付けるために、[イメージ]-[色調補正]-[トーンカーブ]とクリックして、トーンカーブダイアログボックスを出す。 ![]() トーンカーブは、黒を引き締め、白は飛ばないが少し明るめというコントラストを付けることに知る。そこで、シャドウに近い部分を沈め、中間の白を少しだけ持ち上げてみた。単なるコントラスト調整では、こうした細かい補正ができない。トーンカーブ補正を使った方が、白飛び黒潰れを防ぐことができる。 ![]() 色調が渋いので、彩度をプラス15ほど上げてみる。彩度を上げすぎると、ノイズが出るし、階調も潰れるので、ほどほどの上げ方にしておいた方がいい。Photoshopにおいて、プラス15というのはかなり多い量である。最後に画像を縮小し、アンシャープマスクを軽くかけて作業は終わりである。アンシャープマスクもかけすぎると、硬い感じの画像になるので、ほどほどにしておくこと。 特に銀塩フィルムからスキャンした画像の場合、あまりアンシャープマスクを強くかけると、銀粒子のために粒状性が悪くなり、ざらざらとした質感が出てくることがある。この画像でいうと、右上の少しフォーカスアウトした背景部分などに粒子が出やすい。 これを避けるために、アンシャープマスクは猫の眼と口のまわりだけにかけた方がいい。眼と口以外の部分をマスクで保護してから、アンシャープマスクをかけるのである。マスクの境界部分は目立たないように、ぼかしをかけておくといい。 ![]() チカラワザレタッチの出来上がりである。自動カラー補正で修正したものと比べると、かなり異なる結果となっている。まだ、赤が少し強いようだ。色カブリ補正は難しい。1日ほど経ってから見直すと、新しい補正ポイントが見えてきたりする。こうしたときに、グレー抽出スポイトが使えると、かなり作業は楽になる。 ![]() グレー抽出スポイトは、クリックした場所をニュートラルグレーとして再描画するスポイトである。輝度はオリジナルポイントの明るさを保持するから、白飛び黒潰れはおこらない。無彩色と思われる場所を手当たり次第にクリックしていくと、しっくり来るポイントが見つかることがある。一種のセミオートマチックホワイトバランスである。グレー抽出スポイトは、Photoshopであれば、ver.4.0の頃から実装されていた機能であるが、色が微妙にかぶった画像を調整する際には、本当に重宝する。 ネガスキャン画像は、デジカメで撮影した画像に比べると、色のかぶり方が半端ではなく大きい。しかも、シャドウ、中間調、ハイライトと明るさによってかぶる色が違っていたりする。DPEショップでもフルマニュアル補正は、おそらく行っていないであろう。しかし、チカラワザレタッチは覚えておいて損はない。自動カラー補正で、まずまずのトーンを得ておき、足らない部分をチカラワザで補う、というのが現実的だと思う。自動カラー補正でレタッチしたものを見ながら、どうしたら、チカラワザでそれに近づけられるか研究するのは意味があると思う。 今回、モデルをつとめてくれた2匹の猫、黒猫ニキさんとサバトラシロ猫カムニャくんは、実はもうこの世にはいない。一足先に"虹の橋"へと旅立ち、そこでおじさん夫婦を待っている。彼らのことを知りたい人は、下のリンク先を読んでほしい。 "2005年02月13日 黒猫物語 -18年間ともに過ごした猫-" http://xylocopal.exblog.jp/657270/ "2005年10月12日 サバトラシロ物語 -鎮魂カムニャくん-" http://xylocopal.exblog.jp/2832476/
2005年 10月 25日
現在のデジカメが銀塩フィルムにどうしても勝てない部分のひとつに階調表現がある。世の中には真っ黒から真っ白まで、鮮やかな色、くすんだ色など、様々なトーンがあるが、階調表現がまずいと、黒に近い色は黒く潰れ、白に近い色は白く飛んでしまう。結果として、平板で散文的な質感が不足した写真となってしまう。
階調が豊かなことを銀塩フィルムの世界では、「ラティチュード(露出許容度)が広い」などといい、デジカメの世界では「ダイナミックレンジが広い」などと表現する。要するに黒潰れ/白飛びが少ない写真のことを階調が広い写真と呼ぶのである。こうした写真は一見コントラストが弱く、派手さに欠けるが、ぬめるようなグラデーションは実に美しい。特にモノクロファインプリントなどと呼ばれる、低感度微粒子モノクロネガフィルムで撮った写真は圧倒的である。 銀塩フィルムの中でも、特にラティチュードが広いのがネガフィルムである。露出を2~3段間違えても、あまり問題にならない。F8.0が適正露出のシーンを、F4.0やF16で撮っても、何事もなかったかのように階調感ある写真を取り出せるのである。リバーサルフィルムやデジカメではこうはいかない。半絞り違っても、仕上がりは異なるし、階調は狭くなってしまう。さように、階調が広大なネガフィルムであるが、印画紙の方はそうはいかない。モノクロ用の超軟調印画紙でも、フィルムに比べると階調が狭いのだ。ましてや、カラープリントとなると、その階調の狭さは絶望的である。下の写真を見てほしい。 ![]() おじさんの家にいた"黒猫・ニキさん"と"サバトラシロ猫・カムニャくん"のツーショットである。1988年、Canon A-1というMF一眼レフで撮影したもの。レンズは50mm/F1.4、フィルムはISO100のカラーネガフィルムである。照明はクリップオンストロボを発泡スチロール板にバウンスさせている。これはプリント(印画紙)をフラットベッドスキャナでスキャンしたものである。 黒猫は真っ黒に潰れ、サバトラシロ猫の白い部分は真っ白に飛んでいる。黒猫の撮影は、一般的な反射式露出計の場合、露出補正が必須となり、難易度が高い部類に入るが、白っぽい猫とのツーショットはさらに難しい。黒猫に露出を合わせれば、白っぽい猫が飛んでしまうし、白っぽい猫に露出を合わせれば、黒猫が潰れてしまう。こうしたツーショットは、プロでも頭を悩ませると聞く。おじさんも、これは仕方がないと諦めていた。しかし、先日この写真のネガを見つけ出し、たいして期待もせず、ネガフィルムからスキャンしたところ、信じられないほど素晴らしい階調の写真を得ることができた。 ![]() 黒猫は、光が当たっている部分は階調やディティールが出ており、ヒゲの一本一本まで綺麗に分離している。サバトラシロ猫の方は、白がまったく飛んでおらず、柔らかそうな被毛の様子がよく分かる。階調が豊かだと、これほど質感描写が違うのである。猫たちの生命感あふれる姿が見事に再現されている。これに比べると、プリントスキャンの方は塗り絵か何かのように見えてしまう。 "Jewels of Nostalgia"というクラシックカメラのウェブサイトを作ったとき、プリントからスキャンした画像とネガフィルムからスキャンした画像のあまりの違いに唸ってしまったが、今回もおおいに驚かされた。17年前のネガフィルムには、これほど豊かな階調が記録されていたのか、と改めて感じ入ってしまったのである。黒猫と白っぽい猫のツーショットは、ISO100のカラーネガフィルムで撮るに限る。 ネガスキャン画像をインクジェットプリンタで出力した方が、DPE店で銀塩プリントしてもらうより、確実に美しいものができあがるはずである。撮影はネガフィルム、デジタル化およびトーン調整はパソコン、出力はインクジェットプリンタというハイブリッド写真の可能性は非常に大きいと思う。手間はかかるが、かけただけの結果は得られると思う。 ![]() これが、上の写真のネガフィルム。フラットベッドスキャナで反射原稿として取り込んだものである。カラーネガフィルムのフィルムベースはモノクロネガフィルムとは異なり、オレンジ色となっている。プリント時の色調補正が容易なために、カラーネガフィルムではオレンジベースが使われているのだ。黎明期のカラーネガフィルムは無色ベースのため、プリント時のマゼンタとシアンの色濁りがどうしても避けられず、鮮やかな発色を得ることができなかった。その点を改良したのがオレンジベースなのである。 このフィルム、エッジに"KODAK CA 100 5095"と記されているから、当時、一般的であった、Kodacolor 100であることが分かる。現代のKodak Gold 100の御先祖様である。おじさん、カラーネガでも特にISO100の安いものが好きである。現在も、Kodak Gold 100やFUJIFILM SUPERIA 100など、"5本1000円以下の安物"を愛用している。最近はリバーサルなど買ったことがない。 上の画像は、そのままRGB反転させれば、ポジ画像となる。Photoshopの場合は、トーンカーブの傾きを逆にするだけである。通常右上がりになっているトーンカーブを左上がりに変更するだけで、ネガポジ変換ができる。 ![]() この方法はモノクロネガでもカラーネガでもOKである。カラーネガフィルムの場合、オレンジベースがあるから、トーンカーブを逆傾斜にするだけだと青味の強い画像になるが、カラーバランス調整すれば、何とか見られる画像になる。 ![]() 後ろから透過光を当てていない反射原稿であるから、絶対的な明るさが不足しており、トーンは眠いが、ポジ画像にするのは難しいことではない。一昔前のスキャナでは、オレンジベースの色成分を抜くために、リーダー部分のオレンジ色でホワイトバランスをとったりしたものだが、現代のスキャナドライバはデフォルトでカラーネガフィルム対応となっているから、オレンジベース抜きに関しては、ずいぶん楽になった。 こうしたオレンジベースの35mmカラーネガフィルムはおじさんにとって親しみ深いものである。趣味や記録のための写真を撮るのにも使ったが、何より勤務先に大量にあり、仕事で使っていたからである。カラーネガフィルムを大量に使うのは写真のプロでは少ない。どの業種に多いかと言えば、活動屋、すなわち映画制作会社である。といっても、映画館上映用作品を作る会社ばかりとは限らない。CM制作会社、ビデオクリップ制作会社、PR映画/記録映画制作会社なども含まれる。 おじさんが20年近く在籍した映像制作会社は、元々映画制作会社として発足していたから、おじさんの入社後12~3年は、16mmフィルム、35mmフィルムによる映画制作が盛んに行われていた。会社に行けば、100feet、400feetなどの金属缶入り35mmカラーネガフィルムが、いたるところに転がっていた。 映画というと、リバーサルフィルムで撮るもの、と思われるかもしれないが、実際には複製を作る必要があるから、ネガフィルムで撮るのが普通である。リバーサルで撮るのは、ビデオ取材が一般的でなかった時代のTVニュース、低予算ドキュメンタリーぐらいのものである。現在は、映画用リバーサルフィルムはほとんどすべて、ビデオに置き換えられている。一方で、映画用カラーネガフィルムはしぶとく生き残っている。 映画用35mmフィルムは写真用35mmフィルムと物理的にはイコールである。というより、映画用35mmフィルムを写真用に転用したのが、現代の135判フィルムなのである。その元祖は、ドイツ・ライツ社の技術者であった"オスカー・バルナック"が1913年に作ったライカの原型、"ウル・ライカ"であった。当時、ライツ社は35mmシネカメラ用露出試験装置を作っており、35mmフィルムが簡単に入手できる環境にあったらしい。写真用小型カメラを作ろうとしていたバルナックが35mmフィルムに目を付けたのは自然なことであった。 映画用35mmフィルムには、編集のための通しナンバーがパーフォレーション部分に入れられているが、写真用カメラでもそのまま使える。ただし、映画用は最低でも100feetはあるから、長くても36コマ程度にカットする必要がある。1913年、バルナックがウル・ライカを作ったとき、映画用35mmフィルムを両手いっぱいに広げた長さにカットして使ったのが、現在の36枚撮りフィルムの始まりであった。オスカー・バルナックは小柄な男であったといわれるが、もし彼が大男であったら、今頃写真用35mmフィルムの最大撮影コマ数は40枚撮りなどになっていたかもしれない。 映画用35mmカメラは、1分間で写真用カメラ720コマ分を回してしまう。一般的な35mm映画の場合は縦走り4Pである。4Pとは1コマあたり4パーフォレーションという意味である。写真の場合は横走り8Pだから、映画では写真でいうところのハーフサイズで撮っていることになる。横走り8Pという映画用カメラ/映写機もあり、極めて精細で高画質なものであったが、結局、あまり普及しなかった。 映画用35mmカラーネガフィルムは物理的には写真用135フィルムとイコールであるが、化学的特性、すなわち現像処理は若干異なる。現像プロセスはECN-2と呼ばれるもので、写真用カラーネガフィルムで一般的なC-41プロセスではない。C-41プロセスでも現像することは可能らしいが、物理的に現像できないと思う。写真フィルム現像ラボには、長尺フィルムの現像機がないからである。映画用フィルムの現像には、連続現像、連続定着などができる装置が不可欠である。おじさんがいた会社には、TVニュース対応のための16mm用連続現像機があった。入社後、5年ほどでVTR編集機と置き換えられてしまったが。 映画用35mmフィルムはハーフサイズのため、描写が粗いかというと、そんなことは全然ない。1990年におじさんは35mmムービーカメラでハイビジョン作品を撮ったが、走査線1125本のハイビジョンに対し、35mmムービーカメラは余裕で対応できた。現像~ハイビジョン化を担当したイマジカの技術者の弁によれば、走査線3000本までは映画用35mmカメラで楽勝だとのことであった。考えてみれば、もともと、映画館の巨大スクリーンに投影される目的で作られ改良されてきたシステムであるから、精細度が高いのは当たり前である。ハイビジョン撮影に使った機材は、カメラが"Arriflex III"、レンズは主にCarl Zeissのものを使った。左に写っているのは、"Vario Sonnar 25-250mm"である。SONYのデジカメに付いているものと名前は同じだが、こちらがオリジナルである。タムロンや富岡光学、京セラ製ではなく、オーバーコッヘンのツァイス製であった。 Carl Zeiss Distagon Super-Speed 14mmなどの単焦点レンズやAngenieuxのズームレンズなども使った。アンジェニューのレンズはアリフレックスにとってはデフォルトともいうべきレンズである。仕事で一番使ったレンズは、と問われれば、ダントツでアンジェニューである。おじさん、写真用アンジェニューレンズも好きであるが、Angenieuxという名前から連想するのは映画用ズームレンズの方である。レンズ鏡胴に彫り込まれた"Angenieux Paris"の文字は、映画の国・フランスをしのばせるものであった。 ![]() アンジェニューの創設者にして設計者、"Pierre Angénieux"は、映画産業に貢献した功績多大ということから、1989年、アカデミー賞のゴードン・E・ソーヤー賞を受賞している。オスカーを受賞したレンズ設計者は、ピエール・アンジェニューの他、イギリスの"Gordon Henry Cook"ぐらいしか知らない。二人ともズームレンズ開発の功績によるものであったらしい。やはり、アンジェニューといえば、映画用ズームレンズである。 1990年当時、電子式ハイビジョンカメラは現在ほど小型ではなく、カメラヘッドの後ろに中継車1台分の装置が必要で非常に機動性が悪かった。もちろんVTR内蔵ではなく、ヒモ付きのカメラであった。撮影ポイントが離れていれば、中継車ごとゴロゴロと移動しなければならなかった。その点、35mmムービーカメラ利用のハイビジョン撮影は、スタンドアローン撮影可能な上、ワゴン車1台でロケに行け、スタッフも少人数で済んだから、機動性は抜群によかった。雪が降ったから撮りに行こう、というような状況に自在に対応できた。電子式ハイビジョンカメラは、すぐに小型化されたが、35mmフィルムの多階調なトーンが好まれたため、けっこう長い間、ハイビジョン制作の現場にシネカメラは存在したようである。 ![]() 上の写真は、おじさんの家にある35mmムービーカメラ、Arriflex IIc + 400feetマガジン、Angenieux 25-250mm F3.2ズームレンズ付である。1948年製であるから、もはや、一線級のカメラではない。映画撮影の現場では、こんな古いカメラはとっくに現役を引退し、"もっとコンテンポラリーなアリフレックス"が使われているはずである。しかし、このカメラを使って、映画制作をしている会社は細々ながらいくらでもある。実にしぶといカメラである。 おじさんは映像制作会社時代はディレクターであったから、職制上、カメラは回せなかった。しかし、会社には内緒で回したことが何回もある。現場とは、何をやろうと結果が良ければOKの世界である。リハーサルがきかないイベント撮影などで、どうしても2台カメラがほしいときがあったが、予算の都合でカメラマンをもう一人出すことはできないことが多々あった。そうしたときに、仲が良かったカメラマンと謀議をはかり、カメラ機材だけ余分に持って行き、現場で、おじさんが「なんちゃってカメラマン」をしたのである。 もちろん、重要なシーンは撮らせてくれないから、会場のロング撮影などに限られる。フィルムの装填などは担当カメラマンがしてくれた。シャッター開角度調整などはカメラマンが行い、絞りは「晴れたらF8.0、少し曇ったらF5.6」などと教えてもらった。フレーミングを決めて、レリーズを押すだけのカメラマン、リモコンよりは少しマシ程度のカメラマンである。 しかし、ディレクターとしては、予算上撮れないはずのカットが撮れて嬉しいし、もとよりカメラは好きだったので、楽しくて仕方がなかった。シュートボタンを押すときは、びびりながらも「撮ってるぞ」という実感があった。ターゲットを捕捉した喜びだろうか。これはディレクターだけやっていては味わえない感覚であった。 もちろん、これは、仲がいいカメラマンとの仕事のときだけの話である。相手が信頼してくれなければ、こんな無茶はできない。このカメラマンは非常に柔軟な思考の持ち主で、13~4歳年上だったが、職制を無視してあれこれ教えてくれた。いわく、俺がロケ先で怪我をしたときも、全然撮れないよりは何か撮れた方がいいからな、と。こういう先輩がいると、後輩は喜んで付いていく。"2005年02月06日 高品質戦場シネカメラ・アイモ"に書いた、中国南京ロケで壊れたカメラを現地で直してしまったのは、このカメラマンである。プロフェッショナル意識の高い素晴らしい先輩であった。 ![]() アリフレックスは一眼レフである。ファインダーで見たとおりのフレーミングで撮れる。そのかわり、自動絞りなど機構的に無理があるから付いていない。絞れば絞るほどファインダーは真っ暗になる。晴天昼間などで絞ってあると、ファインダーを覗いても何が写っているのかさっぱり分からない。ロケ先でカメラマンにフレーミングを見せてもらうときは、開放にしてもらわないと、構図の確認はできなかった。しかも、一眼レフであるから、回転ミラーが付いている。カメラをシュートすると、ミラーの回転により、ファインダーには1秒間に24回のフリッカーが発生する。ますます訳が分からなくなるのであった。 こんな見づらいファインダーを覗きながら、OK/NGの判断をする映画カメラマンとは大変な仕事である。現代のムービーカメラであれば、ビデオアウトが付いているから、複数の人間でOK/NGのチェックができるが、一昔前のムービーカメラでは、チェックできるのはカメラマンただ一人だったのである。そのため、映画におけるカメラマンの地位は監督並に高い。新人監督の場合など、カメラマンの方が格上だったりすることはしょっちゅうある。 映画カメラマンは偉くなると、どんどん自分で操作しなくなる。フォーカスもズーミングも絞り操作もパンニングもすべてカメラ助手の仕事である。カメラ助手は複数いて、ファースト、セカンド、サードなどと順番が付く。フィルム交換専門の助手、露出を測る助手、シュートボタンを押す助手など様々に分かれている。ファースト助手はいずれカメラマンに出世する。 カメラマンが偉くなりきると、もはや何もしない。もちろん、レンズの選定、フレーミング、照明や美術(舞台美術、大道具小道具)への駄目出しはやる。しかし、本番!の声がかかっても、自分ではシャッターすら押さないのである。ただ、ファインダーを覗き、撮影された内容のOK/NGを出し、撮影に関する全責任を負うのである。撮影技術がいくら優れていても、映画カメラマンにはなれない。感性と創造力、決断力、スタッフ掌握力の方が求められる。 "2005年03月10日 シマダヤ・中華焼ビーフン"に書いた義祖父は、京都太秦の東映撮影所のカメラマンであったが、その生涯に250本以上の映画を撮った人である。女房や義父、義母から話を聞くたびに、1950年代の日本映画黄金時代のカメラマンとは、とんでもない集中力だったのだな、と思う。 現在、ロードショーなどで上映される映画のほとんどは、65mmフィルム撮影、70mmフィルム上映というスタイルだが、単独上映館などでかかるスタンダードサイズ、ビスタビジョンサイズの映画では、まだまだ35mmカラーネガフィルムは現役である。長い映画の歴史とともに歩んできた35mmカラーネガフィルムは、いわば完成されたフィルムといっていい。5個800円ぐらいで投げ売りされているフィルムでも、実にしぶといトーンを写し出す。リバーサルフィルムに比べ、何かと格下に見られることが多いカラーネガフィルムであるが、おじさんはネガフィルムが大好きである。その広い階調は当分の間、凌駕されることはないだろう。
2005年 10月 21日
デジタル一眼レフの人気が日ごとに高まっているという。2年前、おじさんがEOS 10Dを買ったときには、一部の物好きしか買わなかったデジタル一眼レフであるが、今や写真が好きな人なら誰もが買う時代になった。たかだか2年のことであるが、デジカメの世界の変化は本当に早く、そして劇的である。そうした時代に、にわかにクローズアップされてきたのが、撮像素子に付くゴミの問題である。この問題は、コンパクトデジカメや銀塩フィルムカメラには存在せず、デジタル一眼レフ固有の問題だけに、頭を悩ます人が急に増えてきた。
![]() 撮像素子はイメージセンサーともいい、CCD、CMOS、"Foveon X3"など、数種類のものがある。銀塩カメラであればフィルムにあたる、いわば、デジタルカメラの心臓部である。デジタル一眼レフの撮像素子はコンパクトデジカメのものとは異なり、簡単に見ることができる。レンズを外し、ミラーを上げ、シャッターを開くだけで、ミラーボックス奥に青緑色に輝く撮像素子を見ることができるのだ。こうした単純な構造ゆえに、デジタル一眼レフの撮像素子にはゴミが付きやすい。厳密にいえば、CCD/CMOSなど撮像素子の前に貼り付けてあるLPF=ローパスフィルターにホコリやゴミが付着するのである。 ![]() 撮像素子にゴミが付くと、撮った画像に黒い点として現れる。絞りを絞るほど黒点はくっきりしてくる。上の写真では太陽のまわりに光条を出すため、F22まで絞っているが、これぐらい絞ると、てきめんにゴミが浮き上がってくる。この程度であれば、フォトレタッチで直せるが、それにしても面倒くさい。出現する場所や絵柄によっては直せない場合もある。 撮像素子にゴミが付くのはレンズ交換のときが多い。レンズ交換時に、ミラーボックスに空気中の微細なホコリやゴミが入り、シャッターを切った瞬間、撮像板に付着してしまうのだ。フィルムカメラであれば、撮影するたびにフィルムは移動していくから、ゴミが付着したまま残るということはなく、レンズ交換が問題となったことはない。ところが、デジタル一眼レフでは、付着したホコリやゴミはそのまま撮像素子上に残り、消えることがないばかりか、次第に蓄積されて行くからたちが悪い。 レンズ交換をしなければ、ゴミは付かないかというと、残念ながら、それでもゴミは付着する。ミラーボックスの中には、ミラーやシャッターなどの可動機構があるから、それらの摩耗により、特に使い始めはメカニカルダストが出る。これは次第に減っていくが、ズームレンズを使っていると、ゴミは入り続ける。ズームレンズは鏡胴が伸びたり縮んだりするので、一種のポンプの役割を果たし、知らず知らずのうちに、ゴミを吸い込むのである。 こうしたことから、デジタル一眼レフの撮像素子のゴミ問題は、構造的欠陥などと呼ばれるが、未だ抜本的対策はなされていない。"OLYMPUS E-SYSTEM スーパーソニックウェーブフィルター(超音波防塵フィルター)"は画期的なゴミ付着防止装置であるが、100%ゴミが付かないというわけではない。 おじさんが使っている"Canon EOS 10D"は、防塵装置など何も付いていないから、レンズ交換のたびに微細なゴミが増える。ときどきブロアで掃除しているが、それでも決して減りはしない。おじさんは空写真を撮るし、超広角レンズで撮るから、F8-11程度には絞る。くわえて、空のトーンを暗く落とし、コントラストを強調するレタッチを施すから、撮像素子のゴミ問題は被害が大きい。過去にも、"2005年07月11日 撮像板(CMOS)のゴミ"、"2005年08月10日 CMOSセンサー掃除"などのエントリを書いている。 撮像素子に付いたゴミの確認方法は簡単である。一面無地の被写体を選び、F22-32程度に絞り込んで撮影するだけでいい。白紙を撮影する方法もあるが、手軽なのは青空や一面の雲を撮ることである。青空の場合はフォーカスはアバウトでいいが、曇天の場合は故意にピンボケにした方が分かりやすい。故意にピンボケにするには、MFで30cmなど最短撮影距離に固定すればOKである。本来、無限遠にある雲を最短撮影距離で撮るのだから、これはもう見事にボケる。 ズームレンズの場合は焦点距離を望遠側にした方がいい。青空と雲がまだらになったような部分を避けるためには、狭画角の方がフレーミングしやすいからである。青空と雲がまだらになっているような空は、いくらアウトフォーカスでボケボケになっているとはいえ、ゴミは見つけにくい。単焦点レンズの場合も、同様に望遠レンズを使った方が簡単である。私は、ゴミチェック用レンズとして、F32まで絞れるTAMRON SP AF90mm F2.8を愛用している。というわけで、青空部分だけを狙って撮影すると、下のような写真が撮れる。曇天であれば、グレーになるだけである。 ![]() これは、おじさんのEOS 10Dの一昨日の状況である。F32まで絞っているが、ノーレタッチでこれぐらいゴミが写るのは重症である。[拡大画像 900x600pixels] ブロアで吹くだけの乾式クリーニングでは、もはやゴミが落ちなくなっている。撮像素子は帯電しているため、一度付いたゴミは落ちにくい。大きなゴミほど簡単には落ちてくれない。この写真をPhotoshopで画像処理し、ゴミの様子を分かりやすくしたのが、下の画像である。 ![]() ここまで大量のゴミが付いてしまったら、メーカーのサービスセンターに持ち込むのが一番確実な方法である。キヤノンの場合は、今のところは無償でセンサークリーニングをしてくれるから、おじさんも今年の3月にはサービスセンターに持ち込んでいる。もちろん、そのときは綺麗になったが、4~5日の間、カメラが使えなくなるのが痛かった。そこで、今回は自分で湿式クリーニングを行ってみることにした。ネット上の情報を調べる限り、何とか掃除できそうだったし、趣味で集めた"クラシックカメラ"の汚れたレンズを、何枚もレンズクリーナーで磨いた経験があったからである。撮像素子の掃除は、レンズクリーニングと通じる部分があるらしい。 ![]() 名古屋駅前のビックカメラで、湿式クリーニングのための道具を買ってきた。"HCL/堀内カラーのレンズクリーニング用品"である。しめて1610円であった。"ニコンのCCDクリーニングキット"というものがあることは知っていたが、少々高価である。納得できる高価さであればよいが、どう考えても、"8190円"もするようなものには思えない。それに、クリーニングクロスやブラシは必要と思えない。そんなわけで、必要と思われるものだけを買ってきたのである。"堀内カラー"といえば、銀塩世代にとっては親しみ深いプロラボであり、信頼感はある。そうおかしなものは売っていないだろうとの判断であった。 ![]() これがクリーナー液である。850円/60mlなり。大きく「オリンパスEEクリーナー(3310)使用」と書いてある。オリンパスEEクリーナー#3310は精密光学機器用洗浄剤としては定評があるものである。イメージセンサー清掃用とはどこにも書かれていないが、ネット上を調べてみると、これで、CCDやCMOSを掃除する人はけっこう多いらしい。オリンパスの"ハイパークリーンEE-3310"のウェブサイトを見ても、「レンズ・プリズム等の光学系精密部品の仕上げクリーニングに最適」と書いてある。レンズ・プリズムが掃除できるのなら、イメージセンサークリーニングは問題ないだろう。プロショップ、GIN-ICHIの"CCDクリーニングについて"というページには、具体的に「オリンパス ハイパークリーン3310を使う」と書かれている。 撮像素子清掃には無水エタノール(アルコール)を使うというネット情報が多いが、オリンパスEEクリーナー#3310もアルコールとシリコン系溶剤の混合物である。能書きとしては、アルコールより速乾性が強く、拭き痕が残りにくいとなっている。注意書きとして、「引火しやすい液体で、空気との爆発性混合物を形成」と書かれてあるから、取扱注意物件である。それでも、無水エタノールが薬局でしか買えないのに比べれば入手しやすい。両者とも危険度はあまり変わらないと思うのだが。容器には中蓋が付いており、長期間使わないときは揮発を防ぐようになっている。レンズ掃除やファインダー掃除もできるので、1本持っていれば何かと重宝しそうである。 ![]() レンズクリーニングペーパーである。661円/200枚なり。レーヨン70%、パルプ30%のレーヨン不織布である。かなり柔らかい質感で、昔からあるフジフィルムのゴワゴワしたレンズクリーニングペーパーに比べ、はるかにソフトである。これなら、キズは付きにくいだろう。ケバ立ちや紙粉が少なく、拭き取り後も繊維の付着がない、と書かれているが、実際には多少のゴミが出る。このゴミをひとつ残らず取り去ることはかなり難しい。ホリウチカラーには、ブラシやクリーニングクロスが入ったクリーナーセットがあるが、クリーニングペーパーが15枚しか入っていない。実際に掃除をしてみると分かるが、あっと言う間に15枚など使ってしまう。キットはやめたほうがいいと思う。予備のクリーニングペーパーを買った方がいい。 ![]() 先細型綿棒である。99円/15本なり。先が細く尖った綿棒である。非常にすぐれもので、細かい部分のクリーニングはこれがないとうまくできない。特にイメージセンサーの四隅は、クリーニングペーパーだけでは対処できない。残ってしまった細かいゴミをすくい上げるのにも使える。安価なものであるが、威力は素晴らしい。15本などとケチなことを言わず、100本買ってくれば良かったと思っている。 ![]() クリーニングスティックである。これにクリーニングペーパーを巻き付けて、イメージセンサーの掃除を行う。クリーニングスティックと言えば聞こえはいいが、ただの白木製丸箸と耳かきの軸である。耳かきの軸の方が細くて使いやすいかと思ったが、実際には丸箸の方が安定して使えた。この丸箸は普段調理に使っているものである。毎日洗っているから、ケバ立ちがなく、ゴミが出にくくなっていると思い、これを選んだ。 ![]() クリーニングペーパーは、このようにしてスティックに巻いていく。半分ほどは軸からはみ出るようにしておく。この際、手の脂がクリーニングペーパーに付くと具合が悪いから、作業の前には石鹸で手を洗っておいた方がいい。 ![]() クリーニングペーパーを巻き終わったところである。左半分にはスティックが入っていない。クニャクニャの状態である。 ![]() クリーナー液をクリーニングペーパーに付ける。つける位置は中央部分、つまりスティックの先端部分である。折れ曲がったときに、イメージセンサーに接するあたりにつける。この際、つけすぎは厳禁である。クリーナー液が多い場合でも、ほっておけば揮発してしまうが、その際にはっきり分かる揮発痕、拭きムラができる。これは実写に影響する。 ![]() クリーニングスティックはこのようにして使う。少し斜めにして、あまり力を入れず、そ~っと拭くのである。拭く方向は一方向だけ限定である。右から左に拭いて、さらに左から右に拭くという往復清掃をすると、確実にゴミが増える。また、一回拭いたら、すぐにクリーニングペーパーを交換すること。拭いたあとのクリーニングペーパーには、微細なゴミやほこりが付いているので、ヘタをするとゴミをなすりつけることになる。どうしても細かいゴミが残ってしまったら、先細型綿棒に少量のクリーナー液を染み込ませ、ゴミに接触させてすくい取るといい。目視で分からないような細かいゴミは無視していい。どうせたいして写りはしない。 ![]() 手順は簡単である。まず、カメラをミラーアップし、フォーカルプレーンシャッターを全開にして、撮像素子が見えるようにする。EOS 10Dの場合は、バルブにしなくても、背面液晶メニューから「撮像素子の清掃」を選べば、勝手にミラーアップしシャッターが全開になる。この際、バッテリーは必ず容量が充分にあるものを使うこと。バッテリー切れにより、作業途中でミラーやシャッターが降りたらシャレにならない。ミラーがスティックに当たり、撮像素子を傷つけてしまうかもしれない。また、ミラーアップする前に、作業台の周囲を固く絞った雑巾などで拭いておき、細かいホコリがたたないようにしておくといい。照明が確保できるのなら、風呂場で作業をするのもいいかもしれない。 ![]() ミラーアップしたら、さっさと作業をしたほうがいい。このように、チンタラと写真など撮っていると、さらにゴミが入る。写真に黒々と写り込むようなゴミは、たいてい目視でも分かる。老眼のおじさんでも分かるのだから、目さえ良ければ、ちゃんと目視できる。上の写真ではイメージセンサー右上に白っぽいゴミが付いているが、撮影画像では左下に写るゴミである。イメージセンサーに被写体は倒立像として写るのである。 ![]() 一番最初に掃除した結果がこれである。悪い見本である。[拡大画像 900x600pixels] あまり防塵を意識せずに、適当に掃除したらこうなった。ゴミは前よりも増えているし、拭き痕、拭きムラも大変なことになっている。もちろん、実写に影響を与える。実写に影響を与えるからこそ、こうして写っているのである。このときは、クリーナー液を付けすぎた上、クリーニングスティックを左右に往復させたが、これは絶対にやめた方がいい。せっかく取れたゴミを再びなすりつけているようなものだからである。 ![]() 心を入れ替えて、手を洗い、周囲を雑巾がけし、防塵を意識しながら丁寧に掃除した結果がこれである。拭きムラはなくなったし、上の写真よりは綺麗であるが、一番最初に比べると、特に綺麗になった感じはしない。これはイカンと思い、さらに細心の注意を払って掃除をした。クリーニングペーパーは、ひとこすりしたら交換し、決して左右往復はせず、目視で分かるゴミはすべて、先細綿棒で丁寧に拾った。その結果、下のような画像が得られた。 ![]() 左上のあたりに何かあるようだが、もうこれは見なかったことにした。その他はパーフェクトである。何も見あたらない。[拡大画像 900x600pixels] 左上を気にして、もう一度掃除したら、二度とこの状態は得られないかもしれないので、これで掃除をやめることにした。触らぬ神にたたりなしというではないか。 ![]() 上の画像の画像処理なしの画像である。F32まで絞っているが、何も出てこない。綺麗なものである。これなら満足である。 ![]() クリーニング終了後のショットである。見事に何にもない。以前、キヤノンサービスに出したときは、ゴミはなくなっていたが、拭き痕は残っていた。それよりよほど綺麗である。初めてにしては上出来である。 このエントリを読んで、自前でイメージセンサーの湿式クリーニングをやってみようと思われた場合は、くれぐれも自己責任でお願いしたい。おじさんは何の保証もできない。メーカーは自前湿式クリーニングを万人に勧めてはいない。おじさんの場合は、たまたまうまくいっただけかもしれない。ヘタをすると、ゴミが増えた状態のままになる恐れがある。 おじさんはクラシックカメラのレンズ拭きで修行を積んだが、レンズを拭いたことがない方は、あらかじめ、フィルターやジャンクレンズなどで練習をした方が安全である。ゴミもさることながら、拭きムラが非常に出やすいのだ。拭きムラが出た~拭きなおす~拭きムラが出た~拭きなおすの無限ループに陥る恐れもある。何回も拭いているうちに、ローパスフィルターにキズを付けてしまう恐れもある。 ![]() 上の写真は、おじさんが持っている35mmフォールディングカメラ、"Kodak Retina II Type 011"のレンズ、Schneider Kreuznach Retina Xenon 50mm F2.0の前玉である。同心円状に顕著なキズが入っているが、これは通称「拭きキズ」と呼ばれるものである。レンズ掃除の際、空気中の微細なゴミがクリーナー液に混じり、ゴミをレンズにこすりつけてしまうため、こうしたキズができる。綺麗にするつもりでも、正しいクリーニング方法で行わないと、逆にレンズにキズを付けてしまうのである。拭きキズは直すことができない。 クラシックカメラのレンズには、拭きキズが付いたものが実に多い。素人の生兵法が多かったのだと思われる。幸い、前玉であるから、これだけ拭きキズが付いていても、よほどの逆光でない限り、普通の撮影には影響はない。このクセノンの場合も影響がないどころか、非常に美しく、さすがはシュナイダー・クロイツナッハという描写をする。しかし、これがイメージセンサーであれば、影響は甚大である。最悪、センサーユニット交換になるだろう。イメージセンサーの湿式クリーニングを行うときは、くれぐれも慎重に行ってほしい。 -------------------- 2007/12/20追記 改良版の方法を記載したので、興味のある方は参照してほしい。 "2007年12月20日 究極のLPFクリーニング綿棒 1本10円!" http://xylocopal2.exblog.jp/7777649/
2005年 10月 19日
おじさんは安い道具が好きである。以前からその傾向はあったが、双極性障害(躁うつ病)のため失職し無職となってからは、より一層安いものが好きになった。高価な機材を望んでも買えはしないので、安いものを使いたおす方向でショット数を稼いでいる。幸い、デジカメはランニングコストが不要だから、どれだけ撮っても必要経費は変わらない。唯一必要なのは機材費であるが、写真用機材は徹底して安いことを優先して選んでいる。現在のラインナップは、キヤノンEFマウント一眼レフに限っていえば、以下のようになっている。
------------------- Canon EOS 10D Canon EOS100 QD Canon EF 50mm F1.8 II TAMRON SP AF11-18mm F/4.5-5.6 Di II TAMRON SP AF28-75mm F/2.8 XR Di TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di Macro TAMRON AF70-300mm F/4-5.6 LD Macro ------------------- デジタル一眼レフ、EOS 10Dがやや高価であるが、購入した2年前は、現在ほど多くのデジタル一眼レフが出回っておらず、何とか購入できる価格のものは、EOS 10Dしか存在しなかった。選択肢が他になかったのだから、これはしかたがない。それに、先代の"EOS D60"に比べれば、EOS 10Dでも破格の安さに感じられたものである。購入以来、EOS 10Dの累積撮影数は3万ショットを越えたから、充分元はとったつもりである。銀塩AF一眼レフ、EOS100QDは、"2005/09/27 ジャンクなEOS100QD"に記したとおり、500円で買ったジャンク、つまり不動品である。コストはほとんどかかっていない。 レンズの方は、キヤノン純正が1本あるだけで、他は全てタムロン製である。キヤノン純正、と偉そうなことを書いているが、EF 50mm F1.8 IIというのは、キヤノンを代表する安レンズである。何しろ新品が実売1万円以下で買えるのである。"EF85mm F1.2L USM"あたりを持っていれば、一点豪華主義と書くことができるが、EF50mm F1.8 IIを持っていても何の自慢にもならない。 おじさんは、"2005/09/13 無論タムロン!!"に記したように、タムロンのレンズが好きである。銀塩MF一眼レフ時代から使っていて愛着があるし、他のレンズ専業メーカーのものより、描写傾向が好みに合っている。タムロン製レンズの一番素晴らしいところは、抜群のコストパフォーマンスにある。価格の割には品質/性能がいいのだ。絶対性能が高いわけではない。あくまでも価格に比べて、である。英語の「コストパフォーマンス」、日本語の「費用対効果」は、おじさんがものを買うとき、とりわけ重視する部分である。パフォーマンスに比べて無用に高価なものは買わないし、買うこともできない。 フランス人はケチであると、よくいわれる。フランスには、品質と価格のマッチングをことのほか厳しく要求する国民性があるらしい。フランス語でコストパフォーマンスのことを、"カリテ・プリ"という。"Qualité=品質"、"Prix=価格"であり、成句となっている。ものの価格だけでなく、レストランの料理の味、ホテルのサービスなどに対しても使われるから、聞いたことがある人もいることと思う。 フランス人はカリテとプリのバランスに敏感といわれ、プリの割にカリテが伴わないものは、徹底的に排斥されるという。フランス人がケチだといわれるのは、カリテ・プリの一面だけを捉えたものであって、高価でも品質が素晴らしければ彼らは納得するという。フランス人はケチではなく、合理的なだけである。 カリテとプリ、品質と価格の相関曲線は正の曲率を持ったトーンカーブに似ている。カリテとプリは直線的に正比例するのが理想である。10万円のレンズは1万円のレンズの10倍よく写らなければならないし、100万円のレンズは1万円のレンズの100倍素晴らしくなければならない。しかし、現実にはそうならない。100万円のレンズは1万円のレンズの50倍ほどしか素晴らしくならないのである。品質と価格が直線的に正比例するのは価格が安いうちだけで、じきにコストを投じても、クォリティは期待される増加率を伴わず、カリテ・プリ相関曲線は緩傾斜となってしまう。高級レンズになればなるほど、価格差が性能差に結びつかなくなり、わずかな違いのために大枚をつぎこむことになるのである。 わずかな違いといっても、性能差は厳然と存在するから、そのために費用を惜しまないユーザは存在する。多くはプロであるが、アマチュアの中にもいる。おじさんは、そうした人々を否定するつもりはまったくない。そうした製品を必要とするユーザ層があることも理解できるからである。おじさんもかつては映像ディレクターであり、プロ用機材を使う立場にあった。 おじさんが映像制作会社にいた頃の放送用ビデオカメラは1000万円近くしたが、クォリティ、耐久性、信頼性の面からいえば、安価なもので代用することは不可能であった。プロ用機材で最も重視されるのは信頼性である。いついかなる状況にあっても、必ず動作しなければならないのがプロ用機材である。この要求を製品化すると、コストは跳ね上がる。スペック上には現れにくい要素のため、不当に高価にみえてしまうが、使ってみれば違いは分かるのである。高級レンズのカリテ・プリが悪く見えるのはこの所以である。 現在のおじさんは、ただの貧乏人なので、品質が素晴らしければ高価でも買う、ということはできない。カリテ・プリを重視し、そこそこの品質のものを安価に買うというのが、いつもの買い方である。カリテ・プリに優れたものとは、上の図の相関曲線が緩傾斜に移行する直前部分に位置する商品である。品質と価格の関係が直線を保った中で、最も高品質なものが、たいていの場合、カリテ・プリに優れた製品となる。 タムロンは、この位置の製品を作るのがうまい会社である。"SP AF90mm F/2.8 Di Macro"や"SP AF28-75mm F/2.8 XR Di"は、まさしくこの部分に位置するレンズである。両者とも使えば使うほど、カリテ・プリの優秀さが分かるレンズである。カリテ・プリのみならず、本来の描写性能までもが上位機種に肉薄する素晴らしいレンズである。 ![]() 上の写真は、"TAMRON AF70-300mm F/4-5.6 LD Macro Model #572D"。おじさんがもっとも最近買ったタムロン製レンズである。10月14日に届いたばかりだから、まだバリバリの新品である。買った店は奈良の激安カメラ店、"富士カメラ"である。最近、レンズ関係はここで買うことにしている。何しろ安くて仕事が速いのだ。 このレンズ、高級レンズではない。タムロンが手前味噌で付けている高性能レンズの型番"SP (Super Performance)"も付いていない、ただのAFレンズである。デジタル撮像素子対応コーティングや鏡胴仕上げが施された"Di"タイプでもない。蛍石などの特殊硝材も使っていない、いたって凡庸なレンズである。 このレンズが図抜けているのは、ひとえにその価格である。一応、47000円という定価が付いているが、そんなものは有って無きがごとしである。おおかたの店では1万3000円前後で売られている。いったい原価はいくらなのかと思ってしまうが、このレンズ、開発費はとっくに減価償却しているものと思われる。このレンズが発売されたのが2000年11月、原型となった"Model #472D"の発売開始が1999年、大元になった"Model #372D"の販売開始が1996年だから、タムロンとしては充分元を取っているはずである。そろそろ、このレンズのデジタル撮像素子対応版、Diタイプが出て来る頃である。 そんなわけで、TAMRON AF70-300mm F4-5.6は非常に安価なレンズなのであるが、中でも富士カメラは安かった。黒鏡胴モデルが"9200円"、シルバーモデルは何と"8000円"である。もちろん、シルバーモデルを買おうとしたが、よく見るとキヤノンEFマウント用はブラックモデルしか存在しないのであった。 このレンズ、上のカリテ・プリ相関図でいえば、左下隅に位置する廉価版レンズであり、レンズ性能を追求する写真愛好家は絶対に買わないレンズである。300mmクラスの望遠レンズの価格帯は非常に広い。キヤノンEFマウント用でいえば、頂点は間違いなく通称「サンニッパ」、単焦点の"EF300mm F2.8L IS USM"の定価69万円だろう。この価格にもかかわらず、サンニッパはよく見かける。タムロンにも「サンニッパ」はある。定価425000円の高級レンズ、"SP AF 300mm F/2.8 LD"である。こちらはさっぱり見かけない。 その下に、通称「白レンズ」と称する白鏡胴の定価20万円クラスが来る。運動会で自慢できるのはこのクラスである。さらに、定価10万円前後のIS(イメージスタビライザー=手ぶれ防止装置)付の製品が来る。その下はぐっと庶民的になり、売価3万円程度のあまり明るくないレンズが来る。その下にシグマのアポクロマート(色収差補正)レンズが来る。 こうした300mmクラス望遠レンズヒエラルキーの最下層に来るのが、おじさんが買った9200円のタムロン製レンズである。もはや、この下には何もない。あるとすれば、番外としてのロシア製反射式"MC RUBINAR MACRO 300mm/f4.5"か"スリービーチ光学製360-600mm F5.8-9.6"ぐらいのものである。ロシア製レンズをいくつか使った経験からいうと、MC RUBINAR 300mmはそれほど悪い製品ではないと思う。スリービーチ光学製に関しては使ったことがないので不明である。 安物買いの銭失い、とはよく聞く言葉である。望遠レンズを頻繁に使うユーザであれば、このクラスのレンズはすぐに物足りなくなって買い換えることになると思う。事実、中古カメラ店では、この手の70-300mm F4-5.6クラスのレンズは遭遇確率が非常に高いし、ネットオークションの出品率も高い。しかし、これでいいのである。おじさんは望遠レンズの使用頻度が低く、ときどき、満月を撮ったり、ヒヨドリを撮ったり、野良猫を撮ったりするだけだから。普段は最長90mmで間に合っているから、望遠側の品質が悪くてもあまり気にならない。今まで使っていた、"Canon EF100-200mm F4.5A"が直進ズームの上、MF不可のため、使いにくかったのでリプレースするだけである。 ![]() TAMRON AF70-300mm F4-5.6の鏡胴中央部である。手前側がズームリング、フード側が距離環である。常識的な作りであり、使いやすい。左の方にある"NORMAL/MACRO"切換スイッチは最短撮影可能距離の変更スイッチである。NORMALでの最短撮影距離は1.5m、マクロ切換時は0.95mになる。ただし、MACROは180-300mmの間しか有効にならず少々使いにくい。 とはいえ、原型の"Model #472D"や"Model #372D"にはマクロ機能がないのだから、存在するだけでもありがたい。最短撮影可能距離1.9mのEF100-200mm F4.5Aに比べたら、このレンズの0.95mは涙が出るほど使いやすい。これ以上の最短撮影距離を全焦点距離域で求めるのであれば、最初から"AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di"を買った方がいいと思う。おじさんも、28-300mmの方が汎用性が高いので欲しかったが、かなり高くなるので諦めたのである。 ![]() 300mmにしては小振りなレンズであるが、それでも300mm側にズームリングを回した上、最近接状態までヘリコイドを繰り出すと、かなり長くなる。この状態でフードを付けて持ち歩くと、間違いなく怪しい人になる。持ち歩くときは気を付けた方がいい。 ![]() タムロン伝統の使いやすいフロントキャップである。ニコンの純正レンズキャップとよく似た構造になっている。普通、レンズキャップというものは、外側からつまむというような形になっているものがほとんどだが、タムロンやニコンのレンズキャップは中央にもつまむ部分がある。これのおかげで、フードをしたままでもレンズキャップの着脱が可能になる。些細なことではあるが、なかなか使いやすい。タムロン、ニコン、両者のレンズキャップともに人気があり、レンズキャップだけこれらに交換する人はけっこう多い。キヤノンのレンズにニコンのキャップは抵抗があるのか、タムロンを使う人の方が多いような気がする。たいして高価なものではないが、もちろん、タムロンの方が少し安い。 ![]() タムロン伝統の使いにくいリアキャップである。何が使いにくいかというと、リアキャップの指標をレンズの赤点に合わせないとはまらないのだ。急いでいるときなど、けっこう慌てる。キヤノン純正のリアキャップはどんな方向に突っ込んでも、少しひねればロックできるから、はるかに使いやすい。そんなわけで、おじさんはフロントキャップはタムロン、リアキャップはキヤノンを愛用している。 ![]() いつも行っている歪曲収差のチェックである。広角域を含まないズームレンズでは、それほど顕著な歪曲収差は現れないはずであるが、一応調べてみた。これは、70mm端である。軽い樽型であるが、高倍率ズームレンズの広角端に比べれば、歪曲の程度は軽微である。 ![]() こちらは300mm端である。わずかに糸巻型と思われるが、ここまで寄ってしまうと、はっきり言ってよく分からない。一目で分かるほどひどくなければOKである。 AFのフォーカスチェックも行った。狙ったところに、きちんとフォーカスが来るか、前ピンや後ピンではないかを調べるのである。テスト方法は、"2005/03/15のエントリ"に書いた1万円札を使う方法である。1万円札を斜め横から絞り開放で撮影し、狙ったところにピントが来るかどうかをチェックするのである。 左の写真はこのレンズのチェックシーンではない。花形フードが付いていることから分かるように、SP 28-75mm F2.8 XR Diのチェックシーンである。このレンズでは、この写真の距離ではフォーカスが来ない。チェックは、焦点距離180mm、被写体までの距離0.95m、マクロスイッチONの状態で調べた。 ![]() ISO200, F4.5, 1/125sec. 無加工原寸大 このレンズのフォーカスチェックの結果である。狙ったのは中央の「国立印刷局製造」という文字列の真ん中である。やや「国立」方向がシャープだから軽い前ピンのように見えるが、上出来ではないだろうか。10回ほど、MF無限遠~AFを繰り返したが、すべてこのあたりに合焦した。タムロンのレンズは、総じてAF性能が優秀である。 やや色収差が出ているが、絞り開放のコントラストは良い方だと思う。今まで同様なチェックを様々なレンズで行ってきたが、悪い部類ではない。むしろ、良い部類である。参考までに、他のレンズの開放におけるフォーカスチェック原寸大画像を下に上げておく。撮影サイズが微妙に異なるので厳密な比較にはならないが、おおよその傾向は分かると思う。 "Canon EF50mm F1.8 II" "Canon EF24-85mm F3.5-4.5 USM" "SIGMA 18-125mm F3.5-5.6 DC" "TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di Macro" "TAMRON SP AF28-75mm F2.8 XR Di" ![]() Canon EOS 10D / TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD Macro ISO400, F8.0, 1/1000sec., W/B:Auto, 300mm 300mm端での撮影である。EOS 10DはAPS-Cサイズのイメージセンサーであり、画角差は1.6倍であるから、35mm換算480mmの画角である。さすがに凄まじいばかりの圧縮効果である。写っているのは撮影ポイントから1~1.5km離れた場所である。地下鉄の駅でいうと、隣およびその隣であるが、まるですぐそばにあるように見える。これぐらいの焦点距離になると、手持ちでは相当苦しい。この例では、ISO400に増感したが、素直に三脚or一脚を使った方がいいと思う。 このレンズ、TELE端はキリキリとシャープな描写というわけにはいかない。どちらかといえば、マイルドで柔らかい描写である。これぐらい離れた場所の描写となると、空気の揺らぎが無視できなくなり、レンズが甘いのか空気の揺らぎなのか分からなくなるが、比較すれば違いはある。以前使っていた、EF100-200mmは古いレンズであるが、解像感だけを比較すれば、100-200mmの方がシャープである。その代わり、このレンズの70mm側は充分にシャープで、とても安レンズとは思えない。 望遠レンズの宿命である色収差、特に軸上色収差は分かるぐらい出ている。左は上の写真の中央下部を原寸大に切り出したものである。輝度差がある部分、自動車のドアミラー付近にパープルフリンジが出ている。レンズ名にLDが付くように、一応、LD(異常低分散)ガラスを1枚使ってはいるのだが、補正し切れていないようである。絞れば幾分マシになるが、これ以上絞ってもあまり変化はなかった。 ![]() Canon EOS 10D / TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD Macro ISO400, -1.0EV, F5.6, 1/350sec., W/B:5200K, 300mm これも300mm端の撮影。一脚使用。2~3m先の鳩を撮っているから、空気の揺らぎは無視できると思う。キリキリにシャープではないが、一応現代のレンズであるから、ボケボケということはない。こうした被写体を撮る際に問題となるのは、AFのトロさである。キヤノンUSMのように、即時にシュッと合焦はしない。無限遠からだと、モタモタモタ~ッと合焦する。鳩なら何とかフォーカスを追えるが、スズメなど動きの速い鳥ではかなり苦しい。運動会やスポーツ撮影などの動体を追う場合もフォーカス追尾が厳しいものと予想される。 ![]() Canon EOS 10D / TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD Macro ISO400, F4.5, 1/750sec., W/B:Auto, 176mm マクロ領域の撮影ではない。ぎりぎりノーマルモードである。ノーマルモードでもここまでの接写ができる。写っているのは直径5mm程度のキンモクセイの花である。この焦点距離の絞り開放F4.5での撮影だが、さすがにボケは柔らかく綺麗である。手持ちで撮ったが、三脚or一脚を使った方が、歩留まりが良くなるのは確実である。 ![]() Canon EOS 10D / TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD Macro ISO400, F8.0, 1/500sec., W/B:5200K, 176mm 頭上1mぐらいの場所にあるハナミズキの実である。一脚使用。脚立でも用意しなければクローズアップが撮れない被写体だが、こうしたときに、このレンズのようにテレマクロが使えるレンズは便利である。被写界深度を稼ぐために、F8まで絞っているが、一段開けばより柔らかな描写になる。こうした被写体を撮るときは、柔らかい描写が逆にプラスとなる。 TAMRON AF70-300mm F4-5.6 LD MACRO、安いこと以外に突出したセールスポイントはないレンズである。とはいえ、望遠レンズの使用頻度が少なく、動体を撮らないユーザなら、そこそこ使えるレンズではないかと思う。TELE端の描写が甘い、残存軸上色収差が多い、AFが遅い、70-180mmの間でマクロ撮影がきかない、などの問題はある。しかし、この価格で、これだけ写れば、おじさん的には無問題どころか、かなり評価は高い。カリテ・プリは満足すべきレベルにあると思う。安いレンズを買い、なかなか使えるじゃないか、と言っていた方が、高価なレンズを買い、意外な弱点を知るよりは心の平安が保たれていい。
2005年 10月 17日
おじさんの家には、キンモクセイが一本ある。樹高3mぐらいの、それほど大きな木ではないが、毎年10月になると花を咲かせ、甘く切ない芳香を漂わせる。おじさんはこの香りが大好きであるから、9月下旬ともなれば、早く咲かないかと待ち遠しくなる。キンモクセイは早春のジンチョウゲと並んで、日本を代表する香りの良い花だと思う。
うちのキンモクセイの開花時期は一定しており、毎年10月5日前後になると、時限スイッチが動作するように開花する。サクラの開花時期が平年と異なる年でも、庭のキンモクセイだけは律儀に10月5日に開花した。しかし、今年は1週間以上遅かった。10月5日にキンモクセイを見たときは、まだ当分咲きそうもない気配であった。 ![]() キンモクセイが咲いたことは、視覚よりも嗅覚で分かる方が多い。朝、起きたとき、雨戸を開けると、秋の冷たい朝の空気の中に、独特の甘い香りを感じる。このとき、「あ、咲いたな」と思うのである。例年であれば、それは10月5日であることが多いのだが、今年は10月13日であった。8日遅れである。こんなに遅れたことは最近はない。このキンモクセイの開花の遅れ、どうやら地球温暖化に起因するものらしい。 先頃、気象庁が発表した、"2005年9月の世界と日本の地上気温について(速報)"によると、先月の世界の平均気温は、1880年以降で最も高い値となったそうである。また、9月の日本の平均気温は、1898年以降で3番目に高い値となったという。全地球規模で平年値を0.85℃上回ったというのである。その原因についてはリンク先の気象庁ウェブサイトに記されているが、つまるところ、複合要因によるらしい。二酸化炭素などの増加に伴う地球温暖化に、数年~数十年程度の規模で繰り返される自然変動が重なったものとされている。 おそらく、キンモクセイは電照菊のように、日照と気温の変化により、開花時期が決まるのだろう。このまま地球温暖化が進み続けると、おじさんが老齢年金を受け取る頃には、キンモクセイは11月3日の文化の日あたりに咲くようになっているかもしれない。地球全体が促成栽培野菜のビニールハウスに入っているようなものである。 ![]() キンモクセイの花は小さい。直径5~6mm程度である。その代わり、大量に咲く。キンモクセイの花が落ちたあたりは、大量の花びらで、オレンジ色の絨毯を敷き詰めたようになっている。おじさんが、この小さな花と甘い香りを結びつけ、初めてキンモクセイという名前を知ったのは中学生の頃である。"Xylocopal's Weblog 2005年03月20日 沈丁花の想い出"に記したように母が教えてくれたのではない。自分で香りの元を調べ、オレンジ色の小さな、しかし大量の花を見つけたのである。初めて見たときは、こんなに小さな花のか、と拍子抜けした。しかし、匂いを嗅いでみれば香りの発生源は明らかである。ほどなく、この花にはキンモクセイという名前があることを知ったのだった。 キンモクセイは中国南部原産の常緑小樹木である。日本に渡来したのは江戸時代といわれている。日本の秋には欠かせない植物であるが、自生種はなく、すべて栽培種である。現在、流通、植樹されている木のほとんどが雄株のため結実はしない。原産地・中国では、キンモクセイは丹桂、桂花と呼ばれる。中国南部、山水画的景観で名高い漓江下りの街、桂林は古来キンモクセイの里として知られた土地である。桂林という名前はキンモクセイがたくさんある街、というような意味らしい。現在も桂林市内には45万本のキンモクセイがあり、秋にはいっせいに開花し、街中が芳香に包まれるという。 キンモクセイは金木犀と書く。名前のとおり、モクセイ科の植物である。モクセイ科の植物には香りが強い木々が多い。よく知られているモクセイ科の植物としては、"レンギョウ"、"ネズミモチ"、"オリーブ"、"ライラック"などがある。キンモクセイの直接の仲間、モクセイ属にはキンモクセイの他、"ギンモクセイ"、"ヒイラギ"、"ヒイラギモクセイ"がある。 ヒイラギとは、尖った葉を持つ魔除けとして知られる植物である。節分の際に、イワシの頭をヒイラギの小枝に挿したものを戸口や鬼門に飾る風習が京都方面にはある。おじさんの家でも、女房が京都出身のため、節分の際には、新しいものを玄関に飾っている。魔除けであるから、次の節分まで片づけない。クリスマスの際によく使われる赤い実がついたヒイラギは、セイヨウヒイラギでありモチノキ科の植物であって、キンモクセイのの仲間ではない。 ![]() モクセイ科の植物の多くは6~7月に花を付けるが、モクセイ属は10~11月に開花する。雌雄異株で、花冠は4裂し、雄花には雄しべ2個と、先のとがった不完全な雌しべが1つある。キンモクセイはモクセイの変種といわれている。モクセイとは通称ギンモクセイ、キンモクセイそっくりの白い花が咲く植物である。香りはキンモクセイの方が強い。うちのキンモクセイを植えた義祖父は明治の人だったが、ギンモクセイとは呼ばずモクセイと呼び、ことのほかその香りを愛した。しかし、このモクセイは残念ながら、義祖父の死後、数年経って枯れてしまった。なお、キンモクセイやモクセイの仲間には、淡黄色の花を咲かせるウスギモクセイというものもある。植物としてのキンモクセイのあらましは下記のとおりである。 ---------------------------------------------------- キンモクセイ 分類: モクセイ目モクセイ科モクセイ属 学名: Osmanthus fragrans var. aurantiacus 和名: キンモクセイ 英名: Fragrant Orange-Colored Olive, Devilwood 樹種: 常緑小高木 花の大きさ: 5mm 樹高: 3~6m 花期: 10月 結実期: 5~6月(日本では普通結実しない) 原産地: 中国南部 ---------------------------------------------------- 属名の"Osmanthus"は、香りや匂いを意味する"osme"に、花を意味する"anthos"が付け足されたもの。種小名の"fragrans"は"芳香のある"という意味であるから、二重に芳香を強調した名前となっている。いかにキンモクセイの香りが特徴的であるかがよく分かる。モクセイは中国名の木犀を音読みにしたものという。木犀は木の犀、つまりモクセイの木の幹の様子がゴツゴツしており、動物の犀(サイ)によく似ていることから付けられた名前だといわれる。木のカバでも同じ意味だろうが、何故かカバではなくサイになったようである。 特徴ある木肌の幹は太く、分枝してたくさんの葉を付ける。葉にはときどき鋸歯状の切れ込みが入ったものがある。この鋸歯状の切れ込みはギンモクセイの方が多いと言われる。キンモクセイの葉は、触れると硬く、パリッとしている。葉の表側は褐色を帯びた暗黄緑色で、裏側は少し白っぽい。ツバキなど暗緑色の樹木に混ざって生えていると、遠くから見てもキンモクセイがあるあたりだけがひときわ明るくなって見える。 ![]() キンモクセイの開花はドラマチックである。10月上旬のある朝、突然強い香りに包まれるのである。その香りは日本の花の中では特別強く、春のジンチョウゲよりも強いように思う。香りの質も素晴らしく、甘く切ない秋の訪れを否応なく感じさせてくれる良い香りである。おじさん、昔はキンモクセイは柑橘系の植物だと思っていた。ユズをはじめ柑橘系の植物も特徴ある強い香りを放つが、キンモクセイもその仲間だと思っていたのである。 キンモクセイは非常に頑健な木で、育てるのは難しくないという。おじさんの家でも、手入れらしいことはあまりしないが、毎年10月になると忘れずに花をつける。しかし、大気汚染には敏感なため、空気が汚れた場所では花を付けにくくなるという。家の前の道路の交通量は少なくはないので、いつまでキンモクセイが花を付けてくれるか心配である。そういえば、昔に比べて、花の付き方が悪くなったような気がする。
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