2005年 01月 11日
名古屋発祥の超弩級パスタ "あんかけスパ" |
あんかけスパゲッティとは、1960年代初頭に名古屋で生まれたエキセントリックなスパゲッティである。中京圏独自のスパゲッティであり、同様のものは他地域には存在しない。その強烈なオリジナリティとアクの強さが災いして、全国的知名度は「きしめん」、「味噌煮込」ほどには及ばない。しかし、名古屋の中高年サラリーマンにとっては、パワーフード、ソウルフードとしてこよなく愛され続け、あまたの中毒者を作ってきた悪魔的食品である。

からめ亭のバイキング
さて、「あんかけスパゲティ」とは、一体いかなるスパゲティであるのか?
それは、「イタリア料理」とも「パスタ」とも呼ぶのが憚られる、泥臭さにあふれた純然たる名古屋の郷土料理である。ペペロンチーノやプッタネスカなど本式イタリアンパスタと同一線上で語るのは全くの誤りである。概念として近いのは「ロメスパ」であろうか。
あんかけスパの麺は、ラードで炒められ、ギラギラに油ぎった極太(2.2mm)のものである。オリーブオイルなどの植物性油脂ではない。動物性油脂の筆頭、ラードで炒められているのだ。この麺の上に、赤褐色に濁ったドロドロのソースがかけられている。このソースが中華料理の「あんかけ」に似て、大変粘度が高いため、現代では通称「あんかけスパゲッティ」と呼ばれている。ただし、中華料理のあんかけとは異なり、甘酸っぱいものではない。酸っぱい場合もあるが、それは甘酢によるものではなく、トマトによる酸味である。色は明るいオレンジから黒に近いものまで様々である。

そーれのミラネーゼ
あんかけソースは、一応、ミートソースのバリエーションということになっているが、一般的なミートソースとはかなり様相が異なる。視覚的に近いのは具なしの麻婆豆腐である。主な材料は、トマト、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、ニンニク、牛肉ミンチなどといわれ、これらをオーブンで2日以上にわたり煮込むのだとか。煮込んだ野菜/肉類は徹底的に潰され、何度も裏漉ししながら伸ばすのだという。家庭でも簡単に作ることができる、という記述をときどき見かけるが、なかなか難しいのではないかと思う。ある程度のプロダクトスケールと高度な熟練を要する、手間暇をかけたプロの味である。

あんかけ家のピカタ
味であるが、ひとことで言えば名古屋人の嗜好に合った濃厚なものである。味噌煮込、味噌カツを愛し、"台湾ラーメン"を生み出した名古屋人の好む味である。素材を活かした淡泊上品な味というものは無縁である。おまけに黒胡椒の使用量が常軌を逸している。「これでもか!」というぐらい多量の黒胡椒が入れられているため、ピリピリと非常に辛い。唐辛子辛いのではなく胡椒辛いのである。山椒で舌が痺れる本場の麻婆豆腐に通じるものがある。粘度の高いデミグラスソースなどを想像していると痛い目に遭う。どう見ても上品な食物ではない。B級グルメ、ジャンクフードという言葉がしっくりと似合う。

Lecceのハムエッグ
「あんかけスパゲッティ」のソースは、原則基本的に、これ一種類である。カレーソースなどを置く店もあるが、あくまでも無理矢理連れてこられた同伴者のための緊急避難用ソースと考えた方がよい。あんかけスパゲッティにおいては、このインパクト絶大のドロドロソースの上に、ソーセージ炒め、トンカツ、ハンバーグ、目玉焼、野菜炒めなど様々な具を乗せる。乗せる具によってのみ、メニューの名前が変わる。その名前は名古屋でしか通用しない独自のものである。たとえば、
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ピカタ
豚肉の黄金焼(玉子焼)。
むきアサリ&小エビの黄金焼はナポリと呼ぶ。
バイキング
魚フライ(冬季はカキフライ)、目玉焼、赤ウィンナー。
メキシカン
グリーンピース、コーン、マッシュルーム、トマトetc.
ミラネーゼ (ミラ、ミラネとも)
ハム、ベーコン、赤ウィンナー、オニオン、マッシュルームetc.
カントリー
トマト、ピーマン、オニオン、ハム、マッシュルームetc.
ミラカン
ミラネーゼ+カントリー
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ピカタ以外は名前から内容が連想不可能な意味不明なものばかりである。しかし、名古屋の「あんかけスパゲッティ専門店」では、ほとんどどこでもこの名前が通じる。各店、材料もだいたい同じ、ウィンナーソーセージは必ず赤皮のものを使う、ソースは麺のまわりにリング状にかけるなどの盛りつけ作法も同じである。ほとんどの店が"日本製麻 Volcano No.15 赤スパゲッティ 2.2mm極太麺"を使うというのも同じである。発祥店から弟子が暖簾分けして独立していくと、こうした現象が起こるようである。それぞれのビジュアルイメージに関しては、"からめ亭 岡崎店 PDFメニュー"が参考になると思う。

パストランテのミラカン
あんかけスパゲティ専門店の主要客層は、圧倒的に30~50代の中高年男性サラリーマンである。さように下世話な食品ゆえ、若い女性には人気がない。店の多くは都心部に立地し、昼休みになると、あまたのサラリーマンが店前に行列を作っているのがしばしば見受けられる。とはいえ、客の回転は良く、次々に出店していくので、それほど長時間待つ必要はない。都心の賑わっている店では、ランチライム時、オーダー後1~2分でスパゲッティが出てきたりすることがある。これは、茹で上がった麺をラードで炒め、大量に作り置きしているからである。この理由ゆえに麺がアルデンテから程遠くなる場合が多い。
もとより、あんかけスパゲッティはアルデンテを求める食品ではない。麺の茹で加減は店により様々である。髪の毛1本分の芯を残して茹で上げ、食事時に芯がなくなるという正統派アルデンテの店もあるが、その数は少ない。それよりも、あんかけスパゲッティを特徴づけているのは「逆アルデンテ現象」である。すなわち、麺の外側がパリッと硬く、内側はモッチリ柔らかいというものである。これは、麺をラードで炒めることにより生まれる、あんかけスパゲッティ独自の食感である。

チャオのミラカン
あんかけスパゲッティの盛りは多い。他府県からの来訪者が初めて食べるときに驚くのはその量であるともいわれる。一般的な普通盛で、麺の量は280~330g、ソースが200g前後である。大盛の場合は麺が400~500gになる。1.5倍量であるため、通称を「イチハン」と呼ぶ。1.2倍量のものは「イチニー」と呼ばれ、2倍量のものは「ダブル」と呼ばれる。名古屋のサラリーマンがことさら愛して止まないのは「イチハン」である。
昼食時、彼らはただ「イチハン!」とのみオーダーする。ミラネーゼのイチハン、バイキングのイチハンなどとややこしいことは言わない。ただの「イチハン」である。この場合、出てくるのは最廉価メニューの「赤ウィンナー+刻みゆで卵」のイチハンということに決まっている。暗黙の了解というやつである。この最廉価メニューは、あんかけソースの上に、赤ウィンナー少々と微塵にほぐした茹で玉子がハラハラと乗っているだけの、いささか侘びしいしろもの。いわば、かけそば、素うどんのようなすっぴんメニューである。しかし、ランチタイムにおける人気は非常に高い。店によってはランチタイム売上の大半を占めているかもしれない。

そーれのそーれ
この「赤ウィンナー+刻み茹玉子」を最廉価メニューに設定するのは、名古屋のあんかけスパゲティ店の「お約束」である。ときどき、刻み茹で玉子をけちってコーンで代用する店があるが、これは邪道である。この定番清貧メニューの正式名は店によって異なるが、「スペシャル」と呼ぶ店が多い。「ヨコイ」、「ユウゼン」、「チャオ」などがそうである。一方、「店名=最廉価メニュー」としている店も多い。「そーれ」であれば「そーれ」、「からめ亭」であれば「からめスパ」、「ヴェニス」であれば「ヴェニス」が最廉価メニューの名前となる。こちらの流派もしぶとく多い。このあたり、発祥に二流派あることが感じられる。
こうしたシンプルイチハンは、中年サラリーマンにとっての人気ナンバーワンメニューであるが、あんかけスパゲッティを初めて体験する者にはお勧めしない。具が少ないため、食べているうちに飽きてしまうこと必定だからである。シンプルイチハンを愛してやまない人間とは、素うどん/盛りそばの愛好者同様、麺とソースの味のみを楽しむ究極の通である。初心者はちゃんと具が乗っているものを頼んだ方がよい。

ヨコイのバイキング
具材入りメニューとして人気があるのは、ミラネーゼ、ミラカン、ピカタ、バイキングなどである。中でも、ミラネーゼの人気は高い。比較的、具材の統一がなされている名古屋あんかけスパゲッティのメニューにおいて、ミラネーゼは不確定要素が多いメニューである。必ず入っているのは赤皮ウィンナーと赤皮プレスハムである。これら以外についてはバリエーションが多い。肉類としてはベーコンが入る場合があるし、野菜類としてはタマネギ、ピーマン、ニンジン、トマト、マッシュルームなどが入る場合がある。野菜類皆無で赤ウィンナー&赤ハムのみという店がある一方で、ベーコン、タマネギ、ピーマン、ニンジン、トマト入りというミラカンの存在意義を危うくする店もある。

ゴールデンパスタのミラネーゼ+目玉焼きトッピング
このあんかけスパゲッティ、他に類を見ない独特な食品であるから、ひとたび美味いと思ったが最後、強烈な麻薬性、中毒性を持つようになる。毎日食べたくなるのである。かくいうおじさんもそうであった。20~30代の頃は週に3~4回食べていた時期がある。50歳を越えた今でも、1ヶ月も食べずにいると禁断症状が出てくる。猛然と食べたくなるのだ。
しかし、美味い美味いと食べ続けると大変なことになる。量が多い上、ラードでギトギトである。必然的に非常に高カロリーとなり、メニューによっては、1000kcalを超えるものもザラ。メタボリックシンドロームに陥ることは必至である。このようなメガカロリー食品を30年以上にわたり食べてきたおじさんの"BMI"が24.5程度で済んでいるのは奇跡に近い。以下、おじさんの印象に残った、名古屋市内のいくつかの「あんかけスパゲッティ」店について述べてみる。
"ベニス"
名古屋市昭和区山花町にあった、今となっては幻の店である。おじさんは、この店で「あんかけスパゲッティ」の初体験をした。1972年、高校2年生の時である。店は繁華街ではなく、住宅街隣接の商店街にあった。あたりには名古屋大学の学生が多く住んでおり、学生客で繁盛していた。店の作りは喫茶店風。それほど大きな店ではなく、長いカウンターがあり、カレースタンドに似た雰囲気であった。
提供される「あんかけスパゲッティ」は現在のものとほとんど変わらなかった。麺は太く、ソースはダークブラウンに濁り、極めて粘度の高いものだった。味は黒胡椒が効いたスパイシーなもので、トマト風味はほとんどなかった。コクがある味わいは間違いなく中毒性があり、若き日のおじさんはよく通ったものである。よく頼んだのは「ミラネーゼ」。金欠の高校生だったから、最廉価メニューの「ベニス」もよく頼んだ。
スパゲティをオーダーすると、必ず小鉢に入ったミニサラダが付いてきた。このミニサラダも伝統的あんかけスパゲティ店の「お約束」である。テーブルの上には、"GABANの黒胡椒"と"MAGGI Seasoning Source"の4オンスボトルが置かれていた。マギー・シーズニングソースとは肉汁ライクな洋風醤油で、これをかけると一層風味が増すのであった。当時のおじさんは、ただでさえ、スパイシーなあんかけソースに、さらに黒胡椒をたっぷりかけ、その上、"MAGGI Seasoning Source"までドボドボかけて食べていた。高校生とは野蛮な人種である。
このヴェニス、おじさんが大学を卒業して名古屋に戻ってきたときには無かったような気がする。年配の親父さんが一人で調理をしていたから、跡継ぎがいなかったのかもしれない。惜しいことである。
"スパゲッティ ヨコイ"
1963年創業の老舗である。名古屋の「あんかけスパゲッティ」店の中でも、とびぬけて古い。インテリアは住吉店、錦店とも1960年代風に重厚である。通説では、「あんかけスパゲティ」を開発したのは、この店の社長・山岡博さんだといわれている。ホテルのコックであった山岡さんがイタリア家庭料理をヒントに、ミートソースを応用した新しいスパゲティソースを開発したのが、「あんかけスパゲッティ」だといわれているのだ。この件の真相については、下記「そーれ」の記述を参照のこと。
ヨコイのソースは、あんかけスパゲッティの王道を行くオーソドックスなものである。胡椒辛さはほどほどに抑えられ、味のバランスが良くクセが少ない。そのため、初心者でも戸惑うことなく味わうことができる。いつの時代も安定した美味を保ち続けているため、年代を問わずファンが多い。ヴェニス同様、何を頼んでも小鉢に入ったミニサラダが付いてくるが、"MAGGI Seasoning Source"は置かれていない。「ヨコイ」のソースのレシピは、"このあたり"に具体的に記載されている。
"スパゲッティハウス そーれ"
1961年創業の老舗である。こちらも「あんかけスパゲッティ」発祥地を標榜する店である。長年にわたり、「そーれ」と「ヨコイ」はどちらが古いのか?謎とされてきた。あんかけスパゲッティの発祥源流はいずこにありや?ということである。その謎が明らかにされたのは、"中日新聞/なごや特走隊"においてであった。記事によると、「そーれ」の共同経営者の一人が独立して開店したのが「ヨコイ」なのだそうだ。
その独立した共同経営者の一人というのが、あんかけソースの開発者として知られる「ヨコイ」の山岡博さん。そして、山岡さんが「そーれ」時代に作り上げたソースが元祖あんかけソースなのだとか。つまり、名古屋最古のあんかけスパゲッティ店は「そーれ」であり、ソースの源流は「ヨコイ」の山岡さんにあり、ということになる。何ともややこしい話である。
そーれは、おじさんが一番よく通った店である。中毒であったことは確実で、1980年から1990年代末にわたり、本当によく通った。週に3~4回通ったというのは、この「そーれ」である。昼食に「そーれ」、夕食に「そーれ」と連チャンで食べたこともある。よく頼んだのは、そーれ、ピカタ、ミラネーゼ、バイキング、タマゴよせなど。タマゴよせとは、トンカツをタマゴでとじたものが乗っているスパゲッティである。カツ丼のスパゲッティ版である。
そーれのあんかけソースはダークブラウンに濁り、粘度が高く濃厚なものである。トマト風味はそれほど強くはない。コクがある味は、食べ終わるのが惜しいと思わせるもので、麺を食べ終わった後も残りのソースをフォークで集めて食べたくなる。初めて食べたときは、前述のヴェニスのソースに近いものを感じた。発祥からいえば、ヴェニスがそーれにそっくりであったのだろうとは思うが。ヴェニスが健在だった時代、そーれには本山・松坂屋地下に出店があり、それぞれに人気を集めていた。
ヴェニス、ヨコイと同じく、そーれでは何を頼んでも小鉢に入ったミニサラダが付いてきた。テーブルの上には、GABANの黒胡椒と"MAGGI Seasoning Source"の4オンスボトルが置かれていた。社会人となっていたおじさんは、さすがに高校時代のような乱暴はせず、おとなしく黒胡椒をハラハラと、シーズニングソースをタパタパとかけて食べたものである。
この「そーれ」、CBC(中部日本放送)の南、新栄1丁目にあった頃は、それはそれは繁盛していた。昼も夜も満員であった。あんかけスパゲッティといえば「そーれ」か「ヨコイ」か、と言われるほどの店であった。歴史、味ともにあんかけスパゲッティを代表する店だったのである。ところが、栄4丁目、東急ホテルの南に移転してからは、少し元気がないようである。道路一本またいだだけで、こうも変わるものなのか。いつの間にか、"MAGGI Seasoning Source"も置かなくなってしまった。もうちょっと頑張ってほしいものである。
"ユウゼン"
「そーれ」の次に、おじさんがよく行った店である。どれくらい古いのか、よく分からないが、少なくとも1980年には営業を始めていたことは確かである。「ユウゼン」は現在の東新町北西角の地下に移る前、CBCの南西にあった。現在から比べるとはるかに小さな店であった。近辺には、前述の「そーれ」があり、店が近いことから、激しく張り合っていた。この近所には後に「サバラン」という店もでき、「あんかけスパゲッティ」の一大激戦地の有様を呈していた。1980年代のユウゼンでは深夜まで出前に応じてくれたので、残業の際によくお世話になったものである。
ユウゼンのソースはオレンジ色系統の明るい色のもので、胡椒辛さはほどほどに抑えられ、ややトマト風味が強い。おじさんがよく食べたのは、「バイキング」、「ミートボール」などの目玉焼系。ミートボールとは、ミニハンバーグゴロゴロに目玉焼を乗せたもの。名古屋の「あんかけスパゲッティ」店なら、どこにでもあるありふれたものであるが、「ユウゼン」は目玉焼の焼加減が絶妙で美味かったのである。"MAGGI Seasoning Source"こそ置かれていなかったが、ミニサラダは必ず付いてきた。
"からめ亭"
からめ亭とは、「ソール本山一社店」を本店とする系列店であり、多くのフランチャイズ店がある。1979年創業というから、老舗というには歴史が浅いが、名古屋市内のあんかけスパゲッティ専門店の中ではよく知られている店である。
ソースはほとんど黒に近い暗褐色のものである。粘度も高く、視覚的インパクトの強さは相当なものである。味のインパクトも一級品。非常にスパイシーであり、胡椒辛さに関していえば、現在の名古屋あんかけスパゲッティの中では最右翼的存在である。単に辛いだけではなく、挽肉含有量が多いためか、コクの深さも素晴らしい。値段は他店に比べ、不当に高価。とはいえ、ソースの量が多く、具が豪華なため、食べ応えがある。ピカタ、ミラネーゼ、バイキングなどが特にお勧め。
個人的にはイチオシ店であるが、本店/直営店とFC店の味のバラツキが大きいらしく、評価は両極端である。おじさん自身も某FC店で、やたら塩辛いソースを何度も出され閉口した記憶がある。お勧め店は「ソール本山一社店」、および、地下鉄丸の内駅北東の「直営/からめ亭丸の内店」。両店とも安定した美味を保っているので、あんかけスパゲッティを初めて食べる人にはお勧めである。

からめ亭のピカタ
あんかけスパゲッティとは、本場の生情報が入りにくかった1960年代初頭、人々が漠然と抱いていた「疑似イメージとしての本格派イタリアンスパゲッティ」であったに違いない。本物のイタリアンパスタである必要はなかった。人々はイメージを追いかけたのである。「本物であること」以上に「ホンモノのように見えること」が大切だったのである。
高度経済成長時代突端の1960年代初頭、それはポジティブでエネルギッシュな時代であった。そうした時代、ワイルドでパンチが効いたあんかけスパゲッティの味は、まさに求められる洋風料理の味であったに違いない。濃いこと、辛いこと、太いことは正義であった。それゆえ、濃厚な高粘度ソース、黒胡椒たっぷりのスパイシーな味、ラードで炒めた極太麺が人気を博したのだろう。
スパゲッティといえば、デパートの大食堂や喫茶店で食べるナポリタンかミートソースしかなかった時代、専門店で食べるあんかけスパゲッティは、従来とは一線を画したアトラクティブな食べ物であったに違いない。今から見れば、正統派イタリア料理のカテゴリから大きく外れていたとしても、それは時代にマッチした味だったといえよう。あんかけスパゲッティは、右肩上がりの活力に満ちた「昭和」の味がする。
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からめ亭のバイキング
さて、「あんかけスパゲティ」とは、一体いかなるスパゲティであるのか?
それは、「イタリア料理」とも「パスタ」とも呼ぶのが憚られる、泥臭さにあふれた純然たる名古屋の郷土料理である。ペペロンチーノやプッタネスカなど本式イタリアンパスタと同一線上で語るのは全くの誤りである。概念として近いのは「ロメスパ」であろうか。
あんかけスパの麺は、ラードで炒められ、ギラギラに油ぎった極太(2.2mm)のものである。オリーブオイルなどの植物性油脂ではない。動物性油脂の筆頭、ラードで炒められているのだ。この麺の上に、赤褐色に濁ったドロドロのソースがかけられている。このソースが中華料理の「あんかけ」に似て、大変粘度が高いため、現代では通称「あんかけスパゲッティ」と呼ばれている。ただし、中華料理のあんかけとは異なり、甘酸っぱいものではない。酸っぱい場合もあるが、それは甘酢によるものではなく、トマトによる酸味である。色は明るいオレンジから黒に近いものまで様々である。

そーれのミラネーゼ
あんかけソースは、一応、ミートソースのバリエーションということになっているが、一般的なミートソースとはかなり様相が異なる。視覚的に近いのは具なしの麻婆豆腐である。主な材料は、トマト、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、ニンニク、牛肉ミンチなどといわれ、これらをオーブンで2日以上にわたり煮込むのだとか。煮込んだ野菜/肉類は徹底的に潰され、何度も裏漉ししながら伸ばすのだという。家庭でも簡単に作ることができる、という記述をときどき見かけるが、なかなか難しいのではないかと思う。ある程度のプロダクトスケールと高度な熟練を要する、手間暇をかけたプロの味である。

あんかけ家のピカタ
味であるが、ひとことで言えば名古屋人の嗜好に合った濃厚なものである。味噌煮込、味噌カツを愛し、"台湾ラーメン"を生み出した名古屋人の好む味である。素材を活かした淡泊上品な味というものは無縁である。おまけに黒胡椒の使用量が常軌を逸している。「これでもか!」というぐらい多量の黒胡椒が入れられているため、ピリピリと非常に辛い。唐辛子辛いのではなく胡椒辛いのである。山椒で舌が痺れる本場の麻婆豆腐に通じるものがある。粘度の高いデミグラスソースなどを想像していると痛い目に遭う。どう見ても上品な食物ではない。B級グルメ、ジャンクフードという言葉がしっくりと似合う。

Lecceのハムエッグ
「あんかけスパゲッティ」のソースは、原則基本的に、これ一種類である。カレーソースなどを置く店もあるが、あくまでも無理矢理連れてこられた同伴者のための緊急避難用ソースと考えた方がよい。あんかけスパゲッティにおいては、このインパクト絶大のドロドロソースの上に、ソーセージ炒め、トンカツ、ハンバーグ、目玉焼、野菜炒めなど様々な具を乗せる。乗せる具によってのみ、メニューの名前が変わる。その名前は名古屋でしか通用しない独自のものである。たとえば、
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ピカタ
豚肉の黄金焼(玉子焼)。
むきアサリ&小エビの黄金焼はナポリと呼ぶ。
バイキング
魚フライ(冬季はカキフライ)、目玉焼、赤ウィンナー。
メキシカン
グリーンピース、コーン、マッシュルーム、トマトetc.
ミラネーゼ (ミラ、ミラネとも)
ハム、ベーコン、赤ウィンナー、オニオン、マッシュルームetc.
カントリー
トマト、ピーマン、オニオン、ハム、マッシュルームetc.
ミラカン
ミラネーゼ+カントリー
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ピカタ以外は名前から内容が連想不可能な意味不明なものばかりである。しかし、名古屋の「あんかけスパゲッティ専門店」では、ほとんどどこでもこの名前が通じる。各店、材料もだいたい同じ、ウィンナーソーセージは必ず赤皮のものを使う、ソースは麺のまわりにリング状にかけるなどの盛りつけ作法も同じである。ほとんどの店が"日本製麻 Volcano No.15 赤スパゲッティ 2.2mm極太麺"を使うというのも同じである。発祥店から弟子が暖簾分けして独立していくと、こうした現象が起こるようである。それぞれのビジュアルイメージに関しては、"からめ亭 岡崎店 PDFメニュー"が参考になると思う。

パストランテのミラカン
あんかけスパゲティ専門店の主要客層は、圧倒的に30~50代の中高年男性サラリーマンである。さように下世話な食品ゆえ、若い女性には人気がない。店の多くは都心部に立地し、昼休みになると、あまたのサラリーマンが店前に行列を作っているのがしばしば見受けられる。とはいえ、客の回転は良く、次々に出店していくので、それほど長時間待つ必要はない。都心の賑わっている店では、ランチライム時、オーダー後1~2分でスパゲッティが出てきたりすることがある。これは、茹で上がった麺をラードで炒め、大量に作り置きしているからである。この理由ゆえに麺がアルデンテから程遠くなる場合が多い。
もとより、あんかけスパゲッティはアルデンテを求める食品ではない。麺の茹で加減は店により様々である。髪の毛1本分の芯を残して茹で上げ、食事時に芯がなくなるという正統派アルデンテの店もあるが、その数は少ない。それよりも、あんかけスパゲッティを特徴づけているのは「逆アルデンテ現象」である。すなわち、麺の外側がパリッと硬く、内側はモッチリ柔らかいというものである。これは、麺をラードで炒めることにより生まれる、あんかけスパゲッティ独自の食感である。

チャオのミラカン
あんかけスパゲッティの盛りは多い。他府県からの来訪者が初めて食べるときに驚くのはその量であるともいわれる。一般的な普通盛で、麺の量は280~330g、ソースが200g前後である。大盛の場合は麺が400~500gになる。1.5倍量であるため、通称を「イチハン」と呼ぶ。1.2倍量のものは「イチニー」と呼ばれ、2倍量のものは「ダブル」と呼ばれる。名古屋のサラリーマンがことさら愛して止まないのは「イチハン」である。
昼食時、彼らはただ「イチハン!」とのみオーダーする。ミラネーゼのイチハン、バイキングのイチハンなどとややこしいことは言わない。ただの「イチハン」である。この場合、出てくるのは最廉価メニューの「赤ウィンナー+刻みゆで卵」のイチハンということに決まっている。暗黙の了解というやつである。この最廉価メニューは、あんかけソースの上に、赤ウィンナー少々と微塵にほぐした茹で玉子がハラハラと乗っているだけの、いささか侘びしいしろもの。いわば、かけそば、素うどんのようなすっぴんメニューである。しかし、ランチタイムにおける人気は非常に高い。店によってはランチタイム売上の大半を占めているかもしれない。

そーれのそーれ
この「赤ウィンナー+刻み茹玉子」を最廉価メニューに設定するのは、名古屋のあんかけスパゲティ店の「お約束」である。ときどき、刻み茹で玉子をけちってコーンで代用する店があるが、これは邪道である。この定番清貧メニューの正式名は店によって異なるが、「スペシャル」と呼ぶ店が多い。「ヨコイ」、「ユウゼン」、「チャオ」などがそうである。一方、「店名=最廉価メニュー」としている店も多い。「そーれ」であれば「そーれ」、「からめ亭」であれば「からめスパ」、「ヴェニス」であれば「ヴェニス」が最廉価メニューの名前となる。こちらの流派もしぶとく多い。このあたり、発祥に二流派あることが感じられる。
こうしたシンプルイチハンは、中年サラリーマンにとっての人気ナンバーワンメニューであるが、あんかけスパゲッティを初めて体験する者にはお勧めしない。具が少ないため、食べているうちに飽きてしまうこと必定だからである。シンプルイチハンを愛してやまない人間とは、素うどん/盛りそばの愛好者同様、麺とソースの味のみを楽しむ究極の通である。初心者はちゃんと具が乗っているものを頼んだ方がよい。

ヨコイのバイキング
具材入りメニューとして人気があるのは、ミラネーゼ、ミラカン、ピカタ、バイキングなどである。中でも、ミラネーゼの人気は高い。比較的、具材の統一がなされている名古屋あんかけスパゲッティのメニューにおいて、ミラネーゼは不確定要素が多いメニューである。必ず入っているのは赤皮ウィンナーと赤皮プレスハムである。これら以外についてはバリエーションが多い。肉類としてはベーコンが入る場合があるし、野菜類としてはタマネギ、ピーマン、ニンジン、トマト、マッシュルームなどが入る場合がある。野菜類皆無で赤ウィンナー&赤ハムのみという店がある一方で、ベーコン、タマネギ、ピーマン、ニンジン、トマト入りというミラカンの存在意義を危うくする店もある。

ゴールデンパスタのミラネーゼ+目玉焼きトッピング
このあんかけスパゲッティ、他に類を見ない独特な食品であるから、ひとたび美味いと思ったが最後、強烈な麻薬性、中毒性を持つようになる。毎日食べたくなるのである。かくいうおじさんもそうであった。20~30代の頃は週に3~4回食べていた時期がある。50歳を越えた今でも、1ヶ月も食べずにいると禁断症状が出てくる。猛然と食べたくなるのだ。
しかし、美味い美味いと食べ続けると大変なことになる。量が多い上、ラードでギトギトである。必然的に非常に高カロリーとなり、メニューによっては、1000kcalを超えるものもザラ。メタボリックシンドロームに陥ることは必至である。このようなメガカロリー食品を30年以上にわたり食べてきたおじさんの"BMI"が24.5程度で済んでいるのは奇跡に近い。以下、おじさんの印象に残った、名古屋市内のいくつかの「あんかけスパゲッティ」店について述べてみる。
"ベニス"
名古屋市昭和区山花町にあった、今となっては幻の店である。おじさんは、この店で「あんかけスパゲッティ」の初体験をした。1972年、高校2年生の時である。店は繁華街ではなく、住宅街隣接の商店街にあった。あたりには名古屋大学の学生が多く住んでおり、学生客で繁盛していた。店の作りは喫茶店風。それほど大きな店ではなく、長いカウンターがあり、カレースタンドに似た雰囲気であった。
提供される「あんかけスパゲッティ」は現在のものとほとんど変わらなかった。麺は太く、ソースはダークブラウンに濁り、極めて粘度の高いものだった。味は黒胡椒が効いたスパイシーなもので、トマト風味はほとんどなかった。コクがある味わいは間違いなく中毒性があり、若き日のおじさんはよく通ったものである。よく頼んだのは「ミラネーゼ」。金欠の高校生だったから、最廉価メニューの「ベニス」もよく頼んだ。
スパゲティをオーダーすると、必ず小鉢に入ったミニサラダが付いてきた。このミニサラダも伝統的あんかけスパゲティ店の「お約束」である。テーブルの上には、"GABANの黒胡椒"と"MAGGI Seasoning Source"の4オンスボトルが置かれていた。マギー・シーズニングソースとは肉汁ライクな洋風醤油で、これをかけると一層風味が増すのであった。当時のおじさんは、ただでさえ、スパイシーなあんかけソースに、さらに黒胡椒をたっぷりかけ、その上、"MAGGI Seasoning Source"までドボドボかけて食べていた。高校生とは野蛮な人種である。
このヴェニス、おじさんが大学を卒業して名古屋に戻ってきたときには無かったような気がする。年配の親父さんが一人で調理をしていたから、跡継ぎがいなかったのかもしれない。惜しいことである。
"スパゲッティ ヨコイ"
1963年創業の老舗である。名古屋の「あんかけスパゲッティ」店の中でも、とびぬけて古い。インテリアは住吉店、錦店とも1960年代風に重厚である。通説では、「あんかけスパゲティ」を開発したのは、この店の社長・山岡博さんだといわれている。ホテルのコックであった山岡さんがイタリア家庭料理をヒントに、ミートソースを応用した新しいスパゲティソースを開発したのが、「あんかけスパゲッティ」だといわれているのだ。この件の真相については、下記「そーれ」の記述を参照のこと。
ヨコイのソースは、あんかけスパゲッティの王道を行くオーソドックスなものである。胡椒辛さはほどほどに抑えられ、味のバランスが良くクセが少ない。そのため、初心者でも戸惑うことなく味わうことができる。いつの時代も安定した美味を保ち続けているため、年代を問わずファンが多い。ヴェニス同様、何を頼んでも小鉢に入ったミニサラダが付いてくるが、"MAGGI Seasoning Source"は置かれていない。「ヨコイ」のソースのレシピは、"このあたり"に具体的に記載されている。
"スパゲッティハウス そーれ"
1961年創業の老舗である。こちらも「あんかけスパゲッティ」発祥地を標榜する店である。長年にわたり、「そーれ」と「ヨコイ」はどちらが古いのか?謎とされてきた。あんかけスパゲッティの発祥源流はいずこにありや?ということである。その謎が明らかにされたのは、"中日新聞/なごや特走隊"においてであった。記事によると、「そーれ」の共同経営者の一人が独立して開店したのが「ヨコイ」なのだそうだ。
その独立した共同経営者の一人というのが、あんかけソースの開発者として知られる「ヨコイ」の山岡博さん。そして、山岡さんが「そーれ」時代に作り上げたソースが元祖あんかけソースなのだとか。つまり、名古屋最古のあんかけスパゲッティ店は「そーれ」であり、ソースの源流は「ヨコイ」の山岡さんにあり、ということになる。何ともややこしい話である。
そーれは、おじさんが一番よく通った店である。中毒であったことは確実で、1980年から1990年代末にわたり、本当によく通った。週に3~4回通ったというのは、この「そーれ」である。昼食に「そーれ」、夕食に「そーれ」と連チャンで食べたこともある。よく頼んだのは、そーれ、ピカタ、ミラネーゼ、バイキング、タマゴよせなど。タマゴよせとは、トンカツをタマゴでとじたものが乗っているスパゲッティである。カツ丼のスパゲッティ版である。
そーれのあんかけソースはダークブラウンに濁り、粘度が高く濃厚なものである。トマト風味はそれほど強くはない。コクがある味は、食べ終わるのが惜しいと思わせるもので、麺を食べ終わった後も残りのソースをフォークで集めて食べたくなる。初めて食べたときは、前述のヴェニスのソースに近いものを感じた。発祥からいえば、ヴェニスがそーれにそっくりであったのだろうとは思うが。ヴェニスが健在だった時代、そーれには本山・松坂屋地下に出店があり、それぞれに人気を集めていた。
ヴェニス、ヨコイと同じく、そーれでは何を頼んでも小鉢に入ったミニサラダが付いてきた。テーブルの上には、GABANの黒胡椒と"MAGGI Seasoning Source"の4オンスボトルが置かれていた。社会人となっていたおじさんは、さすがに高校時代のような乱暴はせず、おとなしく黒胡椒をハラハラと、シーズニングソースをタパタパとかけて食べたものである。
この「そーれ」、CBC(中部日本放送)の南、新栄1丁目にあった頃は、それはそれは繁盛していた。昼も夜も満員であった。あんかけスパゲッティといえば「そーれ」か「ヨコイ」か、と言われるほどの店であった。歴史、味ともにあんかけスパゲッティを代表する店だったのである。ところが、栄4丁目、東急ホテルの南に移転してからは、少し元気がないようである。道路一本またいだだけで、こうも変わるものなのか。いつの間にか、"MAGGI Seasoning Source"も置かなくなってしまった。もうちょっと頑張ってほしいものである。
"ユウゼン"
「そーれ」の次に、おじさんがよく行った店である。どれくらい古いのか、よく分からないが、少なくとも1980年には営業を始めていたことは確かである。「ユウゼン」は現在の東新町北西角の地下に移る前、CBCの南西にあった。現在から比べるとはるかに小さな店であった。近辺には、前述の「そーれ」があり、店が近いことから、激しく張り合っていた。この近所には後に「サバラン」という店もでき、「あんかけスパゲッティ」の一大激戦地の有様を呈していた。1980年代のユウゼンでは深夜まで出前に応じてくれたので、残業の際によくお世話になったものである。
ユウゼンのソースはオレンジ色系統の明るい色のもので、胡椒辛さはほどほどに抑えられ、ややトマト風味が強い。おじさんがよく食べたのは、「バイキング」、「ミートボール」などの目玉焼系。ミートボールとは、ミニハンバーグゴロゴロに目玉焼を乗せたもの。名古屋の「あんかけスパゲッティ」店なら、どこにでもあるありふれたものであるが、「ユウゼン」は目玉焼の焼加減が絶妙で美味かったのである。"MAGGI Seasoning Source"こそ置かれていなかったが、ミニサラダは必ず付いてきた。
"からめ亭"
からめ亭とは、「ソール本山一社店」を本店とする系列店であり、多くのフランチャイズ店がある。1979年創業というから、老舗というには歴史が浅いが、名古屋市内のあんかけスパゲッティ専門店の中ではよく知られている店である。
ソースはほとんど黒に近い暗褐色のものである。粘度も高く、視覚的インパクトの強さは相当なものである。味のインパクトも一級品。非常にスパイシーであり、胡椒辛さに関していえば、現在の名古屋あんかけスパゲッティの中では最右翼的存在である。単に辛いだけではなく、挽肉含有量が多いためか、コクの深さも素晴らしい。値段は他店に比べ、不当に高価。とはいえ、ソースの量が多く、具が豪華なため、食べ応えがある。ピカタ、ミラネーゼ、バイキングなどが特にお勧め。
個人的にはイチオシ店であるが、本店/直営店とFC店の味のバラツキが大きいらしく、評価は両極端である。おじさん自身も某FC店で、やたら塩辛いソースを何度も出され閉口した記憶がある。お勧め店は「ソール本山一社店」、および、地下鉄丸の内駅北東の「直営/からめ亭丸の内店」。両店とも安定した美味を保っているので、あんかけスパゲッティを初めて食べる人にはお勧めである。

からめ亭のピカタ
あんかけスパゲッティとは、本場の生情報が入りにくかった1960年代初頭、人々が漠然と抱いていた「疑似イメージとしての本格派イタリアンスパゲッティ」であったに違いない。本物のイタリアンパスタである必要はなかった。人々はイメージを追いかけたのである。「本物であること」以上に「ホンモノのように見えること」が大切だったのである。
高度経済成長時代突端の1960年代初頭、それはポジティブでエネルギッシュな時代であった。そうした時代、ワイルドでパンチが効いたあんかけスパゲッティの味は、まさに求められる洋風料理の味であったに違いない。濃いこと、辛いこと、太いことは正義であった。それゆえ、濃厚な高粘度ソース、黒胡椒たっぷりのスパイシーな味、ラードで炒めた極太麺が人気を博したのだろう。
スパゲッティといえば、デパートの大食堂や喫茶店で食べるナポリタンかミートソースしかなかった時代、専門店で食べるあんかけスパゲッティは、従来とは一線を画したアトラクティブな食べ物であったに違いない。今から見れば、正統派イタリア料理のカテゴリから大きく外れていたとしても、それは時代にマッチした味だったといえよう。あんかけスパゲッティは、右肩上がりの活力に満ちた「昭和」の味がする。
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by xylocopal | 2005-01-11 00:05 | Nagoya






