2005年 10月 29日
ネガフィルムスキャン入門 #1 |
2008年4月、本稿の一部を手直しした改訂版を作りました。
併せて読まれることをお勧めします。
Xylocopal's Photolog 2008/04/07 ネガフィルムスキャン入門 改訂版
http://xylocopal2.exblog.jp/8604575/
"Xylocopal's Weblog 2005年10月25日 偏愛・35mmカラーネガフィルム"に書いたこととかぶりまくるが、ネガフィルムは非常に階調再現性が優れたフィルムである。リバーサルフィルムに比べ、印刷媒体との馴染みが悪いことから、メディアに露出する機会は少ないが、そのワイドレンジな階調表現は素晴らしいものがある。黒は潰れやすいが、白はなかなか飛びそうで飛ばない。ぎりぎりまでしぶとくトーンが残るのがネガフィルムである。

中間調の再現性は当然ながら素晴らしい。微妙なトーンの再現はネガフィルムの最も得意とするところである。モノクロ、カラーを問わず、ネガフィルムの階調の広さは、デジカメの比ではない。広階調の写真は一見コントラストが弱く、インパクトに欠けるが、ぬめるように滑らかなグラデーション、ディティール表現の繊細さは何ともいえない美しさがある。
以前、"ILFORD"のカタログに、黒人Jazzミュージシャンの温黒調モノクロポートレート写真が掲載されていたが、肌の質感表現に度肝を抜かれた。ひとくちに黒というが、実に様々な黒があるのである。階調性が優れているというのは、こういうことをいうのかと深く納得したのであった。ことほどさように、広大な階調を持つネガフィルムであるが、印画紙の方はそうはいかない。モノクロ用超軟調印画紙といえど、フィルムに比べると階調が狭いのだ。カラープリントとなると、絶望的に階調が狭い。下の写真を見てほしい。

おじさんの家にいた"黒猫・ニキさん"と"サバトラシロ猫・カムニャくん"のツーショットである。1988年、Canon A-1というMF一眼レフで撮影したもの。フィルムはISO100のカラーネガフィルム、KodaColor 100を使っている。この画像はプリント(印画紙)をフラットベッドスキャナで読み込んだものである。
黒猫は真っ黒に潰れ、サバトラシロ猫の白い部分は真っ白に飛んでいる。黒猫の撮影は、一般的な反射式露出計の場合、露出補正が必須となり、難易度が高い部類に入るが、白猫とのツーショットはさらに難しい。黒猫に露出を合わせれば、白猫が飛んでしまうし、白猫に露出を合わせれば、黒猫が潰れてしまう。こうしたツーショットは、猫写真専門のプロでも頭を悩ませると聞く。おじさんも、黒猫白猫2Shotの場合は仕方がないと諦めていた。しかし、先日この写真のネガを見つけ出し、たいして期待もせず、ネガフィルムからスキャンしたところ、信じられないほど素晴らしい階調の写真を得ることができたのだ。

プリントスキャンとは全く別物である。黒猫の光が当たっている部分は階調やディティールが出ており、ヒゲの一本一本まで綺麗に分離している。サバトラシロ猫の方は、白がまったく飛んでおらず、柔らかそうな被毛の様子が実によく分かる。階調が豊かだと、これほど質感描写が違うのである。猫たちの生命感あふれる姿が見事に再現されている。これに比べると、プリントスキャンの方は塗り絵か何かのように見えてしまう。
以前、"Jewels of Nostalgia"というクラシックカメラのウェブサイトを作ったとき、プリントからスキャンした画像とネガフィルムからスキャンした画像のあまりの違いに唸ってしまったが、今回もおおいに驚かされた。17年前のネガフィルムに、これほど豊かな階調が記録されていたという事実は、カラーネガフィルムの底力を改めて感じさせるものであった。
黒猫と白猫のツーショットは、ISO100のカラーネガフィルムで撮るに限る。そして、DPE店で銀塩プリントしてもらうより、ネガスキャン画像をインクジェットプリンタで出力した方が、確実に美しいものができあがるはずである。撮影はネガフィルム、デジタル化およびトーン調整はパソコン、出力はインクジェットプリンタというハイブリッド写真の可能性は非常に大きいと思う。手間はかかるが、かけただけの結果は得られると思う。

Canon A-1 / Canon NFD 50mm F1.4
FUJIFILM SUPER HR 100, Scanned with EPSON GT-F520

Canon A-1 / Canon NFD 50mm F1.4
FUJIFILM SUPER HR 100, Scanned with EPSON GT-F520
ツーショット写真に味をしめてスキャンしたのが上の写真である。いずれもISO100カラーネガフィルムによる撮影である。高価なフィルムではない。現代でいえば、1本150円くらいのFUJIFILM SUPERIA 100クラスのフィルムである。にもかかわらず、黒も潰れていなければ、白も飛んでいない。ストロボバウンス照明のため、光がよく回っているせいもあるが、実に見事な階調&質感表現である。デジタル一眼レフでも、なかなかこうはいかない。おじさん、唸って死にそうになった。
これらの写真をスキャンしたのはフィルムスキャナではない。安価なフラットベッドスキャナである。"2005年09月29日 モノクロ写真復活作戦"にも書いたが、"EPSON GT-F520"というエントリークラスのスキャナである。近所の家電量販店で14000円で買った。35mmフィルムスキャン可能な3200dpiのスキャナがこの値段で買えるとは、つくづく良い時代になったものだと思う。以前使っていたフィルムスキャナ、"Nikon COOLSCAN IV ED"に比べれば、使い勝手やデフォルト画質では負けるが、最終的に得られる画像クォリティは決して劣っていないと思う。本当に素晴らしい時代になったものだ。

EPSON GT-F520の3200dpiという解像度は、35mmフィルムを3072x2048pixelsの600万画素でスキャンするには充分すぎる数値である。2400dpiあれば、600万画素でスキャンできるのだ。600万画素といえば、おじさんが使っているデジタル一眼レフ、EOS10Dと同じ画素数である。とりあえず、600万画素あれば、A4判印刷やレタッチに不自由はしない。3200万画素あれば、横位置写真を縦位置にトリミングするぐらいのことはできる。
GT-F520はエントリークラスのフラットベッドスキャナであるから、ホームユースの「お気楽簡単スキャン」を謳い文句にして販売されている。付属するスキャニングツール、"EPSON Scan"もユーザの習熟度に合わせて、「全自動モード」、「ホームモード」、「プロフェッショナルモード」の3モードが選択可能となっている。
一番簡単なのは全自動モードである。プリントだろうがネガフィルムだろうが、何でも突っ込むだけでOKである。原稿種別さえも自動判別してくれるのだ。ユーザは原稿を乗せるだけでいい。一般に、この手の便利ツールは、「余計なお世話」ばかり豊富で、使い物になるものは少ないが、EPSON Scanの全自動モードはなかなか使えるトーンの画像が得られる。

全自動モードでスキャンしたネガフィルムである。全体にシアンかぶりしており、サバトラシロ猫の白い部分が完全に飛んでいるが、その他は良いトーンである。この程度、白飛びした方がコントラストが際立ち、一般受けは良い画像になるから、故意にこうしたチューニングにしているのかもしれない。試しにシアンかぶりだけ補正してみた。Photoshopのカラーバランス調整で、シアン---レッドのスライダーを少し赤方向に動かしただけのレタッチである。

白飛び以外は、まずまず文句のないトーンになった。全自動でここまで追い込むとは、エプソンやるものである。7~8年前のスキャナであれば、ここまでのトーンの再現は、じっくりと時間をかけなければ無理であった。ましてや、エントリーモデルでは、こうしたトーンは絶対に得られなかった。デジカメの普及により、画像処理技術は確実に底上げされている。GT-F520を買うユーザの95%ぐらいは、この結果に満足できると思う。
EPSON GT-F520の偉いところは、残り5%のユーザ、白飛びの少ない高階調画像を望むユーザにも対応できるところである。EPSON Scanのプロフェッショナルモードを使えば、白飛びを抑えた渋いトーンでスキャンできるのである。プロフェッショナルモードといってもたいしたものではない。昔のスキャナ付属のスキャニングツールには、プロフェッショナルモード相当の機能しかなかった。以下に、その設定、使い方を説明する。
GT-F520には、色々なアプリケーションが付いてくるが、プリント/ネガフィルムスキャンが主目的で、OCRなどを使わないのであれば、インストールするのはスキャナドライバとEPSON Scanだけでいい。その他のユーティリティは一切不要である。もちろん、しかるべきフォトレタッチソフトを持っているのが前提になるが。
おじさん、スキャン画像の調整はスキャニングツール上では大雑把にしかしない。レタッチしやすいトーンの素材を得るためのみに、スキャニングツールを使うのである。EPSON Scanに限らず、スキャニングツールには、明度、コントラスト、彩度、色合い、ヒストグラム、トーンカーブなど、ひととおりのトーン調整機能が付いているから使いたくなるが、おじさんはヒストグラム調整とトーンカーブ調整を甘めに使うだけである。どうせレタッチをするのなら、使い慣れたPhotoshopで行った方が簡単だからである。
スキャニングユーティリティの起動も、フォトレタッチソフトから行う。スキャナドライバをインストールしたあと、フォトレタッチソフトを起動すると、ほとんどの場合、スキャナ読み込みのメニューが追加されているはずである。下は、Adobe Photoshop CS、JASC Paint Shop Pro ver.6の例である。それぞれのメニューをクリックすれば、EPSON Scanが起動する。


■ネガスキャン設定篇
下は、EPSON GT-F520に付属のEPSON Scan ver.2.70J、プロフェッショナルモードの例である。プロフェッショナルモードにはいくつか設定する項目があるが、おじさんがネガフィルムスキャンをする場合は下のスクリーンショットのように設定している。

出力設定-イメージタイプは48bitカラーである。Photoshopでは、16bit/channelと呼ばれるものである。RGB3色ともチャンネルあたり16bitの色深度を持っており、16bit×3原色=48bitカラーということである。パソコンの標準的なsRGB色空間では、Red、Green、Blue各チャンネルあたり、8bitの色深度しかない。8bitの色深度というのは、たったの256階調である。ヒストグラムの黒端から白端までわずかに256階調というのが、パソコンの標準色空間なのである。各色256階調であるから、Red、Green、Blueの3色では、
Red(256)xGreen(256)xBlue(256)=16777216
すなわち、1677万7216色というのがパソコンで扱える最高色数になる。パソコンのフルカラーが1677万色であるというのは、こういうことなのである。

各色256階調では、自然界に存在する多くの階調が表現できないが、人間の視覚もせいぜい200~250階調ぐらいしか識別できないといわれており、一般的な使い方では1677万色でも、特に不足することはあまりない。しかし、レタッチをかけるとなると話は別である。
各色256階調しかない色空間で無茶なレタッチをかけると、どうしても色の破綻が起こる。トーンジャンプと呼ばれる現象が発生し、結果的にはノイズが増えるのである。青空などでは、マッハバンドと呼ばれる縞模様が出たりする。これを防ぐ方法は古くから研究されており、各色16bitの色深度にすれば、かなりトーンジャンプが軽減されることが分っている。各色16bit の色深度とは、各色65536階調ということである。65536とは2の16乗である。それゆえ、16bitと呼ばれるのである。
16bit/チャンネルは、あくまでも、擬似的に65536階調にするのであって、パソコンで扱える色数を増やすものではない。しかし、 レタッチ処理をしている間は各色65536階調で処理できるのである。したがって、スキャン画像のレタッチなど、クリティカルなフォトレタッチを行う際には、 16bit/チャンネルにするとノイズが出にくくなるのである。
ちなみに、8bit/channelの画像と16bit/channelの画像は見ただけでは識別できない。そのため、読み込みは24bitカラー(8bit/channel)で行い、スキャン後にフォトレタッチソフト上で16bit/channel(48bitカラー)に変更しても問題はない。レタッチをした瞬間から問題が出るのであって、ノーレタッチであれば無問題である。これについては、ややこしいので、画像保存の際に、再度説明する。
EPSON Scanの設定の話に戻ろう。品質は無論「画質優先」である。解像度は35mmフィルムの場合は2400dpiで行っている。24mm×36mmのフィルムを、2400dots/inchでスキャンするわけだから、計算上は、2268×3402pixelsとなる。おじさんが使っているデジタル一眼レフ、EOS10Dより一回り大きい770万画素である。これぐらいのサイズがあれば、A4プリントもできるし、もちろんネットで使うのには不自由しない。
EPSON GT-F520のマキシマム解像度は3200dpiであるから、こちらは横位置写真を縦位置写真にトリミングする場合などに使っている。いずれにしろ、フォトレタッチの基本は、「大きめに取り込んで小さく出力する」である。あまり巨大すぎても扱いにくいが、600~800万画素というあたりが取り扱いやすいと思う。出力サイズは、印刷するしないにかかわらず、等倍にしておけばいい。印刷解像度を決めるのはプリント時で充分である。

EPSON Scanの調整欄には上のようにアイコンが4つ並んでいるが、使うのは左から2番目のヒストグラム調整だけである。自動露出は白飛びしやすい味付けになっているし、濃度補正、イメージ調整については、後でPhotoshop上でじっくり行うからである。
チェックボックスも4つあるが、普段は使わない。アンシャープマスクフィルタは通常、フォトレタッチの最後にかけるものであり、いきなりシャープネスを上げるのは抵抗がある。銀塩粒子が見えてしまうフィルムのことだから、いたずらにシャープネスを上げると粒状性が悪くなる。だからといって、粒状性低減はONにしない。おじさん、銀塩フィルムの粒状感は結構好きなのである。退色復元は、プレビューした際に、あまりにも色がおかしい場合には使うこともある。ホコリ除去も同様である。ホコリが2~3個であれば、スキャン時間が長くなるので、ホコリ除去はしない。このあたりはケースバイケースで決めればいい。

プレビューボタンをクリックしてスキャン調整開始、といきたいところだが、その前に環境設定である。プレビュー設定でのポイントは、「高速プレビュー」のチェックを外すことである。高速プレビューモードのままだと、画質調整を行った場合のプレビュー画像の品位が悪くなる。調整の程度がプレビュー画像にきちんと反映されないのだ。EPSONのオンラインマニュアルにも、高速プレビューモードではない方が高品位画像になると書いてある。

プレビューウィンドウサイズ、サムネイル取込領域は好きなサイズに設定すればいい。おじさんはネガに記録されたすべての情報をスキャンしたいという貧乏性のため、サムネイル取込領域は最大にしている。これにより、フィルムマスクまでも取り入れることができる。

カラー設定画面では、「ドライバによる色補正」にチェックを入れてある。これにチェックを入れないと、EPSON Scanでヒストグラムを操作できない。ただし、「常に自動露出を実行」にはチェックを入れていない。いうまでもなく、勝手に白飛びされたくないためである。自分でコントロールして白飛びを作ることはあるが、問答無用で白飛びを作られるのは困る。白飛びを許す/許さないの判断は自分の目で確認して行いたい。
ディスプレイガンマは、2.1、2.2、2.3と増やすほど軟調な画像となる。逆に、1.9、1.8、1.7と下げるほどコントラストの強い硬調な画像となる。好みのトーンに設定をすれば良いのだが、スタンダードというものがないわけでもない。おじさんの場合は、日和見な2.0にしてある。Macintoshの標準値1.8、Windows PCの標準値2.2-2.4の中間値である。おじさんのディスプレイ環境がガンマ2.0となっているから、この設定にした。
世の中の最大公約数的ユーザがWindows環境でネットを閲覧していることは分かっているが、写真好きにはMacintoshユーザが多い。Macintoshユーザに見に来てもらったとき、あんまり淡い色ではまずいので、中間値にしているのである。Windowsユーザから見ると、おじさんの写真はやや濃厚なトーンになっているはずだが、これは、天下一品のラーメンを食べ過ぎたからではないのだ。一応、理由はあるのである。ディスプレイガンマについてよく分からないという人は先に下のエントリを読むことをお勧めする。
"Xylocopal's Weblog 2005年05月10日 写真用ディスプレイ調整"
http://xylocopal.exblog.jp/1733325/
ICMは未チェックである。おじさんは、EPSON PM写真用紙(20枚)を1年かかっても使い切らないほど写真を印刷しないから、プリンターとのカラーマッチングは考えたことがない。ICMは、そうしたズボラなユーザにとって無縁の調整項目である。
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"Xylocopal's Weblog ネガフィルムスキャン入門 #2"に続く
by xylocopal | 2005-10-29 22:00 | Photo






